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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

その名にちなんで~『嵐が丘』

嵐が丘


 WUTHERING HEIGHTS


「命なしには生きられない」

 言わずと知れた、エミリ・ブロンテによる世界的名作の映画化。ヒース・レジャー
本名(Heathcliff Andrew Ledger)、ヒースクリフは、この作品の主人公の
名前から採られたというのは有名な話
。原作の何度目かの映画化である本作は
レイフ・ファインズの映画デビュー作でもあり、以前から観たい、観たいと思って
いた。原作を読んだことがないのに粗筋だけは知っているけれど、今、今こそ、
この映画を観なくては・・・。ヒースが誕生したとき、彼の両親は何を願い、その名
を授けたのだろう?


 荒涼とした岩の大地に、どんよりと曇った空、吹きすさぶ風。その英国らしい
寒々とした風景とは対照的に見える、ヒースクリフ(レイフ・ファインズ)キャシー
(ジュリエット・ビノシュ)
の、激しく熱い愛。互いの姿をのように求めながらも、
その過剰さゆえにすれ違い、憎み合い、離れてゆく。命の限り、いや命が尽き
てもなお
、キャシーの愛だけを求め、彷徨うヒースクリフ。その情念の凄まじさ、
滅びにも似た激情・・・。坂本龍一の静かだけれどドラマチックなスコアが、この
物語に似合い過ぎている。

 正直、ここまでヒースクリフという人が、常軌を逸していると感じられるほどに
激しい
人物だとは思っていなかった。その復讐心は、執念とか怨念と言い換え
ても過言でない気がする。しかし、ある側面から見れば、たった一人の運命の人
を狂おしいほど求め続ける、純粋で不器用な男だと考えられなくもない。リバプ
ールの浮浪児だった少年は、ヨークシャーの荒野で木や鳥と話し、風の歌を聴き、
嵐を呼ぶ
。自分の本能が欲するものへと、神も悪魔も畏れることなく、どこまで
もまっしぐらに突き進む。愚直な生き方しかできない男。しかし、その鋭敏過ぎ
る感性
は、触れるもの全てを傷つける。生涯でたった一人の、愛する女さえも・・・。

嵐が丘2

 裕福な領主であるリントンとの結婚という「現実」を選択するキャシーも、ヒース
クリフと同じ激しさを持つ。ヒースクリフこそが自分のであり、であると心では
理解しながらも、別離の道を選ぶ彼女の叫び。"I AM Heathcliff!"

 この悲劇の物語が、ヒースの人生にもたらしたものは何なのか。今は考えたく
ないし、考えないでおこう。しかし彼自身が演じるヒースクリフを見てみたかった
と思ってしまうことだけは、許して欲しい。

「魂なしには生きられない」   ・・・合掌。

ヒース・ヒースクリフ

『嵐が丘』監督:ピーター・コズミンスキー/1992・UK、USA/
           主演:ジュリエット・ビノシュ、レイフ・ファインズ
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テーマ : 気になる映画
ジャンル : 映画

2008-01-29 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 8 : トラックバック : 2
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嵐が丘
嵐が丘の家 彷徨う愛の亡霊
2008-01-30 01:10 : 悠雅的生活
嵐が丘・・・1992版
嵐が丘 (イギリス  1992年) 監督 ピーター・コズミンスキー  製作: メリー・セルウェイ 原作: エミリー・ブロンテ  脚本...
2008-02-08 10:44 : ちょっとお話
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非公開コメント

この☆ヒースのフォトグラフ~~!美しすぎます・・・(滂沱)
2008-01-29 09:47 : フラン URL : 編集
フランさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
なんか、ちょっと、ジェームズ・ディーンに似てませんか?
本当に、美しいです・・・(号泣)
2008-01-29 15:37 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんにちは。はじめまして。
「ブロークバック・マウンテン」に心惹かれて以来、時々こちらに訪問しておりました。
私にとっても「ブロークバック・マウンテン」は特別な作品で、映画は無論のこと、原作にも深く心を揺さぶられ、
2006年3月以来、映画や原作を幾度観直し、読み直ししたかわかりません。
そんなとき、たまたまこちらを通りかかり、真紅さんのこの作品対する深い思いを知りました。
自分と同じようにこの作品から限りなく触発されている方がいるのだと嬉しく思い、
また、それを発信するという、私が持ち合わせていない真紅さんの積極性におおいに刺激をうけてもおりました。

今回のヒースの死は本当に、本当に、辛いです。
「ブロークバック・マウンテン」以降、ヒースは私にとって注目度№1の俳優でした。
私は映像より文章の方が好きなこともあり、さほど熱心なシネマファンではありませんが、
ヒースの出演作を観ることは、私にとって生活の大いなる「張り」であり、喜びでした。
今回の悲報によって、これほどまでにショックを受け、深い喪失感に襲われるとは、私自身も想像しなかったことです。
お店などでヒースのDVDを見つけると、愛おしくて、寂しくて、ヒースの顔を思わず指でなでずにはいられません。
いまだに一日に何度もヒースのことを考え、その都度、映画でのヒースの印象的な表情が蘇ってきてしまいます。
この喪失感からいつ立ち直れるかわかりませんが、
それでも今日、真紅さんを始め、真紅さんの元を訪れる方たち皆が、いかにヒースを愛していたかを知り、心が慰められるような気がしました。

