映画好きの端くれとして~『オリヲン座からの招待状』
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 昭和25年の開館以来、57年に渡って映画をかけ続けた京都の小さな映画館、オリ
ヲン座
。館主であり、映写技師でもあった松蔵(宇崎竜童)の死後、その妻トヨ(宮沢
りえ)
と見習いの留吉(加瀬亮)が極貧の中で守り続けた灯火も消えるときを迎えた。
閉館と最終興行の知らせが、かつてオリヲン座で遊んだ祐次(田口トモロヲ)良枝
(樋口可南子)
夫婦の元へも届く。

 浅田次郎氏の直木賞受賞作『鉄道員』に収録されている短編の映画化宮沢りえと
加瀬亮の共演作、映画館が舞台
ということで、是非劇場で観たいと思っていた。
恩人の妻であった美しい未亡人を一途に愛し抜いた青年の純愛を描いた、静かな
良作であったと思う。

 「女優」としての宮沢りえの素晴らしさを、改めて感じた。少女性を残した儚げな
雰囲気
と、変わらぬ美しさ。内に秘めた強さも瞳に宿した、いい女優さんだとつ
くづく思う。出演作が目白押しの加瀬亮くんも、こんなに男前だったかと再認識。
映画への思い、トヨへの揺ぎ無い愛を、細身の身体全体で訴えかけてくる。二人
の愛も、映画という灯りも、のようにぼんやりと弱く--、しかし確かにそこに
在った
のだ。

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 頑固一徹な映写技師と見習い、映写室へ出入りする子どもたちは、ニュー・シネマ
・パラダイス
を連想させる作り。満員だったオリヲン座が、テレビの普及とともに
斜陽産業となり、留吉とトヨが売店のアンパンで食事を済ませる場面がいい。入場料
「大人70円、子ども35円」そんな時代があったのですね・・・。

 昭和30年代の町の様子は丹念に再現され、京都の川べりの緑に風が吹き渡る情景
も美しい。真摯に作られた映画であることは十分伝わってくるのだけれど、幼い日
祐次(小清水一揮)が登場したとき、目を疑ってしまった。まさか、いやこの鼻声は
間違いない、鈴木オートの一平くんじゃないか・・・。

 田口トモロヲにどことなく似ていて、昭和30年代顔の子役って、他にいなかった
のだろうか? まさか同一公開日大ヒット映画の続編(しかも同時代な作品)に出演
している子役を起用するとは・・・。ここで、なんだか興醒めしてしまった。残念!
モノクロの8ミリ映像まで同じなのには驚いたけれど、これは仕方ないか。

 閉館の挨拶をする留吉(原田芳雄)「映画人の端くれとして・・」という言葉に胸
が詰まる。今はシネコン全盛、DVDデジタルの時代で、オリヲン座のようにアナログ
な映画館は失われつつある。私も「映画好きの端くれ」として、この映画を劇場で観た
ことに少し、価値があるように思えた。

『オリヲン座からの招待状』監督:三枝健起/原作:浅田次郎/
                 主演:宮沢りえ、加瀬亮/2007・日本)
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テーマ:邦画 - ジャンル:映画

[2007/11/14 16:03] | 映画 | トラックバック(12) | コメント(18) |
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コメント
真紅さん、こんにちは^^
TB、ありがとうございましたm(__)m
抑揚はないものの心温まる映画でした。僕的には芳雄ちゃんとりえちゃんが出ているので『父と暮らせば』が脳裏をチラチラ(笑) 樋口可南子さんをもう少し巧く使って欲しかったなぁ^^
[2007/11/14 17:32] URL | cyaz #ID9gmbWk [ 編集 ]
こんばんは。
大昔、大きな50円玉をもらって行った、
古くて小さくて、最後には「ピンク」がかかった地元の映画館、
本当に映画が観たくなった頃には、とっくに閉じてしまってました。

りえちゃん、加瀬くん、どちらも京都弁も上手く、儚げな佇まいが綺麗で、
僅かな言葉で表現された原作の世界を、見事に映像で表現してくれて、
ただそれだけでも本当に嬉しいです。
わたしにとって、静かに愛し続ける1本になりそうです。
[2007/11/14 18:56] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
cyazさま、こんにちは。こちらこそいつもTBをありがとうございます。コメントも感謝です。
確かに、抑揚はなかったですね~。淡々と流れていました。
私も『父と暮らせば』の二人だとは思ったのですが、録画したまままだ観てない作品なんです。
そうそう、いっそ田口さん&樋口さんお二人は不要だったのではないかと・・・。
そしたら原作と全く違う話になってしまいますが(汗)、もっと大胆に脚色してしまってもよかったかもですね。
ではでは、今後ともよろしくお願いいたします!
[2007/11/15 08:56] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは~。コメント&TBをありがとうございます。
自分の思い出とクロスする映画って、忘れ難い印象を残しますよね。
悠雅さまは原作のファンでもいらっしゃるので、尚更思い出深い作品になったようですね。

役者さんたちはさすが、方言に違和感はなかったですね。
特にりえちゃんは京都が似合うな~って思いました!
加瀬くんは、年齢不詳な不思議な空気感を持った俳優さんだな~と思います。
私が大・好きなミシェル・ゴンドリーの新作に主演されているそうで、それも楽しみです♪
ではでは、またお伺いします~。
[2007/11/15 09:01] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん

