生ける伝説~『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』
アニー・リー



 ANNIE LEIBOVITZ: LIFE THROUGH A LENS


「死にゆくその日も、写真を撮っていたい」

 アメリカで最も有名なフォトグラファー、「リビング・レジェンド」ことアニー・リーボ
ヴィッツ
。彼女の現在の仕事ぶりと、辿ってきた人生を振り返るドキュメンタリー

 ある程度以上の年齢の人なら、デミ・ムーアの妊婦ヌードが当時どれほどの衝撃
をもって受け止められ、どれほどの物議を醸したか憶えていることだろう。アメリカ
では、掲載雑誌を発禁とした州さえあったという。ジョン・レノン暗殺の数時間前に
撮影されたポートレイト
など、アニー・リーボヴィッツを彩る「伝説」は枚挙に暇が無い。
本作では、彼女の仕事ぶりや思い出を錚々たるセレブたち(ミック・ジャガー、ヒラリ
ー・クリントン、ウーピー・ゴールドバーグ
などなど)が語ることで、偉大な写真家の
偉大な仕事の数々
を改めて振り返ることができる。若き日のレオや、ジェイク・ジレン
ホール
のポートレイトを大きなスクリーンで観ることができたのは僥倖だった。
 しかし、私としては少し、不満の残る作品でもあった。

アニー・リー3

 私がアニー・リーボヴィッツを知ったのは数年前。彼女とパートナー関係にあった
アメリカの批評家スーザン・ソンタグの死後、ニューヨークで開催された写真展に
ついての新聞記事だった。

 その記事には、アニーが体外受精を経て51歳で出産(!)した長女サラを抱く、スー
ザン・ソンタグの写真
が掲載されていた。赤ん坊を物憂げに見つめる、老年に差し掛
かった女性(スーザン)の眼差しに、理由も無く心惹かれてしまった。その記事を読む
まで、20世紀を代表する「アメリカの知性」と呼ばれていたというスーザン・ソンタグの
ことも、アニーのこともほとんど知らなかったのに。

スーザン・ソンタグ

 映画の後半、アニーとスーザンの出逢いや永遠の別れについて、写真として残さ
れた記録が紹介される。スーザンの最期を語るアニーのに、もらい泣きもしてし
まう。しかし、もっともっとアニー自身の言葉で、スーザンとの関係や長女サラ、
代理母から生まれたという双子たちについて語って欲しかったと思う。
彼女の偉大
さは、セレブが語らなくとも写真を観れば伝わってくる。被写体を「素敵!」「美しい!」
鼓舞し、時に「感動した」と涙ぐんでファインダーを覗けなくなる、40年のキャリア
持ってしても今だ「撮る」という行為に真摯に向き合うその仕事ぶりを見ればわかる。
人間を描くドキュメンタリーならば、もう少し対象の内部に入り込む--それはまさしく
アニーの真骨頂でもある--撮り方
をして欲しかったと思うのだ。

アニー・リー4

 できれば写真集を探して、この「生ける伝説」偉大さにもう一度、じっくりと触れ
てみたい。

『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』
      監督・製作:バーバラ・リーボヴィッツ/2006・USA)
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[2008/03/26 00:45] | 映画 | トラックバック(5) | コメント(8) |
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コメント
こんばんは、真紅さま。
確かに、彼女の恋人の話に関しては、心の奥深くにまでは届いていないように思えてしまったかもしれませんね。

私は、つくづく、人の伝記って、あてにならないなあという目線で見てしまうところもあったりして・・。

私には、自分の道を進み続ける、アニーが素晴らしくて、
またその作品をこうして撮るシーンも見れて、満足してしまいました。
[2008/03/27 00:34] URL | とらねこ #.zrSBkLk [ 編集 ]
真紅さん、TBとメッセージありがとう。
まさしく真紅さんの書かれている通り!前半はね、アニーも結構語っていて、面白かったけど、後半もおなじ調子で、内面に肉薄する視線がほしかったなって思う。見ていてグラビアだけではやっぱり満足しないよね、言葉が欲しい!
かなりデリケートだどは思うけれど、製作側の視点がそこになかったのかもしれないけど、映画作品としては惜しいなって思う。
ニューズウィークにも特集あったのね。以前は年間購読していたけど、1年前から購読やめたんですよ。見てない。残念。
[2008/03/27 02:43] URL | シュエット #- [ 編集 ]
とらねこさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
私は、スーザンとの関係がどの程度語られているかに興味があったので、少し物足りなさを感じてしまいました。
しかし、あの写真の数々は圧巻で、観ることができて満足でした。
本当に、凄い女性ですよね。。尊敬です。憧れでもあり。。
ではでは、またお伺いしますね!
[2008/03/27 15:59] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
シュエットさま、こんにちは。こちらこそコメントとTBをありがとうございます。
確かに、製作側の視点はアニーの内面に迫るものではなかったですね。
彼女の功績を紹介するものだったと思います。
IMDBによると、これってアメリカではテレビシリーズだったようですね?
日本向けだけに映画作品にしたのかな、よくわかりませんが。
ニューズウィークは私も読んでないのですよ。
たまたま画像を見つけたので、貼ってみました。
写真にはとても惹かれたので、DVDになったらまた観てみたいと思います。
ではでは、またお伺いしますね。
[2008/03/27 16:07] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
何年前になるか...

東京で写真展がありました。映画でも映っていたポートレートの何枚かは覚えてます。ポストカード2,3枚買ったけどカタログはなかったような。

映画としてはちょっと中途半端だとは思いました。「どうやって50過ぎて子供生んだんだろ?相手は誰なのかな?」という女性たちの声が聞こえましたからね(また聞き耳...)そら女としては知りたいだろうねえ。
変に配慮するくらいなら最初からスーザンや子供の事は触れずに、仕事人としての生き様だけで構わなかったです。そしたら1時間程度で終わっちゃうか。

ドカーンと大アップのジェイクさんはヴァニティフェア誌に載ったやつですね。ちょうどBBMがあちらで話題になってた時期の。ヒースさんも撮ってるはずですが映らなかった、ケチ。でももし映ったら泣いてしまったかもしれないな....
[2008/03/29 22:42] URL | garagie #- [ 編集 ]
garagieさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
東京でもアニーの個展があったのですね。
アニーという人物について予備知識がなかったら、子どもたちの出生について疑問が湧きますよね。
その辺りを掘り下げて欲しかったと私も思いました。
この映画はアメリカではテレビドキュメンタリーとして放映されたもののようで、だからカタログ的になったのかなとも思います。
紹介の域を出なかったというか。

ジェイクのフォトは全く期待していなかったので驚きました。
得した気分、というか・・・。
ヒースの写真が出てきたらもう、特別な映画になっていたかもしれません。
私も泣いてしまったと思います。。
ではでは、またです。
[2008/03/31 08:17] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2010/08/05 23:38] | # [ 編集 ]
管理人宛てに鍵コメント下さった方、ありがとうございます。
「よくあること」なので、全く無問題です! お気になさらず。。
よろしければ、またお立ち寄り下さいませ♪
[2010/08/06 22:14] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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[2008/03/26 08:08] 京の昼寝~♪
34●アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
才能のあるアーティストって、見ているだけで、なんて心が浮き立つの。素敵なドキュメンタリーだった。・・・何より、芸術性と商業主義を両立させた、偉業を成した人。
[2008/03/27 00:19] レザボアCATs
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