「嵐が丘」、小説しか読んでいませんが、人間同士の魂の結びつきはこれほどまでに痛切なものなのかを考えさせられた作品でした。
CNNで、ヒースのお父様のコメントに、彼を本当に理解した人はいなかったのでは・・・といった類のものがありましたが、
ヒースはヒースクリフ同様、魂の結びつきを求めていたのかも・・・などと想像します。
映画でヒースが好む役どころ、演技、そしてゴシップニュースも含め、
私の中でのヒースは、逞しい身体の内にナイーブで傷つきやすい魂をもっている青年、
傷つくとわかっていながら人との愛情や信頼関係に思いをかけずにいられない人という印象でした。
ヒースのお父様のコメントを聞いたときには悲しかったのですが、
あなたはこんなにも世界中の人に愛されていたんだよ、と、今、天国にいるヒースに伝えたいです。

ヒースの美しい写真をありがとうございます。
彼はこんなにも美しかったんですね。

真紅さん、どうぞお元気で。
長々と書いてしまって申し訳ありませんでした。
2008-01-29 15:48 : まじえる URL : 編集
まじえるさま、こんにちは。初めまして。コメントありがとうございます。
BBMがお好きなのですね!時々覗いていて下さっていたのですか、ありがとうございます。
丁度、ブログを始めてはみたものの、全くやる気が起きなかった頃にBBMと出逢いました。
その後は、もう、止めどなく・・・。今読み返すと赤面しそうな記事もあるのですが、それほど心揺さぶられたということなのだと思っています。

私はジャック(ジェイク)派だったのですが、ヒースももちろん、大好きでした。
今回のことは、もう誰も夢にも思わなかった、というか、あまりにも突然過ぎましたね。
彼の死を受け入れられず、現実とは思えず、涙も出ない、とおっしゃる方もおられます。

この喪失感を・・・。ずっと抱えて生きて行こうと思っています。

私も、ここに来て下さる方やコメントを下さる方々に、本当に慰められたと思い、感謝しています。
今回、まじえるさまにもコメントをいただき、本当にうれしく思います。

『嵐が丘』気になりつつも未読の小説です。映画の中のヒースクリフという人は、激情に生きた人に見えました。
「魂の結びつき」本当に、その通りですね。ヒースクリフはただそれだけを求めていたのだと思います。
ヒースのお父様は、そんなことを語っておられたのですか・・・。
本当の彼は、家族や彼自身にしかわからないのかもしれません。
でも、映像や写真でみる彼を私たちが理解していなくても、私たちが彼を大好きだったことは間違いないですよね。
ヒースに、それだけは知っていて欲しいと思います。彼が知っていてくれたと信じたいです。

本当に、美しい人でしたね。魅力溢れる人でした。
お気遣い、ありがとうございます。まじえるさまもお元気で。
またいつでもいらして下さいね。お待ちしています。
『嵐が丘』よろしければ映画もご覧になってみて下さい。
ではでは・・・。
2008-01-29 16:28 : 真紅 URL : 編集
こんばんは。
この作品を最初に観た当時は、Gerryまっしぐらの時だったので、
荒んだ目の粗野な男を是非Gerryに演じてほしいと思ったのですけど、
『山』でヒースを観て以来、「いや、ヒースクリフはヒースだ…」と思うようになりました。
事あるごとに、ヒースにヒースクリフを演じてほしいと言って来たけれど、
こういう形で叶わぬ夢になるとは思いもしませんでした。

日々、嘘のようにバタバタとする毎日をいいことに、
心に鍵をかけ、向き合わないようにしている気がします。
自分ちではわざと記事にしないのに、他所様でお喋りしてしまってごめんなさい。
2008-01-30 01:18 : 悠雅 URL : 編集
悠雅さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
なるほど・・・。確かに、ヒースクリフはジェリーさんでも激・ハマリ!のような気がします。
しかし、そうなると彼を受け止めるキャシー役が、かなり難しいですね。。
ヒースのご両親がどんな願いを込めて彼にヒースクリフという名を授けたのかわからないですが、ヒースの頭の中にも、もしかしたらヒースクリフを演じる希望があったかもしれませんね。
本当に、本当に、残念です・・・。

私はどうしても表に出てしまうようで、「お母さん、どうして毎日泣いてるん?」と言われています・・・。
いけません・・・。
悠雅さまは大切な大切な時期ですから、どうか心も身体もお大事に。
ではでは、後ほどお伺いします。
2008-01-30 14:13 : 真紅 URL : 編集
お邪魔します~
コメント返しが遅くなってしまい
ごめんなさい。
この時期にこの作品をご覧になると
作品の内容以上に
色々な思いを感じてしまうでしょうね。
何度か映画化されていますよね。
これからも色々な俳優さんが演じるかも
しれませんね。そう思うと残念ですね。
・・・ラストコーションで盛り上がっているのに
・・前の記事のコメントでごめなさいね。
私も早く評判映画見に行きたいです~~♪

2008-02-08 10:42 : みみこ URL : 編集
みみこさま、こんにちは~。コメント&TBをありがとうございます。
お忙しい中、返信ありがとうございます。今回は本当に、お疲れ様でした!
さて。この映画はずっと観たかったのですが、今回やっと思い切って鑑賞しました。
予想以上に濃い内容で・・・。熱い、熱い愛の物語でしたね。
またリメイクされる、という話もあるようですね。
ヒースに演じて貰いたかった・・・(涙)。
みみこさまにも是非『ラスト、~』ご覧になっていただきたいです。
40年代の上海租界ですよ♪
ではでは、またお伺いします~。
2008-02-08 19:36 : 真紅 URL : 編集
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