英国の中のもう一つの国~『アナザー・カントリー』
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 ANOTHER COUNTRY


 1983年、モスクワに一人の女性ジャーナリストがやってくる。彼女がインタ
ビューするのは、年老いた英国紳士特権階級に在りながら、スパイとしてソビ
エトに亡命した彼の、昔語りが始まる・・・。
 1930年代、英国上流階級の子弟が通う全寮制のパブリック・スクール。最上
級生たちの関心の的は、寮長・幹事など、学校を自主運営する自治会の人事だった。
『資本論』を読み、共産主義に傾倒するジャド(コリン・ファース)と、成績優秀な
がら同性愛者としての一面も持つガイ(ルパート・エヴェレット)は、傍から見れば
奇妙な友情で結ばれていた。

 選ばれた者たちだけが「入国」できるパブリック・スクールという場所の内情を
描いた、コリン・ファースの映画デビュー作であるこの作品。ずっと探し続けて、
もうネットレンタルに頼るしかない、と思っていた。ところが近場のレンタル店
で「旧作入荷」の棚にDVDを発見!思わず心拍数が上がってしまった(笑)。しかも
レンタル中だったということは、密かに探していた人が多いのかも・・・。コリン
もルパートも若く見目麗しく、キラキラと輝いている。しかしコリンの低い声、
気難しげな横顔
は、驚くほど変わっていない。

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 英国の美しく短い夏が、同じく美しい青年たちとともに切り取られた絵画のよ
うな映像。柔らかい光、白いユニフォーム、月夜に浮かぶボート。都会の喧騒と
別世界の、選ばれたものしかその中に入れないもう一つの国。見た目には楽園
のようなその国でも、内部では様々な権力闘争や政治的駆け引きが行われている。
この国で上に立つものは、英国での出世コースに乗ることができるのだ。

 帝国主義を批判し、革命を信じるジャドにも、ブルジョワ的野心を隠そうとも
しないガイにも、それぞれに若さ故の青臭さを感じる。特権階級にありながら自
らを異端だと自覚し、メインストリームから距離を置くジャド、フランス大使の
夢に賭けているガイ。その夢が砕けたとき、涙ながらに自身のセクシャリティを
宣言し心情を吐露
するガイと、精神的に彼を受け止めるジャドが切ない。

 戯曲の映画化であるこの作品、舞台のモデルは英王室の子弟も通う名門中の
名門、イートン校であるという(ロケは許可しなかったらしい)。しかも主人公
ガイは実在した人物で、ケンブリッジ大学在学中から諜報活動に従事、50年代
にソビエトへ亡命したスパイだったとDVD解説で知り、驚愕してしまった。

 最後に「クリケットがしたい」とつぶやくガイは、青春の蹉跌から国を捨てて
も、上流階級の人間として生涯を全うするのだろう。内容もさることながら、
「ああ、私は今あの『アナザー・カントリー』を観ているんだ・・」という感動
に浸った90分間だった。

『アナザー・カントリー』監督:マレク・カニエフスカ/
    主演:ルパート・エヴェレット、コリン・ファース/1984・UK)
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テーマ:ヨーロッパ映画 - ジャンル:映画

[2007/11/05 11:35] | DVD/WOWOW | トラックバック(5) | コメント(11) |
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コメント
これはね、DVD持ってる!私は「モーリス」よりも断然「アナザー・カントリー」!コリン・ファースの共産主義青年役も良かった。美しきイギリスの貴公子たちがブレイクしたんだ!ルパートも創だけど、いイギリスの俳優って上流階級者が多くって、身のこなしも様になっている。
ルパートの着崩したトラディッショナル・ファッションも涎物。当時は同性愛が発覚すれは家名剥奪、財産没収の時代だったから、そこに目をつけたソ連が上流階級の同性愛者をそうやってスパイ活動させたんですよね。「モーリス」でも同性愛が発覚して刑務所に送られる貴族のシーンもありますよね、オスカー・ワイルドの獄中記読まれました?面白いですよ。父親が桂冠詩人というサラブレッドのダニエル・ディ・ルイスも好き。「眺めのいい部屋」「存在の耐えられない軽さ」「エイジ・オブ・イノセンス」
[2007/11/05 20:27] URL | シュエット #- [ 編集 ]
(続き)
私は、「アナザー・カントリー」は、真紅さんの言われるように、パブリック・スクールという上流階級の子弟だけがいける世界という意味もあるし、その他に、秘められた同性愛の世界、そしてガイが亡命したソ連という国。ガイが今いるソ連という国から望郷するパブリクック・スクールのあの世界。いろんな意味が含まれているって思う。ちなみに「モーリス」は市場にはなくって、アマゾンでもすごく高くなっているけれど、「アナザーカントリー」は980円くらいで販売されてますよ。これはもっていてもいいかも…です(笑)私もときおり観てます!
[2007/11/05 20:41] URL | シュエット #- [ 編集 ]
シュエットさま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
ちょっとこの記事は考えがまとまっていないというか浮き足立って書いてしまってお恥ずかしいのですが、読んでいただきありがとうございました。
おお~、DVDをお持ちなんですね!この映画を今まで未見だった自分が恥ずかしいです。。
『モーリス』も好きですが(ヒュー様が出てるし・・)、こちらはもう、念願の作品でしたので夢心地で観ておりました(笑)。
そうですね~、この作品のあと「英国映画ブーム」が来たような。。
私はすっかり乗り遅れてましたけれども(恥)。
ルパートもコリンも、着こなしが素敵でしたね~。
同性愛者が逮捕(!)されるという描写は『モーリス』にもありましたが、そこに目をつけるとは、さすがというか・・。
ダニエル・デイ・ルイスは今は引退状態なのですよね? なにゆえ・・もったいない!

