魂の音楽~『ベンゴ』

VENGO
スペイン・アンダルシア地方。一人娘ペパを亡くしたカコ(アントニオ・カナーレス)
は悲しみに打ちひしがれ、甥のディエゴを心の支えに生きていた。カコの兄である
ディエゴの父マリオはカラバカ家の息子を殺してモロッコに逃亡、その身代わりに
ディエゴの命が狙われる。カコは最愛のディエゴを守ろうとする・・・。
流浪の民ロマ(ジプシー)の血を引くトニー・ガトリフが、民族の血と音楽、ファミ
リーの結束と復讐を描いた作品。全編フラメンコの音楽が鳴り響き、その熱く激し
い情熱、湧き立つような血潮に圧倒される。トニー・ガトリフ作品は初体験。主演
はフラメンコ舞踏界のカリスマ、アントニオ・カナーレス。しかし本作で彼のフラメ
ンコを観ることはできない。

もう10年以上前になるが、一度だけフラメンコギターのライヴを観たことがある。
メインは「炎のギタリスト」ことパコ・デ・ルシア。鳥肌が立つほど凄まじい演奏から
受けた衝撃と興奮が、何日も治まらなかったことを鮮明に憶えている。この作品も
もし劇場で観ていたなら、その激しく揺さぶるような魂の音楽に、身も心も浸され
ていたに違いない。
アンダルシア地方の埃っぽい空気、フラメンコギターの響き、艶めかしく官能的
に踊るダンサー、哀愁を帯びた歌声。黒い髪と瞳を持つ精悍でセクシーな男たち、
ナイフの鋭敏な光、流される血。一人娘を喪ったカコの悲しみは、どんなに盛大な
パーティを催そうとも癒されることはない。
「ペパ、お前の死は燃え尽きることのない炎だ」ディエゴを守る為に、カコは自らその
炎に焼かれようとした。憎悪と復讐の連鎖を止めるには? 最愛のディエゴを守る
には? 彼の決意を悟りながら、身を引くファミリーたちの切なさ。。
神聖であるはずの洗礼式でさえ、陽気な歌と踊りで盛り上げてしまうロマたち。
しかし彼らの歌声や笑い声、踊る姿、全てにどこか哀愁が漂っている。
私には故郷はない、あなたの魂に歌うだけ・・・。そんな哀歌が、耳にいつまでも
こだまする。

(『ベンゴ』監督・製作・脚本・音楽:トニー・ガトリフ/
主演:アントニオ・カナーレス/2000・スペイン、仏、独、日本)
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コメントの投稿
これは物語は任侠物みたいな感じなんですけど、そういうのはもうどうでもよくって、哀愁のフラメンコ音楽に心揺さぶられるばかりでした。
それまではフラメンコといえば、ダンスだと思っていたんですが、ベンゴ以後は、バイレよりカンテでしょ!って思うよになりました。
ギターの音色もすごく好きです。
冒頭に登場したギタリスト、トマティートの演奏はブルーノートで聴いたことがあるのです♪
それまではフラメンコといえば、ダンスだと思っていたんですが、ベンゴ以後は、バイレよりカンテでしょ!って思うよになりました。
ギターの音色もすごく好きです。
冒頭に登場したギタリスト、トマティートの演奏はブルーノートで聴いたことがあるのです♪
かえるさま、こちらにもコメント、感謝です♪
この映画では、ディエゴの存在が大きいですよね。
身体が不自由でもダンスと音楽が大好きな彼が、「生きる」ということを体現しているのがよかった~。
そういうところが感想に書けてないなぁ。
フラメンコってホント、心に響きますよね。
『ラブユー東京』が使われたところも「おお!」という感じでした。
すご~い、ブルー・ノートは憧れです~、いつか行ってみたいなぁ。。←なんか、願望がちっせ~、恥ずかし~(笑)
ではでは、またお伺いしますね~。
この映画では、ディエゴの存在が大きいですよね。
身体が不自由でもダンスと音楽が大好きな彼が、「生きる」ということを体現しているのがよかった~。
そういうところが感想に書けてないなぁ。
フラメンコってホント、心に響きますよね。
『ラブユー東京』が使われたところも「おお!」という感じでした。
すご~い、ブルー・ノートは憧れです~、いつか行ってみたいなぁ。。←なんか、願望がちっせ~、恥ずかし~(笑)
ではでは、またお伺いしますね~。