切なさの行方~『人のセックスを笑うな』
人のセックスを笑うな・本

★映画版の感想はコチラ⇒『人のセックスを笑うな』★

 39歳のユリ19歳のオレ、磯貝みるめ。美術専門学校で講師と生徒として出会
った二人は恋に落ちる。しかし、ユリにはがいた・・・。
 粗筋だけ書いてみると、主人公たちの年齢設定だけ突飛な、ありふれたラブス
トーリー
のよう。けれども、この短い小説の中には「恋の不思議」がぎゅうぎゅうに
詰まっている。切なさ、愛しさ、会いたさ、見たさで病めるマイ・マインド。

 本作が文藝賞を受賞したとき、高橋源一郎氏が絶賛していたのはよく憶えてい
る。それでも手にとってみる気にならなかったのは、タイトルのインパクトと著者の
ペンネームの変テコリンさに引いてしまったからかもしれない。映画は素晴らしか
ったけれど、小説ももちろん素晴らしくいい!この作品の映画化を企画してくれた
方々に感謝。もしも映画にならなかったら、危うくこの名作を知らずに生きていく
ところだった。

 私は映画を観てからこの原作を読んだのだけれど、読んでから映画を観る方に
は、タイトルと設定が同じだけで全く別の作品だと思って観ていただきたいと思う。
セリフにも登場人物たちのキャラクターにも微妙に手が加えられているし、特に
ユリは全くイメージが違う!でも、どちらのユリも私は好きだ。映画の自由奔放
なユリ
には憧れを抱くし、小説のユリには共感する。彼女の「病的に弱い」ところに。

 人が誰かを好きになったら、どうしようもなく切なくなるのは何故なのだろう?
その人と同化してしまいたい、その人の一部として生きてゆきたいのに、その願い
永遠に叶えられることはない。ベッドの中でするありきたりな動作に酔うことし
かできないから、愛と苦悩はセットなんだ。 

 小説のラスト、冬の花火映像的にとても美しいシーンになったんじゃないだろ
うか。それが映画で観られなかったことだけが残念。ユリの代わりを求めず、彼女
のいない寂しさやストレスを一生、抱えて生きようとするみるめの「潔さ」感動すら
憶える。一読推奨。文庫もあります。

人のセックスを笑うな・文庫

『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ・著/2004・河出書房新社)
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テーマ:オススメ本 - ジャンル:小説・文学

[2008/02/16 05:57] | 読書 | トラックバック(5) | コメント(12) |
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コメント
真紅さま
Oh~! 〈Yes…はつかないけれど- 笑〉最初の5行読んじゃいました。
最初の5行だけで…魅力が伝わってきます.
いつも思っている事なのですが、真紅さんの表題のコピーには
感心させられてしまいます。
〈切なさの行方〉ウ~ン成る程…行方決まっていませんでしたものね。
これで更に早く本屋さんへ行きたくなりました。

[2008/02/16 08:29] URL | Maria #tnM.RKLM [ 編集 ]
Mariaさま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
映画も好きでしたが、原作もとってもよかったです♪
山崎さんの本は全部読みたくなりました。
記事、全部読まれても大丈夫だったかも・・・?
短い小説ですし、読みやすいですよ。是非是非読んでみて下さいませ。
ではでは、私もまたお伺いします!
[2008/02/16 17:07] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんばんは♪
TBありがとうございました。
タイトルだけで読むのをためらっている人がとっても多いと思います。
かくいう私もそうでした(笑)
でも、読んでみたら、なんて胸がキュンキュンするのでしょうか。
文が上手いとか奥行きがあるとかいう小説じゃないけど、なんかギュッと感性に響いてくるような感じでした(私に感性があるかないかはともかく)
[2008/02/16 23:21] URL | ミチ #0eCMEFRs [ 編集 ]
ミチさま、こんにちは~。こちらこそコメント&TBをありがとうございます。
私も、タイトルとペンネームで引いていた一人です。
でも、それこそが「センス」なんでしょうね。感性と言い換えてもいいと思いますが。
文庫版の解説で高橋源一郎氏がいろいろ書いているのですが、ペンネームにも深い(?)意図があるようです。
映画化のおかげで読むことができて、本当によかったな~と思います。
『桂美容室~』も読んだらお伺いしますね!ではでは~。
[2008/02/17 04:41] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま
読みました~。設定やストーリーに映画と原作の違いがあるのが当然なのに、何故か不満が…と言う事多々ありましたが、この作品に限っては両方ともヨカッタです。
私もナオコーラさんの著作、これから気を付けてチェックしようと思いました。
TB させて戴きました。
[2008/02/17 15:38] URL | Maria #DLu.iHko [ 編集 ]
Mariaさま、こんにちは!コメント&TBをありがとうございます。
早速お読みになったのですね。
私も、原作→映画だと必ずガッカリするし、映画→原作だと読むのを挫折してしまうことが多いです。
しかし、この作品は両方ともそれぞれ別物で、それぞれ優れていると感じました。
後ほど楽しみにお伺いしますね。ではでは~。
[2008/02/18 09:14] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん~こんばんは。
映画は1,2ヶ月前に見ていたのだけれど、小説をやっと読むことが出来ました。結構人気で順番回ってくるのに時間がかかった・・・

