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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

奇跡のつづれおり~『潜水服は蝶の夢を見る』#2

潜水服・本

  潜水服は蝶の夢を見る

 /ジャン=ドミニック・ボービー・著
 /河野万里子・訳
 /1998・講談社



 映画潜水服は蝶の夢を見る原作は、プロローグと28の章から成り、訳者に
よるあとがき(『魂のエレガンス』、必読!)
を含めても166ページという小さな本
しかし、著者がクロード・マンディビルの献身とESA版アルファベットの助けを借り、
左目の瞬きだけで綴った言葉の一つ一つ、句読点の一つ一つまでが限りなく重い
けれど、文章となって立ち上がってくるそれらは軽やかでスマートで、蝶のように
自由
だ。そして何より、愛に溢れている。いつもの読書よりも何倍もの時間をかけ
て、ゆっくり、ゆっくりと読み進む。ジャン=ドーユーモア時に笑い、時に涙し
ながら。


 読みながら映画の場面が浮かんで来て、ジュリアン・シュナーベル創造力
撮影監督であるヤヌス・カミンスキーが生み出したマジカルな映像のチカラ、その
偉大さと影響力に思いを馳せずにはいられなかった。読了後、再び映画館に向か
う。


潜水服・本2

 改めて、映画が原作に忠実に作られていることに驚く。全て「ほんとうに起こった
出来事」
だという重み

 初見時、スピーカー付き電話を設置する場面で「無言電話でもするつもりか」とい
うジョークに思わず笑ってしまった。けれど、言語療法士アンリエットの怒りに触れ、
不謹慎だったかな、と反省。しかし今回よく聴いてみると、ジャン=ドーもあの言葉
に大笑いしている!
なんだか救われた気分

 聖地ルルドでは、土産物屋に置かれたイエス・キリストのポストカード瞬き
している。深刻な題材なはずなのにこんな「遊びゴコロ」を忘れない、なんて素敵
な映画
なんだろう。灯台浜辺、波と、車椅子のジャン=ドーの姿を捉えたショット
が美しい。そして音楽の素晴らしさ!

潜水服・本3

 ペンを持つことも、キーボードを前にすることも出来ず、頭の中だけでこれほどの
文章を完成させたジャン=ドミニク・ボビー。彼は根っからの「表現者」であり、また
「自由人」だったのだと思う。記憶と想像力を解き放ち、「心」だけの存在になっても
なお「生きる」ことを諦めなかった。何かを表現することが即ち、彼にとっては生きる
ということだったのだろう。原作のカバー裏に載っている、「執筆中」のジャン=ドー
(とクロード)のモノクロ写真をしばし見つめる。これは「奇跡」だと言ったら、彼は
どんなジョークで返すだろう。


 ジャン=ドーが亡くなって10年アカデミー賞では惜しくも無冠に終わってしまった
けれど、内なる声に忠実に生きること人間性とは、魂の自由とは何かを問いかけ
てくるこの映画は、永く私の心に留まり続けるだろう。 
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テーマ : 潜水服は蝶の夢を見る
ジャンル : 映画

2008-02-28 : 映画 : コメント : 8 : トラックバック : 5
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「潜水服は蝶の夢を見る」
「Le Scaphandre et le papillon」...aka「The Diving Bell and the Butterfly」 2007 フランス/USA 原作者であり、主人公のジャン・ドミニクに「キングス&クイーン/2004」「ミュンヘン/2005」のマチュー・アマルリック。 彼の3人の子供たちの母親セリーヌに「フ
2008-03-02 00:25 : ヨーロッパ映画を観よう!
潜水服は蝶の夢を見る
潜水服は蝶の夢を見るジャン=ドミニック ボービー 河野 万里子 講談社 1998-03-05売り上げランキング : 279おすすめ平均 魂が刻むひとつひとつの言...
2008-03-14 16:54 : 読後鑑賞
「潜水服は蝶の夢を見る」 ジャン=ドミニック・ボービー
{/book/}「潜水服は蝶の夢を見る」 ジャン=ドミニック・ボービー 映画『潜水服は蝶の夢を見る』の原作本です。映画は2007年度カンヌ映画祭で監督賞を受賞しました。 著者のジャン=ドミニック・ボービー氏は、1952年生まれ。世界的なファッション雑誌『ELLE』の名編集
2008-04-26 20:09 : ミチの雑記帳
生きたいという思いの強さ。~「潜水服は蝶の夢をみる」~
カンヌもゴールデングローブ賞も監督賞とって もちろんアカデミー賞にもノミネートされてる作品。 おすぎが宣伝する映画と相性悪いのな、私って。(笑) でも今回のは違ってた。マジオススメの・・・ ど根性映画やん。(コラ) 講談社からハードカバーが出てます。 98...
2008-05-06 14:57 : ペパーミントの魔術師
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2009-02-09 20:27 : ヨム・ミル・キク
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非公開コメント

