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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

ジャックの瞳、ジェイクの「次」~ブロークバック・マウンテン#11

 5回目鑑賞、続き。最初の夏、下山してピックアップの前での別れの場面。今回は
この場面から落涙してしまった。イニスを見つめるジャックの瞳のなんと切なく雄弁
なことか。これっきりなんて嘘だろう? 来年また会おうと言ってくれよ! それで
忘れ形見にシャツを盗んでいたジャック。彼にはイニスの心の壁の高さがこの時
からわかっていたのかもしれない。

シティ・スリッカーズ』を観たせいか、ジャックが亡くなった39歳という年齢が
妙に心に引っかかった。中年の危機という言葉があるが、ジャックも40代を目前に、
自分の今までの人生、イニスと出会う前と出会って後の人生、これからの後半生に
ついて考えていたのかな・・などと思う。実家の両親に語ったという「ラリーンと離婚
して(イニス以外の)男と牧場をやる」計画は、ジャックが本当に、本気で考えたもの
だったのだろうか? ラリーンと暮らす「偽りの人生」に別れを告げて、人生やり直す
ラストチャンス、という思いがあったのかもしれない。「どうして女房とは踊らないの?」
「考えたこともない」と言われた後のラリーンの寂しそうな表情。
考えたこともない。無関心。こちらまで胸が詰まる。

 牧場主任ランドールとの出会いのパーティーシーンは、人物が多くなかなかじっ
くり演技を味わえないシーンであると思う。しかしこのシーンのジェイクの演技は
なかなか凄い。何かの「匂い」、或いは始まりを予感したかのようにランドールと
交わす視線、彼の目は本当に雄弁だと思う。その後ランドールと二人で奥方達を待
っている間、話題を探して彷徨うようなジャックの瞳、その後「釣り」に誘われたと
きの揺れ動くジャックの心、その瞳! BBMに対して様々なレビューを読んだが、
キャストの演技への不満を述べたものに当然ながら当たったことがない。主演の
ヒース&ジェイクは勿論のこと、脇役も皆素晴らしい。特にあまり語られることが
ないが、ジャックの母役、ロベルタ・マックスウェルの演技も助演女優賞並みの名演
ではないだろうか。

 そして新たな疑問(と言っても大したことではないが)。ジェイクは髪を染めている
のか? 今まで当然のように観ていたが、ジェイクの素(?)の髪の色はもっと色素が
薄い気がする。BBM(若い頃)では黒に近いダークさ、徐々に色が薄く、白髪も見え
てくる。そう言えば『グッド・ガール』のコメンタリでも、監督と脚本家が「ジェイク
の髪は染めてる?」「いいや、染めてないんじゃない?」みたいな会話をしていた。

 ジェイクの次回作Zodiacの次)の話が全然聴こえてこないが、彼には彼の「」し
かできない役にどんどん挑戦して欲しいと思う。個人的願望を言えば、ベルンハルト・
シュリンク
の『朗読者』、ミヒャエルをジェイクに演じて欲しい。裁判所の傍聴席で、
ハンナを見つめているミヒャエル。その時のジェイクはどんな瞳をしているんだろう・・?
と、そんなことを考えてみる、ユダヤ系容貌のジェイクが、ドイツ人を演じることは
ほぼ不可能だとわかってはいても。
この小説をアンソニー・ミンゲラが映画化すると聞いて小躍りしたものだが、もう何年
も音沙汰がないような。このプロジェクト、一体どうなっているのだろう?
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テーマ : ブロークバック・マウンテン
ジャンル : 映画

2006-05-29 : BROKEBACK MOUNTAIN : コメント : 8 : トラックバック : 1
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非公開コメント

真紅さん、こんにちは。
今日はジェイクの髪の色でシンクロニシティ?
「グッド・ガール」のコメンタリー、私はジェイクの髪と体毛の色が、で頭が真っ白になってしまい、染めてる云々は耳に入ってないのです。相当に焦っていたらしく。

ランドールとの出会いのシーンでもジェイクの目は雄弁でしたね。39歳の危機ですか。本格的に中年になる前になんとか新しい道を模索したかったのでしょうか、ジャック。そしてシティ・スリッカーズのお父さん。そういえば彼も煮詰まってましたねえ。
2006-05-29 17:28 : びあんこ URL : 編集
びあんこさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ホント、被っててすみません。気が合う?そうかもしれないですね~!
ジェイクの髪は、私も黒だと思い込んで観ていました。漆黒の髪に碧眼、って素敵ですよね~。。
彼にはもっともっといろんな作品にチャレンジして欲しいです。
ではまた覗いて下さいね。ありがとうございました。
2006-05-29 19:20 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんばんは。
ランドールとの出会いのパーティーのシーン。取り上げる方をほとんど見たことないのですが、私は好きです。
というのも、あのシーンのジャックって凄い色っぽくないですか?私なら確実にイカレてるでしょう。解る、解るよランドール。あの時のジャックの暗さというか闇を感じさせる瞳が何とも…。
後、この時のラリーンがまた良いのですよ。あまり評価されていないみたいですが、ラスト近くの電話のシーン等、アン・ハサウェイの演技も大したものだと思います。