映画館が出てくるだけでもうじわってなるので、
雰囲気を楽しんでいた映画でした。
某映画のイメージだけは避けて作ったほうが
良かったのになぁと思いましたけど。
そうですか一平くん、、最後まで気付かなかった(笑)
[2007/11/16 16:32] URL | kazupon #mQop/nM. [ 編集 ]
kazuponさま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
セットや美術も雰囲気ありましたね。
だからこそALWAYSを彷彿させるものは避けて欲しかったです。
一平くんのこと、気付いてない方が多いのでしょうか?
私はもう、「コレって映倫でNGやろ~」って、ほとんど怒ってしまったのですが(笑)
りえちゃんがキレイでしたです。
ではでは、またお伺いします~。
[2007/11/16 19:15] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
浮き沈みの大きい人生を淡々と描いた映画でしたが・・・・・
どうでもいいこたとだけど
①松蔵はんが、昭和25年になんで映画館もてたの?
②留吉の住んでた大津にも当時映画館が5館あったのになぜ京都まで出てきたの?
③留吉が京都まで出てきたのなら祇園か京極が近いのになぜわざわざ西陣の映画館まで足をのばしたの?

しかし、私の重大な疑問は
●なぜ、トヨさんは、松蔵はんにうそをついてまで、3人で写真屋さんにとってもらった2枚の内の1枚を写ってなかったと言って引き出しに隠したの?
留吉の帽子が気に入らなかったから?
[2007/11/17 19:42] URL | 記憶喪失 #nLnvUwLc [ 編集 ]
こんばんは♪
「映画好きの端くれ」としてはこの手の映画にはやはり弱いです。
しかも、シネコン全盛以前の映画館も知っている身ですからねぇ。
売れ残ったアンパンを食べてるシーンも良かったわ~。
全体的に加瀬君とりえちゃんが映画館を切り盛りしているパートが好きでした。
[2007/11/17 21:06] URL | ミチ #0eCMEFRs [ 編集 ]
記憶喪失さま、初めましてこんにちは。コメントありがとうございます。
①③はちょっと私もわからないのですが、②はこう解釈します。

留吉は、大津にいた頃は「乞食同然」と言っていましたから、映画を観たことはなかったんだと思います。
オリヲン座で初めて映画と言うものに接し、魅せられ、自分でもわけがわからないままに松蔵に頭を下げていた、という感じではないでしょうか?

最後の重大な疑問について、あそこはちょっとわかりにくかったかもしれませんね。
これも個人的な解釈ですが、松蔵の帽子を留吉がかぶっていた、というのも理由としてあるかもしれません。
しかし、2枚の写真、隠した方はトヨが笑ってなかったですよね。
自分が綺麗に写ったほうを夫に見せたい、という女心もあったのではないでしょうか?
これはあくまで私が感じたことですので、間違っていたらごめんなさい。
ではでは、また覗いてみて下さい。
[2007/11/17 22:00] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
ミチさま、こちらにもコメントとTBをありがとうございます。
映画館が舞台の映画、っていいですよね。
『ニューシネマ~』もそうですが、『カイロの紫のバラ』も忘れられない映画です。
私も、りえちゃんと加瀬くんがもっと見たかったです~、いっそ二人の映画にすればよかったのに!
ではでは、またです~。
[2007/11/18 13:44] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2007/11/18 18:01] | # [ 編集 ]
管理人宛にコメント下さった方へ、ありがとうございます。
おっしゃる通りだと思います。とても繊細な場面ですよね。。
原作は、私も随分前に一度読んだきりなので定かではないのですが、かなり脚色されているようですよ。
よろしければまた遊びにいらして下さいね。ではでは~。
[2007/11/18 21:21] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
コレ昨日みてきました。
ニューシネマパラダイスもですが、無法松の一生の既視感が蘇りますた。
田口トモロヲと小清水一揮君もですが宮沢りえの鼻ホクロが中原ひとみになったら消えてるのも気になりましたが(笑)
そうですね。「映画好きの端くれとして」ってなんか見てる僕らも連帯感が湧きましたよね。
[2007/11/21 10:34] URL | motti #- [ 編集 ]
mottiさま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
『無法松の一生』も、未亡人に思いを寄せるお話なのですね。。
私は観ていないのでそこは分からなかったのですが、もし観ていたらもっと感慨深かったでしょうか。
一つの役柄を、複数の俳優さんが演じるって、なかなか難しいものがありますね。
映画館の人も、映画人の端くれ。。って誇りを持っているんですよね。
私も、映画に関わる全ての人へ、感謝を忘れない映画好きでいたいです。
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2007/11/21 13:32] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さんこんにちは、ケントです。TBお邪魔します。
予告編を観たとき宇崎竜童は、宮沢りえの父親かと思いましたが、妻だったんですね。
子供の頃の映画館を思い出して、ホロリとさせられました。
[2007/12/01 16:21] URL | ケント #neBEUUqk [ 編集 ]
ケントさま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
私も、宇崎さんがりえちゃんの旦那さんって、ちょっと年齢差がな・・と思いました。
あの頃の映画館の賑わい、衰退をご存知でしたら、感無量だったのではないでしょうか。
後ほどお伺いしますね、ではでは!
[2007/12/01 17:05] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
端くれとして、あたしもコレは映画館で見れば良かったなぁ~と思いました。
日本版「ニューシネマ・パラダイス」
映画好きとしては、映画への愛が感じられて、
なかなか良かったですよね~。
[2009/04/06 20:34] URL | miyu #- [ 編集 ]
miyuさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
この映画、りえちゃんと加瀬くんの雰囲気がとってもよかったですよね~。
昭和の香り、というか・・・。
映画や、映画館が題材の作品は大好きです。
後ほどお伺いしますね~。
[2009/04/07 16:56] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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