タイトルについては、そうですね、パブリック・スクール、同性愛、ソビエト、いろんな観方があると思います。
昨年、ジェームズ・ボールドウィンの『もう一つの国』というこの映画と同じタイトルを持つ小説を読んで感動したのですが、あの小説のタイトルも様々な意味を含んでいたと思います。
980円とはお買い得ですね~。欲しいな~、この映画のソフトお持ちの映画好きな方多いかもしれませんね。
ではでは、また私もお伺いしますね~。
[2007/11/05 21:38] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは。
いつもTBとコメントをありがとうございます。
いつものことながら、お邪魔するのがすっかり遅くなってごめんなさい。

レンタルがなかなか見つからなかったところ、
運良く、BSで放送されたのを録画。以降、宝物になった1本です。
若くて美しいコリン・ファースが観たい、と
それだけの理由で観てしまったのでしたが。
お話の内容にも驚き!の作品でした。
英国ブームが起こっていたことも知らず、
乳幼児相手の子育て奮闘中の頃の作品でしたが、
ビデオやDVDで映画が気軽に観れる時代でよかったと
つくづく思います。
[2007/11/06 10:32] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
コリン・ファースつながりで。
イギリスBBC製作の「高慢と偏見」テレビドラマだから5時間かな。観られました?
まだなら必見!ダーシー卿のコリン・ファース素敵です。勿論『ブリジット・ジョーンズの日記」の原作者もドラマとコリンの大ファンだからブリジットの恋人役も初めからコリンで役もダーシーって決めていたって。やはり男優はイギリス俳優が素敵ですよ。
[2007/11/06 13:56] URL | シュエット #- [ 編集 ]
 悠雅さま、こんにちは~。こちらこそコメント&TBをありがとうございます!
いえいえ、お忙しいところいつもお邪魔しております。
この作品、レンタルショップにないですよね~。ネットレンタルではあるんですが。。
私も今頃ですが、この作品を観ることができて本当に!ラッキーでした。
映像や俳優さんたちも美しいですが、なかなか深い内容の映画ですよね。
何度観ても、満足できる作品のような気がします。
ではでは、またお伺いします~。
[2007/11/06 16:54] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
シュエットさま、こんにちは~。再びのコメントありがとうございます。
うふふふふ、『高慢と偏見』観ましたよ~。感想もアップしておりますのでよろしければお立ち寄り下さい。
こちらです ↓↓↓↓
http://thinkingdays.blog42.fc2.com/blog-entry-122.html

コリン、いいですよね♪ もう、観た当時は一人で大騒ぎしておりました(笑)。
今日も日本のいい男にクラクラしてきました♪ 気分いいな~。。
ではでは、またお伺いします~。
[2007/11/06 16:58] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
しつこいですけど、TBまで持ってきました。「シュレック」だけど、中身はルパート!ルパート!なもので(笑)、お邪魔でなかったらルパート!観て!
[2007/11/07 21:56] URL | シュエット #- [ 編集 ]
シュエットさま、三度のコメント、ありがとうございます!
TBもいただきます。え、シュレック??(笑)
後ほどお伺いしますね、ではでは~。
[2007/11/07 22:43] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こちらにもお邪魔します。
もう15年ほど前に初めて観たとき
ルパートよりも,ストイックなコリンの方が印象に残りました。
その時はコリン・ファースという名前は知らなかったのだけど。
若くて可愛いけど,ほんと雰囲気や声は驚くほど変わってませんね。
・・・コリンのそこが好きんなのですけど。
あらためて観てみるとルパートの美しさにもびっくり。
そしてパブリックスクールの特異な空間やしきたりや価値観・・・
美しい国に迷い込んだような錯覚を起こさせる作品ですよね。
[2008/11/25 07:34] URL | なな #- [ 編集 ]
ななさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
コリン・ファースお好きなのですか?
この映画の彼はホント、美しい!ですね。
今はちょっとオジサンになってしまって悲しい~ですが。。
私は幼稚園からずーーーっと共学だったので、男子校、女子校って異世界です。
特に全寮制の寄宿学校ともなれば・・。
これは本当に、英国映画の名作だと思います!
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2008/11/25 11:43] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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