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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

メビウスの輪~『絶対の愛』

絶対の愛



 TIME


 恋人同士のセヒ(パク・チヨン)ジウ(ハ・ジョンウ)は、付き合って2年。
セヒはジウが自分に飽き、彼の心が他の女に奪われるという恐怖心に慄き、嫉妬
苛まれていた。永遠の愛を求める彼女は、ジウの心を繋ぎ止めるため全身整形を施
し、スェヒ(ソン・ヒョナ)と名乗る別人となってジウの前に現れる・・・。

 キム・ギドク13番目の作品は、表向きは「整形」がテーマ。しかし本当の主題は、
移ろい行く「時間」に対し、恋人たちは「永遠の愛」を成就できるのか、というところ
にある。寡黙な主人公のいる寓話的世界が今までのギドク作品の背景であったけれ
ど、本作は現代韓国の都市が舞台。主人公たちはあり得ないほど饒舌(カメラ目線で語
り出す!)
でときに爆発し、ギドク作品に慣れ親しんでいる人なら誰しも、最初のうち
は戸惑ってしまうだろう。しかし、次第にこの「純情・愛情・過剰に異常」愛のカタチ
と、彷徨う恋人たちに私は寄り添っていた。観終わった後、間違いなく確かな満足
感が得られる秀作だと思う。

絶対の愛2

 恋人が「他の女を見た」「他の女と話した」と言っては嫉妬して激高するセヒの気持
ちはなんとなくわからないでもない。「人はみんな同じだ」という印象的なセリフには、
結局人間は「見た目」を重視するのであり、整形する人もしない人も心の内は同じです
よ、といったニュアンスも込められているような気がした。いつも困ったような顔
をして、私にはさして魅力的には映らないジウがモテモテなのがちょっと不思議。
整形後、自信満々なスェヒの表情が、ジウを待つ6ヶ月の間にジワジワと狂気に誘
われていくのが凄い!捨てられると思った過去の自分に恋人は心を残し、嫉妬して
いるのは誰でもない自分自身にであるという、なんともねじれた皮肉! スェヒが
セヒ=過去の自分のお面をつけて現れるシーンには思わず息を呑んだ。冷静に見れ
常軌を逸した笑える状況なのだけれど、スェヒの心の叫びは痛すぎる。顔と名前
が変わってもジウを愛する心は変わらないのに、彼はそれに応えてくれない。。
一体どうすれば、過ぎ去ってゆく時間と愛を止められるのだろう?

 そして物語はメビウスの輪のように、彼女の元へと還ってゆく・・・。

絶対の愛3

 スェヒを演じたソン・ヒョナが、激し過ぎる怒りとパッションが空回りする哀し
い女
を演じて目を奪われる。ジウがパソコンで観ているのは主人公が一言も言葉を
発しないギドク作品うつせみであったり、スェヒに喫茶店で声をかける青年が
の青年で、ちょっと男前に成長していたりするのも見どころ。フェリーで渡る彫刻
の島のオブジェ
も興味深い。波間に置かれた手のひらと、空へと昇る階段・・・
その先は天国? そこに永遠はあるの?

『絶対の愛』監督・製作・脚本:キム・ギドク
    主演:ソン・ヒョナ、ハ・ジョンウ、パク・チヨン/2006・韓国、日本)
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2009-03-05 20:48 : ☆彡映画鑑賞日記☆彡
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真紅さま、こんばんは!
この作品、なんとも人を寄せつけない、ぶしつけな作品ですよね。
ギドクの映画はどれもこれも、一体何が出てくるのか、さっぱり分からないんですよね。
「出てくる人物が喋らない映画が好きだ」と誰かに言われたから、これだけ人が喋り捲ってるのかと勘ぐってしまった程です。(それだけヒネクレ者、逆を行くのが好きなのかなって。)
この作品に関して言えば、この女性の信じがたいまでの思い込みの強さ、激しい嫉妬心。こういう類のものが自分の中にもあるのだと、直視するのは正直辛いほどでした。

