一番近い他人~『クローサー』
クローサー


 CLOSER

 "Hello,Stranger"


 ロンドンの交差点。通りの向こうから赤毛の若い女性が歩いてくる。
ダミアン・ライスによる"I can't take my eyes off of you" のリフレイン
彼女を見つめているのは誰・・・?

 この限りなく映画的でドラマティックなオープニングの映画『クローサー』は、
パトリック・マーバーの戯曲を原作にした台詞劇二組のカップル虚実織り交ざ
った愛憎を、巨匠マイク・ニコルズ生々しく映像化している。アンサンブルを演じ
るはジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライヴ・オーウェン
という当代の芸達者たち。

 ジュリアが演じた役、フォトグラファーのアンナは当初ケイト・ブランシェット
オファーされていたという。しかしケイトは第二子妊娠により(泣く泣く)降板
その結果、英国男VS.アメリカ女というわかり易い構図になっている。ケイトの演技
ももちろん観たかったし、彼女が演じていたならアンナという女性のキャラクターに
より深みが増したのだろうけれど・・・。

クローサー3

 彼らを繋いでいるのは果たしてなのか? 肉体的な繋がりがなければ大人の愛
は成り立たないと言われるのなら、それは間違いなく愛なのだろう。そしてそれは
当然、美しいだけのものではない。嫉妬や裏切り、不信、不実、憎悪が入り混じっ
「B面の愛」とでも呼んでみたいような感情。彼らは一見、立派な社会的地位の
ある大人を装っているけれど、同時にいつも、とても、不安そうに見える。「A面の愛」
に自信がなくて、その不安を隠すかのように饒舌でもある。

 結局は似たもの同士の英国男二人。作家志望の新聞記者ダン(ジュード・ロウ)
自分しか信じられるものがなく、最後に愛を失う。皮膚科医のラリー(クライヴ・オー
ウェン)
はダンよりも一枚も二枚も上手で、欲しいものを力づくで手に入れる。性欲
強くていつもギラついた目をしていて・・・。実はクライヴ目当てで(ジュードじゃなくて!)
この映画を観たのだけれど、ここでの彼は残念ながら素敵じゃない。いや、好みで
はない、と言ったほうがいいかもしれない。素敵じゃなく見せる彼の演技そのもの
は素晴らしい
のだから。

 新しい自分になりたくて、ひとりロンドンにやってきたアリス(ナタリー・ポートマン)。
彼女の「全部嘘よ」という言葉の意味が最後の最後で明かされる。ナタリーはデビュ
ー作『レオン』の時と同じ髪型で同じ涙を流しながら、愛を乞う「ストレンジャー」
見事に演じていると思う。クライヴとナタリーはゴールデン・グローブ賞にて助演男女
優賞を受賞、アカデミー賞にもノミネート
された。

クローサー2

 観終わって後味がいいわけでも、胸にこみ上げてくるものがあるわけでもない。
それでも、NYの交差点を歩くアリスに重なるファーストシーンと同じ歌声が、いつ
までも耳に残るような・・・。好きとは言いたくないけれど、どこか心にひっかかる、
大人の映画
です。

『クローサー』監督・製作:マイク・ニコルズ/衣装デザイン:アン・ロス/
       原作戯曲・脚本:パトリック・マーバー/主演:ジュリア・ロバーツ、
       ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライヴ・オーウェン
/2004・USA)
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テーマ:考えさせられた映画 - ジャンル:映画

[2008/03/13 17:07] | DVD/WOWOW | トラックバック(6) | コメント(15) |
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コメント
これはね、私、劇場で一度きりの鑑賞です。印象的だったのが冒頭のジュード・ロウとポートマンが出会うシーン、「ストレンジャー」と彼を呼ぶところ、それからラスト。壁面で確かポートマンが名乗っていた名前が刻まれていたのを彼がみて、結局、彼女のことを知らなかったってことを知る(だったと思う)。好きかといわれると、観終わったときは「金返せ」だったけど、このシーン特にラストはもう一度観たいと思う。
[2008/03/13 21:15] URL | シュエット #- [ 編集 ]
クライヴ・オーウェンなら、「キング・アーサー」とか「インサイドマン」良かったよ。キング・アーサーも途中からキーラ・ナイトレイにはずっこけるけどね…(笑)「インサイドマン」など賛否両論みたいだけど、私は面白かったわ。
[2008/03/13 21:42] URL | シュエット #- [ 編集 ]
シュエットさま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
劇場鑑賞されたのですね。「金返せ」か~、なかなか興味深いです(笑)。
面白いのか面白くないのかというより、なんか考えてしまう映画ですよね。
そうそう、ファーストシーンとラストがいいんですよね!
これはアンサンブル劇ですが、やっぱりアリスの物語なんだな・・と思います。
クライヴ、この作品は素敵じゃなかったのですが、次は『インサイドマン』ですね♪
『キングアーサー』は史劇っぽいのでちょっと苦手かも・・・?
またいろいろと教えて下さいませ。ではでは~。
[2008/03/14 09:02] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは~
コメントとTBをありがとうございました。
遅くなってごめんなさい。
本日は娘の卒業式でした。ちょっぴりもらい泣きして来ました(笑) 
彼女も4月からやっと高校生です。
さて、この作品、つかみはOKでしたね♪
そしてラストのアリスがとても良かったですよね。
確かに! ケイトが出ていたらガラリと雰囲気が違っていたでしょうね。
大いに心にひっかかる、映画でしたね~♪
[2008/03/14 14:52] URL | fizz♪ #0HzTjQFo [ 編集 ]

