生きていれば、きっと~『旅立ちの時』
20071019093506.jpg


 RUNNING ON EMPTY


 元ベトナム反戦運動家であり、爆破事件の実行犯としてFBIに指名手配中の両親
に育てられ、共に逃亡生活を送る少年ダニー(リヴァー・フェニックス)。名前と髪の
色を変え、全米各地を転々とする日々を送る彼は、転校先のニュージャージーで
音楽教師にピアノの才能を認められ、名門ジュリアード音楽院への進学のチャンス
を得る。家族と恋人、将来の夢の間で揺れ動くダニーと、あくまで家族の絆を重
んじながら、自らの理想と信念に疲弊し始めた両親。何よりも愛する子の巣立ち
を迎えた親と、羽ばたきたいと念じながらも親を思う子の心情、家族の真の愛を
描いた佳作。感動しました。

 監督はシドニー・ルメット、脚本はご存知マギー&ジェイク・ジレンホールの
御母堂ナオミ・フォナー
。ダニーを演じた故リヴァー・フェニックスは、本作の
演技によりアカデミー助演男優賞にノミネートされている。

20071019093625.jpg

 14年もの間、親と接触を断ち、名前を変えながら地下に潜り、支援者のカンパ
で家族と共に逃げ続ける・・・。本当に、こんな人たちがいるのだろうか、と信じ
難い気持ち
で観ていた。犬を捨てる場面が受け入れ難く、悲しい気分にさせられ
たからかもしれない。しかし、日本でもまだ容疑者が指名手配中の未解決事件が
あることを考えると、広大な国土を持つアメリカでは大いに有り得る話なのかも
しれない。

 成長していく息子の人格を無視して、家族は団結し、行動を共にすべきだと強制
する父アーサー(ジャド・ハーシュ)に対しては、ずっと懐疑的だった。彼は自らの
理想と信念のために、家族に犠牲を強いているのではないかと。しかし、彼が最後
に下した決断に安堵した後では、会えないままに最愛の母を亡くした悲しみの中で、
彼にとって家族が唯一の拠り所であり、「一緒にいること」に固執したのだと理解できる。

 息子が成長し、将来を考えた時に初めて、自らの親の心情を知る母アニー(クリス
ティーン・ラーチ)
。自分が失ったを息子に託すべく、疎遠にならざるを得なか
った父と再会し、和解する場面は感動的だ。ダニーの世代、アニーの世代、その
親の世代、三世代それぞれの視点と心情が描き分けられた演出と脚本が素晴らし
い。
もし公開当時にこの映画を観ていたなら、間違いなくダニーとその恋人ローナ
(マーサ・プリンプトン)に感情移入していただろう。しかし、20年近く経った今で
は、アニーの立場でこの映画を観ている自分がいた。

 繊細で内向的で、才能に溢れたダニーをハマリ役で演じるリヴァー・フェニッ
クスがまた、忘れ難い印象を残す。少し斜に構えた物憂げな瞳、ローナに本当の
自分を打ち明けるときの必死の表情、自転車に乗れと言う父に戸惑いながら「一緒に
行くよ」とすがり、「愛しているよ」と言われてゆがむ泣き顔。彼の周りを名残惜し
げにくるくる回るトラックを見送る柔らかな表情に、家族の歌声が重なるエンデ
ィング。


 いつか必ず、君に会えると信じている--。

『旅立ちの時』監督:シドニー・ルメット/脚本・製作総指揮:ナオミ・フォナー
  主演:リヴァー・フェニックス、クリスティン・ラーチ、マーサ・プリンプトン/
                                 1988・USA)
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:心に残る映画 - ジャンル:映画

