記憶が紡ぐ物語~『クリクリのいた夏』
クリクリのいた夏


 LES ENFANTS DU MARAIS


 フランスの片田舎、ある沼地の畔。復員兵のガリス(ジャック・ガンブラン)はここ
へ辿り着いて12年。隣に住む厄介者、でも憎めないリトン(ジャック・ヴィルレ)一家
を助けながら、豊かな沼地の自然の中で自給自足の生活を送っていた。五月の唄、
雨上がりのエスカルゴ狩り、鈴蘭のブーケ。自然と人間の共生、富と貧しさ、自由
と友愛とプライド。
人間が生きる上で、本当に大切なものとは何か。シンプルでい
て大切な真理を美しい映像に託して示唆してくれる、過不足のない秀作
なのにこの映画は邦題でかなり損をしていると思う。オノマトペのような愛称「クリクリ」
は「ファンファン」や「ミュウミュウ」「キョンキョン」と同じくかわいいけれど、あっさり
「マリの子どもたち」でいいのではないだろうか。残念。

 この映画の一番の魅力は、なんと言ってもジャック・ガンブラン演じるガリスの
キャラクター
だろう。戦争の影と心に受けた傷を感じさせながらも、翳りや憂いの
ない表情。幼いクリクリを抱き上げ、頓珍漢なリトンを常に助け、さり気なく導く
やさしさ。資産家で、音楽と本と自由を愛するアメデ(アンドレ・デュソリエ)や、
沼地に住んでいた昔を懐かしむ老人ペペらと友情を育み、横柄なボクシングチャン
ピオン・ジョー(エリック・カントナ!)
に対しても決して臆することはない。人間
としての格や、質のよさを感じさせるその立ち振る舞い。彼は一体何者で、何処か
ら来たのだろう。
最初はそんなことが気になるけれど、それも次第にどうでもよく
なってくる。ガリスがそこにいてくれるだけでいい、ずっと側にいたい・・・。
彼と知り合った誰もが、そう思ったことだろう。

クリクリのいた夏2

 この映画を観ながら、私自身の「思い出の夏」について、思いを馳せずにはいられな
かった。私や姉や従兄弟たちがまだ幼かった頃。夏休みを待ちかね、私たちは海辺
の祖父母の家
で過ごした。そこには祖父母と、物静かな叔父(母の弟)がいた。

 叔父は漁をしたり、海苔の養殖を手伝ったりして生活していた。小器用な人で、
近所の家の改築など、大工仕事もしていたと思う。午後になって時間ができると、
私たちを小舟に乗せ、釣りに連れて行ってくれた。ガリスがクリクリにしてあげた
ように、庭にブランコを作ってもくれた(古タイヤではなかったけれど)。どこか訳あり
で、でも包容力のあるまなざし
や、魂の澄んでいる感じがガリスに驚くほどそっくり
で・・・。映画を観ながら、心はあの遠い夏の日々に飛んでいた。

 ナチスドイツの台頭を知らせるラジオ放送から、時代は第二次大戦勃発前である
ことがわかる。世界大戦の合間の、束の間の平穏な日々。ガリスは今、どうしてい
るのだろう?
 懐かしさに膨らんだ私の心は、エンドロールと共に涙ではじけた。

クリクリのいた夏3

『クリクリのいた夏』監督:ジャン・ベッケル/1999・仏/
           主演:ジャック・ガンブラン、ジャック・ヴィルレ
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

[2008/01/10 19:23] | DVD/WOWOW | トラックバック(4) | コメント(10) |
<<行動力と好奇心~『わたしのマトカ』 | ホーム | ニックが降板、代役はケイト!~『朗読者』続報>>
コメント
真紅さん、「クリクリのいた夏」本当にフランス映画らしいフランス映画。大好きです。
ジャック・ガンブランス的でしょ。「マドマワゼル」とは又違っ味で。
クリクリと少年のエピソードもなんて素敵。
そして老マダム。なんて素敵な方。
本当に大好きな一作でDVDは勿論ゲットしてます。TBさせていただきましたね。
もう一つ「フランスの思い出」これは記事にしてませんけど、超オススメ。
[2008/01/11 16:09] URL | シュエット #- [ 編集 ]
シュエットさま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
この映画、記事を書かれていたのですね!
私も大好きな作品でした。
ガンブランがね、本当にいい男でね~。。
老マダムも文中には書けませんでしたが、ああいう老い方は憧れますね。
かわいらしさが残っていて、無くした物を数えないという感じで・・・。
『フランスの思い出』ですか、憶えておきますね!
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2008/01/11 19:15] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま、こんばんは♪
嬉しいです。この映画のお話ができるなんて!!
先日はコメントをいただきありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

この映画、私もちろんDVD購入してしまったのですけど・・・(ガリス、マンオブザイヤーですし^^;)
とにかく、なんて寛容な物語かと思って感動しました。
ガリスが去っていくのも好きです。
私、どうもどこからともなくやってきてどこへともなく去っていく(どこかで聞いたよーなフレーズ)男が好きみたいです??
TB、飛びましたでしょうか?(わけのわからないコメントになってしまってすみません)

[2008/01/12 00:01] URL | 武田 #4ARdecsc [ 編集 ]
武田さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
TB、コチラから返信したら飛びました!
旧年中は大変お世話になりました。この作品はじめ、いろんな映画を教えていただき感謝しております。

