「中島ワールド」炸裂!~『嫌われ松子の一生』
 母からメール。「先日の朝日の映画評を読んで、今朝『嫌われ松子の一生』を観て
来ました。これは面白い!!邦画をみて久しぶりに感動、是非お勧めです」
「了解。次のレディースディに行ってみます」と返信した。寺脇研氏の映画評は私も
読んで気になっていたし、『ブロークン・フラワーズ』に行けなかった腹いせ(?)に、
久々の邦画を観るのも悪くないだろう。

 山田宗樹氏のベストセラー小説を映画化した本作は、主人公・川尻松子中谷美紀
の甥・笙(瑛太)を狂言回しに、男達に翻弄され続けた松子の波乱万丈な人生を描く。
原作は未読だが、典型的な「男運の悪い女」のかなり悲惨な話だ。にもかかわらず、CG
を多様した独特の色彩の映像と、明るいミュージカル仕立ての作劇で2時間余りを
疾走し、全く飽きさせない。もちろん、映像と音楽だけで観るものを引っ張るわけ
ではない。主演の中谷美紀を始め、宮藤官九郎伊勢谷友介柄本明谷原章介
豪華なキャストの生身の熱い演技があってこそ、高い技術が生かされていると言う
べきだろう。

 メディア向けのインタビューで、中谷美紀が監督に対する「恨み辛み」を語っている
ことが少し気になっていた。女性の一生を描く作品においては、主演女優の演技に
ほとんど全てがかかっている、と言っても過言ではない。監督の「シゴキ」は、中谷の
最高の演技を引き出すための意図的なものだったのだろうと思われるし、その試みは
成功していると言っていいと思う。中谷=松子の何かが、監督の劣情を刺激したの
かもしれない、などと思ってみたりもするけれど。
 不幸な女の一生、ミュージカル仕立て、監督と主演女優の相克、とくれば思い出
してしまうのが『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。女性が不幸になる悲劇が世界で一番
好きな監督ラース・フォン・トリアーと、中島哲也監督がダブって見えてしまうのは
私だけだろうか?中島監督が眼鏡を取ったら、容貌もなんとなく似ている。しかし
救いようのない後味の悪さが残る『ダンサー・・』に比べて、『松子』のラストには
爽快感すら漂うカタルシスがある。幼い頃から父の愛が得られないと感じ、終生「愛を
乞うひと
」だった松子。天国への階段を昇り切ったそこに、得られなかったはずの
愛が彼女を待っていた。松子の弟・紀夫(香川照之)の「つまらん人生たい」という言葉
で始まるこの物語が、決して彼女の人生を否定せず、神の愛だとすら言ってしまう
ところに監督の慈しみを感じてしまった。

 中島哲也監督の前作『下妻物語』は大好きな作品だった。深キョンと土屋アンナが役に
ドンピシャはまり、笑いのツボも押さえまくり。『松子』はこの『下妻』以上に絢爛豪華
な「中島ワールド全開といったところ。中谷美紀の全編体当たりの力演は言うまでもなく、
女囚役の土屋アンナ(深キョンもいたら最高!だったのに)、着物姿の黒沢あすか、ポロ
シャツの下に透けるランニングがツボの劇団ひとりなど、脇役陣の個性も素晴らしい。
これはキャスティングの勝利。映像と音楽が渾然一体となった、凝りに凝ったファンタジー
映画と言う「嘘」をエンターテインメントに昇華する美学。どこまでもそれを貫く中島
哲也監督、あなたは凄い文句なし

(『嫌われ松子の一生』監督・中島哲也/主演・中谷美紀/2006・日本)
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テーマ:嫌われ松子の一生 - ジャンル:映画

[2006/06/15 11:22] | 映画 | トラックバック(8) | コメント(11) |
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コメント
こんにちは。さっそくやって参りました。
絢爛豪華な映像でしたね。凄かった。
中谷美紀にとっては唯一無二の作品になるでしょう。
(私は監督との齟齬を感じてしまいましたが)
「つまらん人生」なんてないよと、
ゴージャスに迫ってくるようでした。
キャスティングも完璧でしたね。
クドカンの凄みにクラッときたし、
真紅さんも書いていらっしゃいますが
劇団ひとりのランニングに何だか感心してしまいました^^
中島哲也監督、次回作も楽しみです。
[2006/06/15 12:29] URL | miyuco #ubwH2qN2 [ 編集 ]
miyucoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
この作品、ポストプロダクションに半年以上かけたそうですね。圧巻でした。
クドカンっていい役者さんでもあるのですね。あの不健康そうなオーラは物書きにしか出せないでしょう。
って、劇団ひとりも小説出してますね(汗)。ランニングはホントにツボでした。細かい。
中島監督の次回作、楽しみですね~。このまま突っ走るのか?否か。
ではまた遊びにいらして下さい。ありがとうございました。
[2006/06/15 12:51] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんわ。TBさせて頂きました。
この映画をお薦めなさるなんて、本当に素敵な母上様で、いつもうらやましく思っております。