私は小説の方が面白かったです。ナオコーラさん文章上手だな~って思いました。
映画版は残念ながら家で見た・・・ってのも良くなかったかな・・・劇場だったら、しっかり見れたのかもしれないし、遠景がずーっと続く独特のショットもより一層楽しめたのかもしれません。
映画版の感想の方も拝見させて頂きましたーー^^ 真紅さんは、両方それぞれ良かったのですね☆
[2008/11/12 21:19] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさま、こんにちは。コメントありがとうございます~。
TBは映画感想のほうに下さったのですね、ありがとう!

そうそう、ナオコーラさんはこのデビュー作が傑作すぎて、なかなかその先に行けない印象です。
夏に新作も読んだのですが、感想書く時間がなくて(泣)。
才能ある方だと思うので、頑張って欲しいですね。

映画は、ロングショット、ワンカットで撮っていましたからスクリーンで観る価値アリでしたよ。
DVDだったらちょっと興醒めかもしれないシーンも、劇場だと観れたりしますよね。
私は映画、松ケンがイタイケでね~。。永作ちゃん、おいしかったよね~。フフフ。
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2008/11/12 23:20] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんは!

僕もタイトルと著者のお名前をみて、気にはなりながらもなんかずっとひいていました。
でも読んでみたら、真紅さんがおっしゃるように傑作!でした。
描かれているのは年齢差くらいでそれほど突飛ではないストーリー。
でもそこにある切なさってのは誰でも恋をしたら感じるものなんですよね。
その切なさにやられました。
>愛と苦悩はセットなんだ
まさにそうなんですよね。苦悩から逃げてちゃだめなんだなあ。
[2009/10/05 21:15] URL | はらやん #- [ 編集 ]
はらやんさん、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
引きますよね、このタイトルとペンネーム(笑)。
ナオコーラさんってエッセイは面白くないんですけど、小説の文章は本当に上手だと思います。
デビュー作にしてこの完成度! 素晴らしいですね。
私は映画を観て初めて原作を読んでみたいと思ったので、映画に感謝ですね。
はらやんさんも、是非映画観てみて下さい。
松ケンがね。。イタイケなんですよ♪
[2009/10/06 18:33] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
お邪魔します~
少しまえに読みました。
話題は過ぎていたので、借りやすかったです。
文藝賞をとった本だったのですね。
同じ時に野ブタをプロデュースも受賞していたのね。そっちの方は当時読んでいたのに、こちたは見逃ていたわ。
思った以上に薄くて驚いたけれど
せつなさは大でした。花火のシーンがない
映画版は残念だけれどそのうちみてみるわ
[2010/03/18 10:10] URL | みみこ #mQop/nM. [ 編集 ]
みみこさん、こんにちは。コメントありがとうございます~。
そうなんだ~、私は『野ブタ。』は読んでないんですよ。
あちらはテレビドラマにも確かなりましたし、話題作でしたよね~。
この本、薄いし、行間もすっごく広かったですよね(笑)。
でも、なんとも言えない描写力というか、デビュー作にして既に完成されている印象を受けました。
映画も、是非観てみて下さいね。
私は、もうすぐナオコーラさんの新作読む予定です♪
[2010/03/18 20:09] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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