こちらにコメントさせてね。
本を読んでからだと違った味わい方が
でますよね。やはり実話というのは
大きいですよね。
電話のシーンは私も覚えています。
そんな言葉も素直にジョークとしてきくことが
できる彼だからこそ、前向きに人生
歩むことができたんですよね。
やっぱり本人の精神力って
重要ですよね。
無冠は残念だな~~
2008-03-04 12:44 : みみこ URL : 編集
みみこさま、こんにちは~。こちらにコメントありがとうございます。
原作、とってもよかったですよ~。みみこさまにも是非オススメしたいです。
もう、本当にずっしり来ました。
ジャン=ドーのことを編集者だったクロードが「彼には魂のエレガンスとも言うべきものが備わっていた」と言っているんですが、ジョークを笑って受け入れられるところもエレガントですよね。
「気の持ちよう」なんですよね。それがまた難しいのですが・・・。
無冠は残念ですが、もう十分評価されているような気もしたりします。
ではでは、またです~。
2008-03-04 14:53 : 真紅 URL : 編集
始めまして
始めまして、レビューを読んで素晴らしいなと思ったので、トラックバックさせていただきました。
イエスキリストのポストカードの瞬きみました。一瞬だったので、錯覚かなと思ったのですが、こんな小さな演出がいくつもあって面白かったです。
本を出版したいと電話をかける場面で、出版社の事務室に蝶が飛んでいたのも印象的でした。

他のレビューも素敵だなぁと思ったのでリンクを張らせていただきました。よろしくお願いいたいます。失礼しました。
2008-03-14 17:01 : 月夜野 URL : 編集
月夜野さま、初めまして!コメント&TBをありがとうございます。ご訪問、感謝です。
あのイエスの瞬きを確認したかったのも再鑑賞の理由の一つなんです。
一瞬でしたが確かに瞬いていましたよね!
事務所の蝶はちょっと自信がないのですが・・・。う~ん悔しい!
なんだか本当に、遊び心もある不思議な映画でした。
お褒めにあずかり感激です。リンクもありがとうございました。
後ほどお邪魔させていただきますね。
こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
ではでは~。
2008-03-14 20:10 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、TBありがとうございました。
実は、こちらからTB差し上げようとして「読書」のカテゴリを探してました。
で、見つからなかったので一時退散していたのです。

映画と本、ダブルで堪能したいですよね。
あとがきは本当に必読だし、泣けてしまいました。
まさに「魂のエレガンス」という言葉がピッタリ!
彼とクロードの写真が載っていたでしょう?
実際にも凄くハンサムと美人さんだったので驚きました!
2008-04-26 20:12 : ミチ URL : 編集
ミチさま、こんにちは。こちらこそコメント&TBをありがとうございます。
そうなんです、この記事は映画の感想とごっちゃになっているので、映画のカテゴリに入れてしまったんです。
お手数かけました! それからコメントレスも遅くなってごめんなさいね~。

これは映画を観た方には手にとっていただきたい本ですよね。
あとがきは、パンフにも丸々掲載されていたんですよ!
私、めったにパンフって買わないんですが、本作は再見のときに買ってしまいました。
写真は、私も見入ってしまいました。映画のワンシーンのようでしたね。。
映画も本も、素晴らしい作品でした!
ではでは、またお伺いします~。
2008-04-28 20:11 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、本当今頃になってしまいましたが
宝物みたいにスペシャルな本になりました。
真紅さんのおっしゃる通り、
「一つひとつの文がとても重いのに、軽やかで、味わい深くて、蝶のような自由さを感じる…」
編集者の言う、「彼は魂のエレガンスというものを身につけていた」って本当にその通り。
最後まで希望を捨てず、ジョークを忘れず…

本を読んで、映画のワンシーンを少しづつ思い出してらっしゃいますよね。
そして感想が、「なんていい映画だったんだろう!」
まさにその通り。
この本にも打たれましたが、映画の良さがしみじみと浮かびました。
2015-07-07 15:59 : とらねこ URL : 編集
とらねこさん、こんにちは~。コメントありがとうございます。
ホント、薄くて小さな本だけど、奇蹟のような一冊ですよね。
もう7年も前なんだね、、この頃は時間があったから、映画観て原作に触れて再見して、、なんて贅沢なことしてたんだなぁ。
しかも感想まで書いてね(笑)。

でも、7年も経ってとらねこさんからコメントいただけるから、やっぱりブログ続けたいなと思う。
ツィッターだと、どんどん流れて行って残らないもんね、、。
TLもそんな遡れないし。

特にこういう素晴らしい本&映画は、感想残したいなと思いますね。
読書もしたいんだけどね、、忙しくて図書館も行けない(泣)。
2015-07-09 03:56 : 真紅 URL : 編集
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