原作読了、あれこれ~『ラスト、コーション/色・戒』#2
色、戒文庫


 アイリーン・チャン短編集
 ラスト、コーション 色|戒

 集英社文庫/2007



 アイリーン・チャンによる『ラスト、コーション/色・戒』原作を読了。女性作家による
短編小説の脚色
というところもBBMと本作が「姉妹作」と言われる一因だが、BBM
同様、映画はこの短い物語を本当に巧く膨らませていると思う。イー宅の麻雀風景
に始まり、一貫してチアチーの視点から物語を回想しながら、ラストはイーの視点
に切り替わる構成
は見事。映画では三回に渡って徹底的に描写された性愛シーン
は原作にはないが、チアチーがイーとの逢瀬から心に響くものを感じたことは暗示さ
れている。女性たちの服装や装飾品、香港や上海の街並みが、映画の中でいかに
忠実に再現されていたか。原作を読みながら、映像が立ち上がってくるかのようだっ
た。

 原作では、イーとチアチー双方が「相手が自分を本当に愛していた」と感じている。
二人の関係が偽りのものだったとしても、そこにあった感情は確かなものだったと
信じているのだ。

ラスト、コーション8

 そしてこの物語も「若さとイノセンスの喪失」についての物語ではないか。チアチー
やクァンは若さゆえの無防備さで抗日運動に突き進み、それは後戻りできない道
った。殺人を犯したこと、望まない相手と「練習のために」ベッドをともにしたことで
「若さとイノセンス」を喪った二人。「どうして、三年前にしてくれなかったの?」若さ
ゆえに、成し遂げられなかった、気付けなかったこともある。もう二度とその場所
へ戻れない
ことは、若いときには決してわからないものだ。「遅すぎたのだ」

 ところで、初見のときに感じてどうしても書いておきたいことを二つ。
一つはやはり、あの「ボカシ」。観た方の感想もほとんどこのことについて怒りを持っ
て言及されているようだけれど、私も猛烈に腹が立った。あれは一体何の意味があ
って「ボカシ」ているのだろう? 映画そのものや監督や、俳優たちにもう少し敬意
払って欲しいと思う。いっそのこと、アン・リーが編集し直したという性愛シーンなしの
「中国版」を観てみたいと思った。DVDでは「無修正」になっていることを希望。

 そしてもう一つは、指輪のシーン。出来上がった指輪の入っている赤いケースが、
カルティエのものとソックリだったこと。と言うか、エンドロールでカルティエに
Special Thanksがクレジットされていたから、あの指輪(とケース)はカルティエ
のもの
なのだろう。ということはあの店はカルティエなのだろうか? いや、そん
なはずはない。なんだかあの場面は混乱してしまった。ケースを映すことがタイア
ップの条件だったのかな? ちょっと納得行かない

 映画のラスト、チアチーの部屋のベッドに腰掛け、物思うイー。夢の跡のような
シーツの皺をじっと見つめる。午後10時を告げる時計の音を聴く彼の哀切な表情
を生み出したトニー・レオン。やっぱり、凄い。
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:ラスト、コーション - ジャンル:映画

[2008/02/15 09:56] | ラスト、コーション/色・戒 | トラックバック(1) | コメント(2) |
<<切なさの行方~『人のセックスを笑うな』 | ホーム | Valentine's day, 2008.>>
コメント
アメリカのDVD通販メルマガによると、数分カット版と劇場公開版(アメリカならボカシないよね?)が近々発売になるようです。あと、「アメリカンギャングスター」も普通版と豪華版が出るようで。あと、「レンディション」(まだ日本公開されてないのにー!)も。
早いですねえ、向こうの発売は。でも気になるのは規格。ブルーレイ勝利って事で。消費者無視したこの仕打ち!
私の持っているリーフリ機はブルーレイ再生不可能なんだろうなあ、はーあ。
さて、日本版DVDはどうなるのでしょうか....?
[2008/02/19 22:15] URL | garagie #- [ 編集 ]
garagieさま、こちらにもコメントをありがとうございます。
アメリカはDVD化が本当に早いですね。
『レンディション』は日本公開はもうないのではないでしょうか・・・。
残念ですが、DVDストレートでも日本版を出して欲しいと思っています。
私はリーフリ機、持っていないのですよ。持っているHDDレコーダーもBDは再生できないと思います。
プレステ3でも買おうかな・・・。
この映画はDVD化される暁には絶対無修正にして欲しいですね!
ホント、興醒めでしたから・・・。
ではでは、またです。
[2008/02/20 09:48] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://thinkingdays.blog42.fc2.com/tb.php/399-ef7a8b46
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
「ラスト、コーション」情熱をもって生きるとは、陳腐なことなのだ。
「ラスト、コーション」★★★★ トニー・レオン、タン・ウェィ主演 アン・リー監督、アメリカ 中国 、2007年、158分 日本軍占領下の1942年の上海、 大学生だった主人公は、演劇仲間と抗日運動に 加わり、ある男の暗殺計画に強力する。 トニー・レオンに冷...
[2008/02/25 00:56] soramove
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

Recent Entries

Categories

What's New?

真紅

Author:真紅
Every cloud has a silver lining.

Recent Comments

Recent TrackBacks

Archives

My Favorite

Search this site

RSS

Thank You!