私、来ると思ったぁ~~~真紅さん?(笑)

カネ返せと叫ぶシュエットさんもおれば(笑)
誰が何と言おうとこの作品が好み!っという
私もおりますなぁ~~~(--)^^

マイク・ニコルズがそんじょそこらの
ラヴストーリーを撮るわけがござんせん!
思いっきり皮肉屋ですのよん、彼は。(笑)

「卒業」だって、あれは皆様、ラストで
ニコルズに煙に巻かれてらっしゃる。^^

私に言わせれば彼は実に狡猾な映画人。^^

愛を求めても求めても、求めている矛先が
すれ違って、不安定なまま暗中模索する
食うに困らん現代人の愛憎を描かせたら
ニコルズは巧いですよ。

オーウェンはミスキャストっぽいですけど
彼はいい俳優だと思います。
本作の場合にはもちっと都会的な風貌の
男優が欲しかったかなぁ~とも(--)^^
[2008/03/14 19:38] URL | viva jiji #kzLu3bv6 [ 編集 ]
fizz♪さま、こんにちは!こちらこそコメント&TBをありがとうございます。
まぁ、お嬢さまの卒業式・・・。おめでとうございます!
15の春ですね~。。うるうる。遠い昔、自分にもそんな日があったなぁ。
お嬢さまにもfizz♪さまにも、幸多い春でありますように。

で、この作品ですが。
「素敵なオープニングね~」と思っていたら、あらあら・・・。
なんかドロドロ(笑)。
アリスが一番よかったですね。彼女が一番「生身の、真っ当な人間」って感じがしたなぁ。
大人な映画でしたね!
ではでは、またお伺いします~。
[2008/03/14 20:05] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
viva jijiさま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
うふふ、そうそう。姐さんがこの映画「好き」って連呼されるものだから、思わず観てしまいましたわ。
クライヴも出ているし・・・。
彼、いい俳優ですよね? うれしいな~♪

マイク・ニコルズは近々『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』が公開されますね。
大好きなPSHが出ているものですから、絶対に観たいなと思っています。
『卒業』、あれってラストは大ハッピー・エンディングじゃないのですか?
そうか~、う~~ん、皮肉なんですか・・・。
もう、相当なお年だと思われますが、老いてますます人生の深みを描いてらっしゃるのですね!
姐さんの映画論、いつも参考にさせていただいておりますので~。
今後ともよろしくお願いいたします!ではでは~。
[2008/03/14 20:18] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
また、私でございますの(笑)

>大ハッピー・エンディングじゃないのですか?

あんれ~~真紅さんもそう感じてらっしゃるのね。^^;

バスの後部座席のふたりのシーン・・・
ウェディングドレスのエレン(キャサリン・ロス)の
表情、機会がありましたら今一度よ~~く
チェックしてみてほしいの。
D・ホフマンは笑顔と達成感をあらわして
いますけれど、ロスは決して笑顔ではないの。

その点をうま~~くお話に組み入れてたのが
「迷い婚」ね。^^

「卒業」のふたりはゼッタイ別れてますよ。

ま、私の推論“マイノリティリポート”だと
思ってくだしゃんせ。^^
でも、この推論は、自信ある。(笑)

