ラン、ドントウォーク~『走ることについて語るときに僕の語ること』
走ることについて

 専業作家としてのキャリアと同時に、マラソンランナーとしてのキャリアも積ん
できた村上春樹。彼が自らに正面から向き合い、「走ること」「書き続けること」につ
いて真摯に書き下ろした「メモワール(個人史)」。

『走れ、歩くな。』というタイトルで「走ること」についての本を出す、というのは、
かなり前から村上朝日堂で予告はされていた。だからファンとしては「遂に出たか!」
という感じ。タイトルは、レイモンド・カーヴァーの著作であり、村上による訳書
『愛について語るときに我々の語ること』のもじり。テス・ギャラガーにきちんと許諾
を得ているというところが、また村上春樹らしい。

 私のような運動嫌い、生来のナマケモノからすれば、自らの肉体をいじめ、敢え
て苦しい「走ること」を続ける感覚はよくわからない。よくわからないけれど、作家と
いう職業を続けていくために、村上氏が自らの肉体と「対話」しなければならなかった
のだ、ということはわかるような気がする。「腹が立ったら自分に当たれ、悔しかった
ら自分を磨け」
という彼の人生訓。群れず、逃げもせず、孤高な場所にいながら決して
孤独ではない
、村上春樹という作家のなりたち

 サロマ湖100キロウルトラマラソンを走ったときの、村上春樹の述懐が興味深い。
限界を超えた肉体の苦痛から「抜けた」ときの彼の境地は、私(たち)が彼の小説を
読んでいるときの独特の感覚に似ている気がした。頭がクリアになって、水の中を
潜っているような、異界に迷い込んだような静けさ
。こんな場所に連れ出してくれ
る日本人作家を、私は他に知らない。それは彼の才能の賜物でもあり、日々の努力
の成果
でもある。

 こうして同時代に村上春樹の作品が読めることに、改めて感謝したい。

『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹・著/文藝春秋・2007)
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[2007/11/17 11:33] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(2) |
<<傷を抱え、共に生きる~『こわれゆく世界の中で』 | ホーム | 今年の顔~The Sexiest Man Alive 2007>>
コメント
そう、私、カフカ以前はつながりがあったんです。
他の読者と同じように、一対一で村上さんと世界で向かい合っていたんですわ。
そういうことってとても希有で、奇跡みたいなことで・・・
そのことをとても幸せな経験だったと思うし、とても感謝してるんです。
で、おっしゃるように、カフカ以後、また復活するかも知れん、でも、復活せなんだらどうしよう、ってびびってるんです・・・彼の言葉が肉体に浸透しないっていうのは、言語を一つ失うみたいなもんで・・・これは小説じゃないから、読めそうですが・・・うん、カラ兄を読んだら読んでみます。
でも、こういうジャブの後に彼は大長編を書く為に細胞を組み替えて長編仕様のスタイルになるでしょう、ああ、もんもんとしてます。

カラ兄、一巻読み終わりました。
なんと、アホな私が、意地を張らないでも、読破出来そうな予感・・・!!
私は同じく朝日新聞に島田雅彦さんがおっしゃっていた、「祇園精舎の~」の平家物語が人気を博したのは琵琶法師のビートに乗った語りのお陰なんだ、この作品の長ったらしいおしゃべりも亀山さんのお陰でリズムが快感になってくる、というような(細かい言葉は失念)ことをおっしゃっていたことを励みにしています。
かるーい、マゾなんで。
あと、亀山さんが、ドフトエフスキーは全ての作品で「傲慢さをさけよ」とメッセージを伝えている、とおっしゃっていたことに迫りたいっていうことが今の私の原動力ですわ。
傲慢さを避けよ、傲慢さを避けよ・・・うーん、私に分かるでしょうか。
傲慢って、避けるって・・・今んとこさっぱりです。
[2007/11/17 18:27] URL | 牧場主 #- [ 編集 ]
牧場主さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、今村上さんは大長編への準備段階でしょうね。
楽しみだな~、と言うか、滅茶苦茶待たされてるので早く読みたいですよー。

カラ兄、おおー、進んでいらっしゃるではないですか!
私は、今日図書館で4冊借りてしまいましたので、また遠ざかってしまいそうです。
でも、いつかは読みたいです、いつかは・・・。
島田雅彦さんの文章は、読んだ記憶があります。
見開きで大特集が組まれたんですよね。累計52万部ということですが、凄いなぁ。。
一応私も5/52万なんで、頑張ります(笑)。
ではでは、またお話しましょう~。
[2007/11/17 21:53] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹
『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹 あっ! これはいい本だ、間違いなく自分にとっては。 自分は所謂「ハルキスト」ではない。 けど、この本を読んで、グッと距離が縮まったと思う。 そして「走ること」のモチベーションがグッと上がった...
[2007/11/29 13:50] chaos(カオス)
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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