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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

善良なドイツ人~『さらば、ベルリン』

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 THE GOOD GERMAN


 1945年7月。戦火の爪痕深いドイツ・ベルリンに、アメリカ人ジャーナリスト
ジェイク(ジョージ・クルーニー)が降り立つ。戦前、ベルリンで記者をしていた
彼は、アシスタントの人妻レーナ(ケイト・ブランシェット)と不倫関係にあった。
思いがけない再会を果たす二人だったが、レーナはジェイクの運転手タリー(トビー
・マグワイア)
の情婦となっていた・・・。
 全編モノクロ、40年代のクラシック映画を意識した作りのラブ・サスペンス。
と言うか、ほとんど『カサブランカ』的雰囲気。特にラストは「そっくり」。
しかし、この映画はただの悲恋ラブストーリーではない。
監督のスティーヴン・ソダーバーグは、ピーター・アンドリュース名義で撮影を、
メアリー・アン・バーナード名義で編集も担当している。オーシャンズの合間(?)
にこんな映画も撮っているから、ソダーバーグ&クルーニーは目が離せない。

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 ジェイクは、ハンサムで正義感は強いが腕っ節は滅法弱い。果敢に向かって
は行くが、分かり易い小悪党タリーにすらノされる。そして、謎めいたレーナ
翻弄されまくる。彼があそこまでレーナを守ろうとしたのは、ユダヤ人であ
りながら戦乱のベルリンを生き抜いた
彼女に対する、愛情というよりも憐憫
近い感情だった、と言ったら言い過ぎだろうか? レーナの心情が観ているこ
ちらにもなかなか読めず、ストーリーが分かり辛かったのが残念

 しかしこの映画、レーナを演じたケイト・ブランシェットがとにかく最高!
なのだ。低い声、娼婦らしく濃く塗られたルージュ、「スキニー・レーナ」と仲間
の娼婦が言う、細くてしなやかな肢体。男に頼っている振りをしながら狡猾
利用し、危険となれば殺しも厭わない。生き延びるためには平気でをつき、
決して本心は明かさない。その存在感は、最早往年の大女優マレーネ・デート
リッヒ
級と言ってもいいのではないだろうか。いや、絶対意識してるよね・・。
ケイトの演技を観るためだけに劇場に足を運んだとしても、損をしたとは決し
て感じないだろう。

20071001213118.jpg

 少年の言った「流れはポツダムで渦になる」というセリフが印象的。戦後処理
只中で、大国同士の思惑や取引が交錯する場所。同じ時期に、遠く離れた極東
の島国日本だけが、孤立無援の戦いをしていた事実に虚しさと悲しみを憶える。
「生き延びるために何でもした」というレーナ。彼女を一体、誰が責められるだろ
う?戦争の狂気に翻弄され、逃げ場のない波に襲われたとき、正気を保てると
誰が言い切れるだろうか。原題は「よきドイツ人」。レーナは、夫が戦時中の真実
を語ろうとしているとして「彼は善良なドイツ人よ」と言う。しかし、この題名
指すところに、あの戦争で起こった悲劇が内包されているようだ。

『さらば、ベルリン』監督:スティーヴン・ソダーバーグ/2006・米/
        主演:ジョージ・クルーニー、ケイト・ブランシェット
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テーマ : 考えさせられた映画
ジャンル : 映画