[2008/03/14 22:50] URL | viva jiji #kzLu3bv6 [ 編集 ]
viva jijiさま、ふたたびいらっしゃいませ~♪
いやいや、もう遥か彼方の昔に観ましたから、詳細はあまり憶えてないのですが・・・。
最後、手を繋いで逃げてバスに乗った二人に「やった~☆」と思ったのは憶えています。
そうか、彼女は笑顔ではないのですね・・・。
花婿も可哀相ですよね(笑)。
まぁ、若い二人ですからね。「別れた」ほうに私も一枚!
『迷い婚』は未見なのですけれど、シャーリー・マクレーンですね。
是非観たいと思います。
また遊びにいらして下さい~。私も伺いますね。
でも姐さんのお宅、凄い方ばっかりなので自分、KYコメントしてるんじゃ・・と思って引いてしまうんですよ(泣)。
また、ソ~っとコメしますね。ではでは!
[2008/03/15 07:14] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは。またまたお邪魔が遅くなってごめんなさい。

わたしは、もちろん!ジュードが観たくて観て、
みすぼらしくてヨレヨレになっても、それでもダンが嫌いになれなかったのですが(処置なし)、
これって、舞台で観たらもっと違う感想になったような気がしました。

この頃はクライヴがかなりの苦手だったのだけど、
『トゥモロー・ワールド』を境に「何かこの人、ええやん」と一気に路線変更。
今回の『エリザベス~』が観れなかったのは悔しいけれど、
必ずDVDで観ようと思ってます。
クライヴ出演作なら、『グリーンフィンガーズ』『ブラザー・ハート』『ゴスフォード・パーク』もオススメです♪
[2008/03/16 16:29] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
いえいえ、お忙しい中、ご訪問感謝しております!

そうそう、ジュードはね~、いつも素敵ですよねコノヤローって(笑)。
日本でも上演された舞台なのですよね。どんなキャストだったんでしょうね~。
観たかったような、観たくないような(笑)。

これ観たら引きますよね、クライヴ・ルー・オーウェン。
そうそう、『トゥモロー・~』で私も「素敵!?」と思ったんですよ確か。
『エリザベス』ね~、悠雅さまに観ていただきたかったな~。。
でもDVDがありますから♪ 楽しみですね。
『グリーン~』『ゴスフォード~』、いつか観たい映画のTOP10に常に入ってます。
絶対、観ますね!その節はまたよろしくお願いいたします。
ではでは~。
[2008/03/16 22:19] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
お邪魔します~
豪華4人組ですものね。
色々期待しました・・・・笑
でも理解できない部分もあったかな・・・。
感想拝見していてもう一度再見してみたく
なりましたよ。そうですね・・・同監督新作あるのですよね。私も楽しみです
クライヴは私も悠雅さんがあげていらっしゃる
作品が好きです。寡黙な方が好み
なので~~。また遊びに来ます~
[2008/03/18 09:22] URL | みみこ #- [ 編集 ]
みみこさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
このキャストでは期待せずにはいられませんね。
彼らの感情の流れをじっくり描く作品ではなかったので、理解できないところもあったのかも。
でも、だからこそ観終わってからいろいろ考えさせられたのかもしれませんね。
これは、監督の作戦かも(笑)。
そうか~、クライヴは↑の作品では寡黙な役柄なのですね♪
頑張って観たいと思います!
ではでは、私もまた遊びに行きますね~。
[2008/03/19 08:46] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
わぁ~なるほど~!
B面の愛ってすごい表現!
まさに表裏一体、色んな角度から愛は向かって
閉じられていくものなのかもしれませんね。
[2010/06/02 21:50] URL | miyu #- [ 編集 ]
miyuさん! こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
お久しぶりですね~。
A面とかB面とか、自分がこんなこと書いてたなんてすっかり忘れてました(汗)。
でもこの映画はとっても印象深いです。
後ほど伺いますね。
[2010/06/04 13:31] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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映画『クローサー』
原題:Closer 訳の分からない、理解しがたい人々だ。英国発、30ヶ国語に翻訳されたP・マーバー戯曲の映画化、恋と不倫と浮気と嘘と真実に翻弄される物語。 最初の出会いはニューヨークから遊びにやってきたストリッパーのアリス(ナタリー・ポートマン)が交差...
[2008/03/14 00:25] 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~
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【CLOSER】2004年/アメリカ 監督:マイク・ニコルズ  出演:ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライヴ・オーウ...
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[2008/03/18 09:23] ちょっとお話
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4人の男女の微妙な感情のすれ違いを描いた大人向け恋愛ドラマ。監督はマイク・ニコルズ、キャストはジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライヴ・オーウェン他。 <あらすじ> ダン(ジュード・ロウ)は街で偶然出会ったアリス(ナタリー・ポー...
[2010/10/20 22:38] Yuhiの読書日記+α
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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