[2007/10/19 09:45] | DVD/WOWOW | トラックバック(2) | コメント(8) |
<<現実と空想を繋ぐもの~『パンズ・ラビリンス』その2 | ホーム | 王女の帰還~『パンズ・ラビリンス』>>
コメント
真紅さま
パチパチパチ 素晴らしいレヴューでした! 細かい部分を思い出し 改めて感動が甦ってきました。 あまり一般的には取り上げられない作品ですが バランスのとれた作品だと思いますし 父・母・息子・祖父…それぞれの心情が伝わってくる作品だったと思います。 リヴァー・フェニックスにも合っている作品ですね。人はそれぞれの道を選んでも 心の中心 一番大切なところが繋がっていればOKですね。まれにですが 環境に左右されず 才能を持った子供が現れるのは現実にあることですが この映画の様により良い環境と教育が与えられなければその才能も育っていきません。何かを生み出す時は皆苦しむものですね。思いは書き切れません。私も又観てみる事にします。ありがとうございました。
[2007/10/19 19:18] URL | Maria #MlY0asYk [ 編集 ]
Mariaさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
おお、拍手いただきありがとうございます!
この映画はずっと観たいと思っていましたが、予想以上に感動しました。
これ、監督がシドニー・ルメットなのですね・・。
ナオミ・フォナーもバリバリのリベラルだと聞いたことがありますが、思想や信条はどうであれ、家族を思う気持ちは同じですね。
リヴァーにも本当にピッタリの役柄でした。彼は実際、特殊な環境で育ったのですよね、学校にもあまり行っていないとか。。
彼には演技という才能があったわけで、半分本人を演じていたような感覚だったのではないでしょうか。
何かを始めたり、一歩踏み出すときの勇気を思い出させてくれる作品でした!
また遊びにいらして下さい。ではでは。。
[2007/10/19 19:41] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
 真紅さん、こんばんわ
 僕もつい数ヶ月前に見たばかりですが、見た直後もそうでしたが、こうして真紅さんのレビューを読んで改めて素晴らしい作品だと思います、
 辛いことを誰にも打ち明けられない苦しみはBBMのイニスにも通じるところがあると思います、映画の中でいくつかのシーンでほんとにジーンと切なくなりました、
 ダニーがローナに対してキス以上の行為ができない場面、あれはまさにローナを思うあまりの行動で、切なかったです(僕の一番の泣きのツボなんです)それと母アニーが父親に会いたいけど、我慢してきたこと、父も娘を思ってたこと、そしてラストは、とても素敵なラストで・・・、ほんとにダニーが旅立つ時でした、ラストの何ともいえないハッピーエンド?BBMを思い出しちゃうし、とてもいい脚本でした、ジェイクママってすごい!ぜひまた見て見たい作品です、そして最後にリバーに拍手!!
[2007/10/19 21:11] URL | イニスJr #- [ 編集 ]
イニスJrさま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
この映画は本当に佳作と呼ぶにふさわしいですね。。感動しました。
イニス、そうですね。自分をアウトサイダーだと自覚して、用心して生きているところは重なりますね。
ダニー、めっちゃ切なかったですね~。。勝気なローナは、バカにされたと思って彼を避けるし(涙)。
私の一番のツボは、アニーと父との会話(お父さんの最後の泣き顔が・・)、それからやっぱりラストですね。
バースディパーティで皆で唄った歌が流れるエンディングは涙・涙でした。
ジェイクママは本作でゴールデングローブは受賞していますね。
オスカーもノミネートされて、ジェイクがTV中継を観た、と語っていました。
惜しくも受賞を逃した時は枕をTVに投げつけた、とか。。 まだ8歳くらいですよね、カワイイ♪
これは色褪せない作品だと思います、私もまた観たいです。
ではでは、またお立ち寄り下さいね~。
[2007/10/19 21:25] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、思い出しますね。自転車に乗っているリヴァー。私は本作のリヴァーと、「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」でボーイ・スカウド姿のヤング・インディのリヴァーが好きだわ。マーサ・プリンプトンとのキスシーンも爽やかで…。彼女もラルフ・ローレンが良く似合う少女だったのに、今ではすっかり中年に…。でもこんな生活とリヴァーと両親の実生活とがあまりにも重なるのも痛々しい思いもします。
[2007/10/20 01:05] URL | シュエット #- [ 編集 ]
こんにちは。
これは、特殊な家族の物語だけれど、
どんなに一般的と思われる家庭でも、子供がいる限り、いつか遭遇するテーマでもありますよね。
こんなに極端ではないにせよ、家族4人の生活がいつまでも続くと、どこかで思っていたのに、
ある時突然、2人の子供がいっぺんに出て行ったことを思い出し、
共通する思いに、とても切なくなりました。
[2007/10/20 09:10] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
シュエットさま、こんにちは。コメントありがとうございます!
自転車に乗っているリヴァー、はらはらしながら観ていました。
この映画って、『スアンド・バイ・ミー』の僅か2年後なんですね・・。
男の子の成長って早いですね。
リヴァーの生い立ちと重なる内容というのを知り、いたたまれない気持ちになります。
マーサ・プリンプトンとは本当にカップルだったとか・・。
改めて、リヴァーの存在感を思い知る映画でもありました。
ではでは、またお伺いしますね~。
[2007/10/20 23:47] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうござます!
設定にはとても共感できなかったのですが、親子の物語という点では物凄く共感できる物語でした。
「空の巣症候群」という言葉がありますものね。
親離れよりも、子離れのほうが大変だったするのかもしれませんね。。
私も、子どもの手を離すべきときに離せる母でいたいと思いました。
ではでは、またお伺いします~。
[2007/10/20 23:51] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://thinkingdays.blog42.fc2.com/tb.php/321-6f1a0d26
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
旅立ちの時
&nbsp;岐路に立つ17歳。その時、家族は…
[2007/10/20 08:51] 悠雅的生活
旅立ちの時             RUNNING ON EMPTY
ダニー(リバー・フェニックス)は17才。 グラウンドのバッター・ボックスに立っていた。意気込み過ぎ 空振り三振で終わったが次の試合ではレギュラーの指名を受けた。 メンバーが足りないのが理由だった。野球はダニーの得意ではないのだ。 グラウンドからの帰り道 ダ
[2007/10/31 00:29] Maria
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

Recent Entries

Categories

What's New?

真紅

Author:真紅
Every cloud has a silver lining.

Recent Comments

Recent TrackBacks

Archives

My Favorite

Search this site

RSS

Thank You!