「ガリスはニースまで歩いてマリーを奪い・・」とクリクリが想像していましたね。
とにかく何処でどう生きていても、ガリスには幸せでいて欲しい!です。
う~ん、それは「シェーン」のような男がいいってことか・・・(笑)。
今年も、いろいろとお話できるとうれしいです。
ではでは、またお伺いしますね~。
[2008/01/12 06:44] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんばんは。
いつもTBとコメントありがとうございます。
年末にご覧になっていたのに、ちょうどバタバタしていた頃で
お邪魔するのが今頃になってすみません。

素敵な思い出をお持ちなのですねぇ。
だったら、余計にこの作品をご自分の物語のように感じられて、
これからもずっと大切に心に残っていくことでしょうね。

何者かわからないけれど、知性と教養と品が感じられるガリス、
本当に、彼はどうしているのでしょうね。。。


[2008/01/15 22:14] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
年末に観たのですが、記事のアップは年明けしばらくしてからでした。

子どもの頃はそれが当たり前だったのですが、今考えるとなんと贅沢な夏だったのだろう、と思います。
自然と共生するって人間の基本のはずなのに、今は一番難しいことになっていますものね。
これはずっと心に残る映画だと思います。
ガリスは本当に素敵な人でした。彼の幸せを祈ります。。
ではでは、またお伺いします。
[2008/01/16 09:26] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん~!!これ、見たと思っていたけど、初見だった!!私が見たと思っていたのは、似たようなタイトルの別の映画だったみたい(爆)

で、、、すんごい良かった・・・(T_T) 庭師~も良かったけれど、こっちも!!
みなさん上で一杯お話に出てるけど、ガリス~~!!惚れちゃいました♪ 素敵!素敵!

まだ記事書いてないんだけど、最初にここに飛んで来たんで、今ちょっと興奮状態なんだけど。
4つ☆半にする予定なんだけど、その半分☆が欠けちゃったのは、ジャック・ヴィルレ演じるオッチャンが私の許容範囲を超えて、ずうずうしかったから・・・。憎めないと許せる程度じゃなかったんだよな~。

で、個人的な事でごめんね。真紅さんの叔父様、今はどうしていらっしゃるのかな・・・?
いいなぁ~♪素敵な思い出があるのね~☆
[2009/07/06 13:33] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさん、こんにちは~。コメントありがとう!!
まだ記事は書かれてないのかな。。TB飛ばしてね~♪
そうよね、~の夏、っていうタイトルの映画多そうですよね。
この映画は邦題で損してると思うなぁ~。

確かに、リトンは図々しい、というか・・・。
私も殴ってやりたいと何回か思ったかも(笑)。
その分ガリスが素敵に見えるよね☆

祖父も祖母も亡くなり、叔父は祖父そっくりになって、今も海辺の家で暮らしていますよ。
たくさんの猫と一緒にね。ああ~、今年の夏は行けないかなぁ。。
お墓参りもしたいんだけどね。
では、また伺いますね~。
[2009/07/07 08:27] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま、お久しぶりです。
「クリクリのいた夏」、大好きな映画です。
ガンブラン@ガリス、素敵でしたね。
自分の記事を読み返しても、やはり子供時代の幸せな記憶をつづっています。
[2009/07/10 20:37] URL | びあんこ #w4Ib0zSU [ 編集 ]
びあんこさん、こんにちは~~~! わーい、お久しぶりです~。。
すっかりご無沙汰です。来ていただいてとってもうれしいです♪
この映画お好きなんですね、うれしいなぁ~。
私も自分の記憶とリンクした、忘れ難い作品です。
後ほど伺いますね♪ コメントありがとうございました。
[2009/07/11 16:21] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://thinkingdays.blog42.fc2.com/tb.php/374-3dd149d8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
「クリクリのいた夏」と「ピエロの赤い鼻」
ここんとこ、ずっとフランス映画づいてる私です。 ジャン・ベッケル監督作品2本。人生の妙味溢れる作品。こんなテイストはやはりフランス映画ならではだなってつくづく思う。ジャン・ベッケル監督の作品はこの2本しか観ていない。 ジャン・ベッケル監督の父親は、「穴」...
[2008/01/11 16:04] 寄り道カフェ
クリクリのいた夏
『LES ENFANTS DU MARAIS』 1999年フランス フランスの自然溢れる片田舎。 とある沼地の周辺に住むリトン(ジャック・ヴィユレ)一家と、彼らの隣家に偶然居つくことになって12年が経つ復員兵のガリス(ジャック・ガンブラン)。 リトンの末娘クリクリが見た、美
[2008/01/11 23:54] 終日暖気
クリクリのいた夏
沼のほとりの自由人たち。
[2008/01/15 22:05] 悠雅的生活
「クリクリのいた夏」ガリス~~!
凄く良かった!!5つ★でも良かったんだけれど、リトン(ジャック・ヴィルレ)が、ぐうたらで図々しいけど憎めないと私が思える許容範囲を...
[2009/07/08 09:46] ポコアポコヤ 映画倉庫
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

Recent Entries

Categories

What's New?

真紅

Author:真紅
Every cloud has a silver lining.

Recent Comments

Recent TrackBacks

Archives

My Favorite

Search this site

RSS

Thank You!