そうそう、ジウはPCで、『うつせみ』の1シーンを編集してたみたいですね、これが彼の仕事という設定で。あと、部屋には、『リアル・フィクション』のポスターが飾ってありました。
これを一緒に見たのはギドクファンで、帰りのエレベーターの中で、早速この話題をしたのを覚えています♪

PS.私もまだ手元に『ベンゴ』が手に入らないのです~。まだ読んでいないのですが、観た後でTBさせていただきますね~^^
2007-12-13 01:56 : とらねこ URL : 編集
とらねこさま、こんにちは!コメント&TBをありがとうございます。
リンクもさせていただきました、今後ともどうぞよろしくお願いします!
さて。私は初期の三作品『鰐』『リアル・フィクション』とそれからもうひとつ観てないのですよ~。
コンプリートされてるとらねこさまがうらやましい~~。。
ギドクって、30歳まで映画を観たことがなかった、って信じられないですよね。
でも、だからこそ何者にも囚われることなく、こんな独創的な作品を生み出し続けられるのかもですね。
「ぶしつけな作品」確かに!言い得て妙、です。

『ベンゴ』うんうん、観て下さいよ~。超マイナー作品かもしれないですが、フラメンコが最高です!
あんまりうまく感想が書けなかったのですが、いろいろ感じるところもありましたよ。
ではでは、記事楽しみにしておりますね~。
2007-12-13 09:53 : 真紅 URL : 編集
喫茶店で話しかける男性が、弓の青年だったなんて、全然気がつかなかったですよー。
真紅さま、すごい!! 人の顔覚えとか良いのですか? 私は、めっぽうそういうのが苦手で、困ります。(現実世界でも、人の顔と名前がなかなか覚えられないの!すごく特徴あると楽なんだけど・・・)

この映画も今までにない題材とアイディア満載の映画でしたね。好きって訳ではないけど、面白く見ました♪
2007-12-13 10:34 : latifa URL : 編集
ギドクワールド
真紅さま コメントありがとうございました。
真紅さまはギドクワールドのファンなのですね。私はそれほど沢山観ているわけじゃないですけど、「春夏秋冬~」と「悪い男」に魅力を感じました。
この物語はヒロインの発想や行動に今一つ感情移入しきれなかったのですが、ギドクさんの作品は、もともと感情移入など求めてないのかもしれませんね。
彼の作品からは何か・・・いつも問題提起を感じます。
真紅さまのTB、お手数ですが再度送っていただけませんか?お願いしますφ(.. )
2007-12-13 15:29 : なな URL : 編集
役者
TBありがとう。
ギドクの作品に出演する役者さんって、かなり決意が必要だと思うんですよね。
ギャラも高そうにないし。
でも、思わぬ面を、引き出されていますね。
2007-12-13 22:42 : kimion20002000 URL : 編集
latifaさま、こんにちは~。コメント&TBをありがとうございます。
いやいや、顔の覚えとかはそんなによくないと思うのですが、「この人って誰かに似てる~」っていうのはよく思いますね。
書き忘れたのですが、整形外科医役の俳優さんが、誰かに似ている、誰だっけ・・と思いながら観ていたのですが、民○党元代表の岡田さんでした。
もう、激似(笑)。
私も寡黙なギドク作品のほうが好きですが、この作品も独特でしたね。
本当に、目が離せない監督さんです。
ではでは、またお伺いします~。
2007-12-14 09:56 : 真紅 URL : 編集
ななさま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
ギドクの世界、すっかりはまってます。作品を観た後、いつも「すげぇ~」って思うんですよね。
でも私もコンプリートはしてないんですよ。デビュー作など観れてないんです。
確かに、在り得ない設定かもしれません、でもおっしゃる通り問題提起と言うか、何かがあるんですよね。
その何かに、いつも惹きつけられる。。。
TB、再送してみますね。ではでは、またお伺いします~。
2007-12-14 10:07 : 真紅 URL : 編集
kimion20002000さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
こちらからはTBのみで失礼いたしました。
確かに、ギドク作品では役者さんが「身ぐるみはがされる」感がありますよね。
でもきっと、演じて「役者冥利に尽きる」んだと思います。
ではでは、またお伺いします!
2007-12-14 10:23 : 真紅 URL : 編集
TB届きました。
お手数をおかけしました。
不調が直ったのかな?とにかく一安心。
ではまたよろしくです。
2007-12-14 12:19 : なな URL : 編集
ななさま、ご丁寧にありがとうございます。
こちらこそ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ではでは。
2007-12-14 19:49 : 真紅 URL : 編集
こんばんは、TB&コメントありがとうございました。
まったく前知識なしでこの作品を見ると、ラストの「整形返し」
でぶっ飛ぶことでしょうね。私はそうするつもりだったのに、
上映直前になってフライヤーの裏が目に入ったので、
サプライズ感がかなり減ってしまいました。
それでも、キム・ギドクらしい演出は随所に見られましたね。
手のオブジェは、『サマリア』で女の子二人が遊んでいるシーンと
オーバーラップしてしまいました。