確かに普通の写真のジェイクってBBMの時より髪の色明るいですよね。瞳の色がきれいな碧だし、髪や肌も薄い色のが普通かも?濃い色の髪の毛に碧眼ってあまり見ない気がします。サッカー選手のパオロ・マルディーニぐらいしか思いつきません。

話は変わりますが、以前ここで教えていただいたポン・ジュノ監督のカンヌ発表の新作、9月には日本で観られるということで、もう嬉しくてしょうがありません。わ~いわ~い。(←アホ)
また、イ・チャンドン監督の作品「グリーン・フィッシュ」が未見だったので、レンタルを探しているのですが見当たりません…。もう買っちゃおうかしらと思ってます。
なんだかじわじわと韓国映画にハマってるような?あら?
2006-05-30 01:05 : ライチ茶 URL : 編集
ライチ茶さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
パーティーシーン、同好の士がいて下さりうれしいです。あの場面いいですよね、ジャックもラリーンも。
特にジャックの視線がたまりません。本当に細かい演技だなぁ~と感服します。
「グリーンフィッシュ」は、私もDVDのレンタルは見たことないです、ビデオしかないのかもしれませんね?
探しまくって、実家近くのレンタル屋さんで見つけたときはうれしかったなあ。。
ハン・ソッキュさんはこの映画で演技開眼されたそうです。イ・チャンドン監督はこれがデビュー作。
ああ~、イ・チャンドンについて語りたくて堪らなくなってきましたのでこの辺にしときます。
「グリーンフィッシュ」、買っちまいな、とはとても言えませんがどうか観られますように。観られた暁には感想聞かせて下さいね。
あれ、何の話でしたっけ。あ、BBMですね。#12に続きますんでまた覗いてみて下さい。
ではでは、ありがとうございました。
2006-05-30 01:48 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんにちは。
あのランドールとのシーンは、ふたりの意味深な視線と会話ににとてもどきどきさせられました。ジャックのことははいずれ自分でも書きたいなあと(書けるかわかんないのですが、シェ~ッ←?)思っていますが、わたしが何より印象的だったのは、ランドールに事実上俺とどう?なんて誘われてしまったジャックが、何度も目をしばたたかせていたところです。予想していたのか、していなかったのか・・・やっぱり何となく感じ取ってはいただろうに、でも動揺している(わたしにはそう見えた)ジャックが、意外というかなんというか。(でも公平に見てやっぱりイニスのほうがいい男ですよね、絶対。ランドール、ちょっとやらしい感じでてなかなかいいんですけども。)
主役から脇役まで見所があるなんて、俳優さんたちにとってもわたしたち観客にとっても大歓迎の映画ですよね。キネ旬の特集ではジャックのお母さんやランドールの写真まで載せてあったので、とっても嬉しかったです。小さかったけど。
それでは今日はこの辺で。
2006-05-30 17:00 : かいろ URL : 編集
かいろさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ランドールとのシーン、ほんと観ている私達にまでジャックの動揺が伝わってきましたよね・・。
ランドールって背が高くてやさしそうな人ですよね。でもイニスとは(当然ですけど)全然違う~!
あの時ジャックの胸に去来したのはイニスの面影でしょうね。
本当に、見所の多い映画です。
かいろさんもジャックの記事、書いて下さいね。
楽しみにしています。また遊びに来て下さい、私もお邪魔します。
ありがとうございました。
2006-05-30 23:42 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんにちは。TBとコメントありがとうございました、こちらからも送らせていただきました。わたしコメントさせてもらっているじゃないですか!なんだか恥ずかしい、キャー(←???)。恥ずかしいので速攻で退散しますー。
それではこの辺で。
追伸:ほんとはBBM#18にも『モーリス』にもコメントさせていただきたかったんですが・・・時機を逸してしまいました・・・。あーあ。
2006-10-11 13:28 : かいろ URL : 編集
かいろさん、こんにちは。再びのコメントとTBをありがとうございます。
ロベルタ・マックスウェルの演技については少ししか触れていないのですが、思わずTBしてしまいました。
コメントは古い記事、新しい記事に関わらずいつでもお待ちしておりますよ。
「時機を逸した」などどおっしゃらず、気が向いたらいつでもコメントして下さいませ。
ではでは、またお話しましょう。ありがとうございました~。
2006-10-11 15:49 : 真紅 URL : 編集
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