奇跡のマスターピース~『ペット・サウンズ』
ペット・サウンズ

 PET SOUNDS
 Jim Fusilli

 translated by

 Haruki Murakami


 思うに、書評、映画評、音楽評のうちで一番難しいのは音楽評ではないだろうか。
この場合、目に見えない「音楽」という意味で。ライヴ評は演劇評に近いものがある
と思うので音楽評には含まない。耳から頭の中に入ってきて、心に降りてくる音たち
-アーティストが独自の感性で創り上げた、のような、のような世界-を、言葉
でどう表現すればいいのか。私は途方に暮れる

 本書は、ロックの歴史的名盤とされるザ・ビーチボーイズ『ペット・サウンズ』につ
いて、著者が丸々一冊語りつくした「音楽評」だ。著者ジム・フジーリと同じく、この
CDとその製作者であるブライアン・ウィルソンに格別の思い入れがある村上春樹
よって訳出されている。

 私は村上春樹の影響で何年か前にこのCDを手にしたのだけれど、聴いた時かな
り驚いた。同じくロック史上の名盤と誉れ高い、ビートルズ『サージェント・ペパーズ
・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
。サージェント・ペパーズって、このCDの「真似」
だったのか、と。しかし、『ペット・サウンズ』ビートルズ『ラバー・ソウル』の影響
を受けているとブライアン・ウィルソン自身が発言しているから、この二つのバンドは
互いに刺激し合う関係だったわけで、どちらのアルバムも名盤であることに疑いの
余地はない。


 ブライアン・ウィルソンについてのエピソード、精神的な脆さ、実父との確執、ドラ
ッグ依存、引きこもり、肥満
、、などなどについては特に目新しい記述があるわけ
ではない。著者自身の生い立ちと重ね合わせて語られている部分もあるけれど、
全編を通してこの「奇跡のマスターピース」への愛と憧憬に満ちた文章は、読み手
によっては疎外感満腹感を憶えるものかもしれない。私が持っているCDには
山下達郎氏のライナー・ノーツが付いていて、そちらの方が簡潔的確だと言える
かもしれない。

 しかし、この美し過ぎる音楽-著者が「哀しみについての幸福な歌の集まり」
表現する-を聴いて、語っても語っても尽きない思いが溢れてくるのは実感として
よくわかる。そして、そろそろ村上春樹の新作長編が読みたいな、とも思う。
昨年来、翻訳モノばっかり。村上さん、待たせ過ぎですよ。

『ペット・サウンズ』ジム・フジーリ・著/村上春樹・訳/新潮社・2008)
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[2008/04/17 12:36] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(4) |
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コメント
ビーチ・ボーイズといえば「夏」!

いんにゃ、^^
私は年がら年中、聴いておりますほど、
ノーテンキでメローな彼らのサウンドは好きであります~^^

M・ディヴィスも聴けば、徳永の英ちゃんも、シガー・ロスも!
リンキン・パークも!D・クラールもN・ジョーンズも!D・パープルも好きぃ!
音楽大好きぃ~~~!
うううううっ、落語も聴きます!はい、なんでも聴きます!(笑)
うううううう、うぅ、クラシックは寝ること多し・・・(爆!)

おととし書きちらかしました拙記事お持ちしました。

ウ~ワ~ウ~ワ~・~パッパウゥ~~~♪♪♪^^
[2008/04/18 08:16] URL | viva jiji #kzLu3bv6 [ 編集 ]
viva jijiさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
姐さんはご自分でも歌われるし、音楽にも造形が深いのですよね~。
著者はこのアルバムのことを
「天国に上り詰めていくようなヴォイス、チャイムのようなギター」
と表現しているんですよ。まさしく!ですね~。
映画でビーチ・ボーイズの『神のみぞ知る』、とか流れてくると、その映画の評価が一段階は上がる気がします。
ではでは、今からお伺いいたしますです~。
[2008/04/18 09:00] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
この本は読んでませんが(すみません)
CD復刻された時は、当時の洋楽雑誌でも特集されるほどでした。
山下達郎氏の渾身のライナーノーツもよかったです。
でも今でこそ名盤扱いされているけれど、
このアルバム発表された当時は全く評価されなかったそうですね。
世間どころかメンバーからも。
周りに理解者がいないのはつらい事です。
Bウィルソン、この時期からおかしくなっちゃって...
よくこちら側に帰ってこれたなあと。
それはとても嬉しかったです。
[2008/04/20 21:30] URL | garagie #- [ 編集 ]
garagieさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
この本を読んでいなくても、『ペット・サウンズ』を聴いたことのある方ならわかっていただけると思います。
山下氏のライナーは、とってもいいですよね。
本当に聴き込んでいるのがわかるし、愛を持って語っていると思いました。
この本では製作~発表の過程も詳しく書かれていて、メンバーさえ「イヌに聴かせろ」みたいなことを言ったとか・・。ヒドイ。
B・ウィルソン、まだ生きてステージにも立っているということが素晴らしいですね!
ビートルズみたいに伝説になってなくても、生きていてくれるだけで、ファンはうれしいんだと思います。
ではでは、またです~。
[2008/04/20 23:10] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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夏。 海に行かない私の夏。 泳げないし あんな強い陽射しの下に 小一時間もいたらば 超色白の私なんか出ている部分 ことごとく「日光湿疹」の赤ブクレ状態! でも サーフィン映画、だいすき! 観ましたよ~~~! 傑作「ビッグ・ウェンズデ...
[2008/04/18 08:01] 映画と暮らす、日々に暮らす。
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