次回作『息』は、『うつせみ』や『弓』のような、寡黙なタイプの作品
になるのでしょうか。キム・ギドクは予測不可能なところが多々
ありますので、『息』でもサプライズがあるでしょうね。
今年はアジア映画が今ひとつ盛り上がりに欠けたのですが、
来年は『ラスト、コーション』や、チェン・カイコーの北京五輪記念作品など、
アジア映画の盛り返しに期待したいですね。
2007-12-14 23:40 : 丞相 URL : 編集
丞相さま、こんにちは。コメントありがとうございます~。
確かに。確かに「ええ~、そう来るかぁ~」という感じでしたね。
フライヤーでそんなにネタバレしていいのか(怒)。
『サマリア』の手遊びシーン、忘れてしまっています。
ギドクって、そういった「遊び」っていうか、好きですよね。
顔写真の目の部分を切り取るところとか『受取人不明』だし。
「ギドク曼荼羅」じゃないけど、やっぱり作品を体系的に観て、何かが浮かび上がってくる監督さんなんでしょうね。

『息』は、またまた主演俳優さんは一言もセリフがないのだとか。
サプライズ、ありそうですよ~、ウフフフフ。
アジア映画、今年は『長江哀歌』の観逃しが悔しいです。
まぁ、観たい映画全てはとても網羅できないですが。。
『ラスト・コーション』に超期待しております!
ではでは、またお話しましょう~。
2007-12-15 11:20 : 真紅 URL : 編集
こちらにも。
韓国映画だと日本人の
俳優さんに似た方が多いですよね。
想像してみるのも楽しいわ・・
↑のコメン返して
岡田さんの名前が出ていたでしょ?
あ~~~似ているよ・・・・笑
観たばかりなので余計そう思いますわ。
真紅さんはチェック鋭いわ~~~
2008-03-04 12:51 : みみこ URL : 編集
みみこさま、こちらにもコメントとTBをありがとうございます。
そうなんですよね、私もすぐ「誰かに似てる~」と思うほうなんです。
それで映画に集中できないことすらあります(笑)
岡田さん、もう「激似」ですよね。本人?みたいな←ワケない!
なんかすごくアホなことばっかり考えてるみたいですが、なかなか見応えのある映画でしたね♪
もうすぐ『鰐』アップします!
ではでは、またお伺いしますね~。
2008-03-04 14:55 : 真紅 URL : 編集
う~ん、そうだね~。
嫉妬深いセヒだからこそ、
自分なのにスェヒやセヒに嫉妬してしまうというループ、
最後にぶつかったのが最初にぶつかった相手って
ループとなんか似ていますね。うん。
2009-03-05 20:50 : miyu URL : 編集
miyuさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
これは不思議な映画でしたね~。
キム・ギドクが作風を変えて驚かせてくれた一作でもあります。
miyuさんは、気に入られたかな~?
後ほどお伺いしますね、ではでは~。
2009-03-05 22:21 : 真紅 URL : 編集
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