本作はいろいろと笑いどころも満載でしたが、佐伯先生@谷原章介のジャージーパンツ引き上げと、沢村社長@黒沢あすかの「超淫乱!」には腹抱えて笑ってしまいました…。あと松子が龍に「しつけーよ!」って言われるとことか。
公開中に是非もう一度観てみたいと思ってます。
[2006/06/15 20:00] URL | shito #C8MVEw9M [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは。TBさせていただきました!
本当に中島ワールド炸裂!!!でしたねえ。そしてわたしも女囚たちの中に深キョンがいないか必死に探しておりました~。
個人的に‘これはわざわざ映画にしなくてもよかったんじゃないのかなあ’と思うものが最近(特に邦画に)多いように思えるのですが、「松子」はドラマでは絶対駄目だったでしょうね。そしてみなさんどれだけのエネルギーを注いでこの映画を作られたのか・・・敬服します。それではこの辺で。
[2006/06/15 22:04] URL | かいろ #- [ 編集 ]
shitoさん、かいろさん、こんにちは。コメント&TBありがとうございました。まとめレスにて失礼させて下さい。

☆shitoさん

こちらには初めて来ていただきましたね。ようこそ!谷原章介ってどんどん「変な人」になっちゃってますね。ただの「カッコイイ人」で終りたくないのでしょうが。
黒沢あすかは初めて見ましたが、キョーレツでした。脇役がホントにみんなハマってて強烈なのに、主役を喰ってないところもよかった。
でもその主役・中谷美紀が一番ハマってないと言えばハマってなかったように思います。なんか不思議ですね。
ホント、いい映画でした。DVDで観ても楽しめるとは思いますが、映画館で観てよかったと思います。
ではまた是非覗いてみて下さいね。ありがとうございました。

☆かいろさん

『松子』ドラマ化したら暗~い作品になるでしょうね。観たくないな~。
中島監督は、『下妻』でも本作でも脚本も手がけているのですね。ホント、すごい才能&力量だな~と感服します。
映画としては『松子』のほうがいいのかもしれないけど、私は『下妻』のほうが好きかな。
イチゴ&桃子コンビが最高です!続編やらないのでしょうかね?
TB、いつもトライしてるのですが送れなくてごめんなさい。
またお話して下さいね。ありがとうございました。
[2006/06/16 01:43] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
>真紅さん
コメント有り難うございました。
こちらかTB貼らせていただきました。
やっぱり『ダンサー・イン・ザ・ダーク』思い出しますね。私はラース・フォン・トリアーが大の苦手で…(苦笑)あれに比べたら松子は本当に幸せでしたね。
[2006/06/16 12:57] URL | Boh #- [ 編集 ]
Bohさん、初めまして!拙ブログにお越し下さり、コメント&TBありがとうございます。
こちらからTBできなくてごめんなさいね。
ラース・フォン・トリアーは、苦手な女性が多いのではないでしょうか?私も『奇跡の海』は嫌いな映画ではないですが(エミリー・ワトソンがいい)、『ダンサー・・』は・・・。
『ドッグヴィル』は未見です。いつかは観たいと思ってはいるのですが。
また覗いてみて下さいね。ありがとうございました。
[2006/06/16 13:44] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、お久しぶりでございます。
皆様のお宅に伺える機会に用事が重なると再訪も難しくすっかりご無沙汰してしまいました。
古い話で申し訳ありませんが、その節はびあんこさんのお宅にてお騒がせいたしましたこと、お詫び申し上げます。
更に、こちらの記事へのコメントでないこと重ねてお詫びいたします。その場その場で即対処できるといいのですが、そういうわけにもいかずご迷惑をおかけいたしますことお許しください。
先々週は真紅さんに「私ももっとジェイクに映画出演してほしいです」といったコメント差し上げたいと思っていたのですが、なんだかいっぱいいっぱいになってしまい、びあんこさんのお宅に駆け込むのがやっとでした。そのうえお気遣いの言葉までいただいてしまい、更にこの対応の遅さたるや、誰かを批判できる立場では全然ありませんでした。
そのうえ、皆様の記事(わー、これまた2週間も前のことを!ほんっとにすみません!)では「よしよし」と言われてる気がいたしまして、イイ歳して全く面目ないです。
以降は本来の慎み深い態度を堅持する所存でございますので、これからも時折関係ないところに拙コメント差し上げた際にはよろしくお願い申し上げます。
今回、これから『これだけは村上さんに言っておこう』と「BBM#13」にコメントさせていただこうと思っています。過去記事へのコメントばかりで恐縮ですが、お時間ございます時にでもご一読いただければ倖いです。
[2006/06/17 14:58] URL | 沙斗魔 #- [ 編集 ]
沙斗魔さん、こんにちは。お久しぶりですね、お元気でしたか?コメントありがとうございます。
びあんこさん宅でのコメントの件、びあんこさんが了承されているのですから気になさらぬよう。拙宅にまでお気遣いありがとうございます。
お忙しいのは承知しておりますので、どうぞいつでもお時間ありますときに遊びにいらして下さい。
最近私にしてはマメに更新しておりますので、どうぞごゆっくり。
ではでは。
[2006/06/17 16:07] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、いつもTB、感謝です♪
いつもながら母上様の審美眼には敬服の至りであります。
なんと感受性の若々しいお母様でらっしゃる事か!
カゴメはこの作品、“神の愛”とは、あの妹の事だなぁぁと思いましたです。
波乱万丈さは違えども、求めても得られぬ人生だったという点では、
両者共まったく同じでしたね。
主演の中谷さん、カゴメはあまり良く存じ上げませんが、
そうとう監督に絞られてたようで。
ま、映画作るのも命懸けだから、しょーがありませんなぁぁ(笑)。
でも苦労した分、俳優業にとってはかなり良い勲章になったのでは?
[2006/12/12 12:55] URL | カゴメ #- [ 編集 ]
カゴメさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます♪
ウチの母はね、映画好きなおばあちゃんなんですけど、時々公にはできないようなとんでもないことも言いますから(笑)。
あのラスト、階段での「曲~げて、伸ばして、お星様をつかもう♪」が耳に残りますよね~。。その後の「おかえり」がまた・・。
中谷美紀さんは、エッセイからはちょっと(かなり)拘りの強い女性だな、という印象でした。
でも、監督の言いなりだったら女優さんやってられないでしょうしね・・。
中島監督の次回作が楽しみですね!
カゴメさまの『メルキアデス~』のレビューも楽しみにしておりますので、また伺いますね。ありがとうございました。
[2006/12/12 16:39] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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『嫌われ松子の一生』みてきました。
極彩色の転落人生。お姫様のような人生に憧れ、でも、どうしてもうまくいかない松子の一生。「なんで~?」画面はお花とか星とかキラキラしたもので彩られています。松子のために。よくできています。私にとっては、感動…とか好きとかいう感情とはちょっと違う感覚。 オー
[2006/06/15 12:14] milk pan,milk crown
『嫌われ松子の一生』('06/日本)
 すべての愚かしい人々のために、すべてのはぐれ者たちのために。 くだらない、つまらない、馬鹿馬鹿しくも切ない本質をこれ見よがしにゴテゴテと飾り立て、さあ見世物小屋へいらっしゃい、ガラクタでデタラメだけど素晴らしいでしょ!と魅せるのがつまり、私が愛する“キ
[2006/06/15 19:31] 傍流点景
嫌われ松子の一生
うう~ん、またものすごい映画を観てしまいました。皆さんもご存知だと思いますが、「
[2006/06/15 21:53] カイロの紫のバラライカ
映画よりも面白い 『嫌われ松子の一年』
 映画『嫌われ松子の一生』は、 ?主人公・松子の堕ちっぷりが見事 ?その松子を演じる中谷美紀の“ここまでやるか”感が凄い! ?宮藤官九郎、劇団ひとり、武田真治、荒川良々、伊勢谷友介等、松子をめぐる男たち&その他のキャストが豪華で、ゴージャス! などに関して
[2006/06/16 02:40] 海から始まる!?
松子の一生に涙する【嫌われ松子の一生】
「嫌われ松子の一生」 タイトルだけでキョーレツである。 本屋で平積みされている
[2006/06/16 12:44] 犬も歩けばBohにあたる!
★「嫌われ松子の一生」、こういう事書くからカゴメも嫌われる(苦笑)★
「嫌われ松子の一生」(2006) 日本 MEMORIES OF MATSUKO監督:中島哲也プロデューサー:石田雄治 佐谷秀美エグゼクティブプロデューサー:間瀬泰宏小玉圭太原作:山田宗樹 『嫌われ松子の一生』脚本:中島哲也撮影:阿藤正一美術:桑島十和子編集:小池義幸音楽:ガブリ....
[2006/12/12 12:48] ★☆カゴメのシネマ洞☆★
嫌われ松子の一生
 『不幸って何? 松子。人生を100%生きた女。』  コチラの「嫌われ松子の一生」は、山田宗樹さんの同名小説の映画化で、5/27公開になったPG12指定の映画なんですが、公開3週目にも関わらずかなり混雑していました。あの「下妻物語」の中島哲也監督の最新作ですし
[2008/03/14 23:12] ☆彡映画鑑賞日記☆彡
嫌われ松子の一生
松子。人生を100%生きた女。
[2009/07/19 14:57] Addict allcinema 映画レビュー
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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