2007-10-01 : 映画 : コメント : 17 : トラックバック : 6
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さらば、ベルリン☆別れるには、早すぎる。抱きしめるには、遅すぎる。
26日のレディースD、映画館で鑑賞♪
2007-10-02 11:22 : ☆お気楽♪電影生活☆
さらば、ベルリン
1945年、7月のベルリンで再会した、男と女
2007-10-02 23:09 : 悠雅的生活
さらば、ベルリン
なるべく映画を観る前はあまり情報読まないで観に行こうとしている方なんですけど、スティーブン・ソダーバーグ監督、ジョージ・クルーニーとケイト・ブランシェットが主演という事で観るの決めたので、どんな映画か知らなかったんです。「さらば、ベルリン」...
2007-10-03 20:27 : It's a Wonderful Life
『さらば、ベルリン』 The Good German
オトナな雰囲気に酔いしれる。第2次大戦末期の1945年、アメリカ軍の従軍記者であるジェイク・ガイズマーは、ヨーロッパの戦後処理を話し合うポツダム会談の取材のためベルリンにやってきた。★★★★ソダーバーグ&クルーニーのコンビが40年代のフィルムノワールを蘇らせた
2007-10-05 01:49 : かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
さらばベルリン
随分前になるのですが、「さらばベルリン」の試写会に行って来ました。なんだかなぁ~どうにも筆の進まない作品でして、、、他の映画の後回しにしていました。原題は「The Good German」それがなんで「さらばベルリン」になるのやら、、、、でもこのタイトルの方が観たくな
2007-10-27 17:43 : アートの片隅で
さらば、ベルリン
トビー目当てで、観てみました♪ さらば、ベルリン(2008/02/08)ジョージ・クルーニー.ケイト・ブランシェット.トビー・マグワイア . →Amazonで詳...
2008-02-26 02:41 : ゆきちママの素直なキモチ
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 真紅さん、こんばんわ
 ソダーバーグ監督ってこんな映画も撮ってるんですね~、色んなジャンルの映画を作ってるみたいですが、最近の作品は、大体がクォリティが高く、かつ娯楽性(観客を満足させる)も兼ね備えた監督のような、気がします、こういう監督好きですね~、
 G・クルーニーにK・ブランシェット、T・マグワイアとキャストもいいじゃないですか、真紅さんの記事読んで、ますます見たくなりました~!ケイトってやはりいい女優なんですね、「コーヒー&シガレッツ」の彼女の二役は面白かったですが・・・、色んな役に挑戦する女優ですね。
2007-10-02 00:29 : イニスJr URL : 編集
真紅さん本作見られたんですね、私は時間取れなくって気にはなりつつ見てません。ソダーバーグ、監督デビュー作「セックスと嘘とビデオテープ」は良かったけど、あとががっくりだって…
モノクロ映画で、難波で上映でしたよね。まだやってる?)ちょっと気になる映画でした。
2007-10-02 09:44 : シュエット URL : 編集
真紅さん追記。ケイト・ブランシェットの「シャーロット・グレイ」(だったかな?)見られました?同じく第二次大戦下が舞台ですけど、この時のケイトも良かった。
2007-10-02 10:24 : シュエット URL : 編集
こんにちは♪
やたらと張り倒されるジョジ・クルさん、姑息なトビーくん、
悪女然として去るケイト・・・
今までのイメージにはないような姿だったし、
そもそも、白黒しか撮れなかった当時をわざと真似て
知らなきゃだまされる・・・
そういう楽しみ方をしてしまった作品でした。
2007-10-02 11:32 : ひらで~ URL : 編集
イニスJrさま、こちらにもコメントありがとうございます!
ソーダバーグもクルーニーも素晴らしい映画人だと思います。
娯楽性だけでなく、様々な問題を内包した映画を作りますよね。
でも二人のプロダクション「セクション・エイト」って解散したって聞いた気がするのですが、どうなっているのでしょうね??
トビーは、割とすぐに退場するのですが主演扱いですよ。
黒スパイディを更に悪くしたような役どころでした。
ケイトはホントに素晴らしかったです、記事にも書きましたが彼女を観るためだけでも観る価値ありの映画のように思いました。
たまにはこういう映画もいいですよ~。
ではでは、またお立ち寄り下さいませ!
2007-10-02 17:03 : 真紅 URL : 編集
シュエットさま、こんにちは~。コメントありがとうございます!
はい、TOHOシネマズなんばで観ました。今週はまだ上映していると思います。
ソダーバーグって、びっくりするような作品もありますよね(笑)
この映画は40年代風に撮られていて、そう悪くはなかったですよ。
私はケイトだけでも満足できました。
実は『グラインドハウス』とこれと、ギリギリまで迷ったんですよ・・・。
『シャーロット・グレイ』は未見です!ケイトの映画、結構観てないの多いんですよ~。
これからどんどん観ていきたいです、でもなかなか時間が・・・(汗)。
ではでは、またお伺いしますね~。
2007-10-02 17:09 : 真紅 URL : 編集
ひらで~さま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます!
そうそう、ジョージが激弱でしたね~(笑)。黒スパイディにもノされてましたから。
ケイトがよかったですね~、もう、成りきりで!
私はこの映画のストーリーが芯から把握できていないかもしれないのですが、映画の雰囲気だけでも楽しめましたね♪
ではでは、またお伺いします~。
2007-10-02 17:12 : 真紅 URL : 編集
TBサンクスです。
考えて見ると、『さらばベルリン』って結構安直な邦題ですよね。意図的には間違ってないけど、余りにもクリシェ!
2007-10-02 21:01 : chuchu URL : 編集
chuchuさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
この邦題は、原作の邦題をそのまま使用しているようですね。
確かに安直かも(笑)。もうすぐ『グッド・シェパード』公開だけど、それはカタカナだし。
原題は、実は深い意味があるんですよね?
ではでは、また遊びに行きます~。
2007-10-02 22:15 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんばんは。
TBとコメントをいただいたのに、またお邪魔が遅くなりました。

これはひとえにケイトを観に行ったのですが、
もし、出演者の誰をも知らなかったら、40年代の作品だと騙されたかも…
愛想なく名前が出て来るタイトルバックも、The Endの文字も、徹底した作り方でしたね。

あら、真紅さんが掴みきれない内容なら、わたしが混乱しても仕方なかったんだわ。
でも、知ったところでおんなじかも、と開き直り、
知ったふりして雰囲気を楽しんでました。

ケイトの出演作は多くて、見始めたらなかなか終わらないんだけれど、
またお時間の許す時にごらんくださいませ。
観れば観るほど好きになってしまいます。
2007-10-02 23:17 : 悠雅 URL : 編集
ケイト!
すばらしくよかったですよねー。
なるほど、マレーネ・デートリッヒな感じです!
あるスキャンダル~みたいな役をやるよりか、
断然実力発揮しているって感じですー。
これ、巷の評価はあんまり高くないようですが、
私は雰囲気に浸って気に入りましたー。
2007-10-03 01:40 : かえる URL : 編集
悠雅さま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
いえいえいつもお忙しい中ご訪問感謝です♪

確かに、モノクロフィルムのノワール的雰囲気が巧く再現されていましたね~。さすがです。
ケイトの心情が掴めなかったですよね。
タリーを愛してないことくらいはわかるのですが、ジェイクへの気持ちや夫への愛は本当にあるのか、とか・・。
私も考え出すとますます筋がわからなくなるので、観ている間は考えないようにしてました(笑)。
雰囲気だけでも楽しめましたよね~。

今手持ちに『オスカーとルシンダ』があるので、早く観たいのですが・・。
Dさまもご覧になったようだし、私も追いつかねば~。。
また観た折にはお話して下さいませ♪ ではでは~。
2007-10-03 08:06 : 真紅 URL : 編集
かえるさま、こちらにもコメントありがとうございます。
そうそう、『あるスキャンダル~』は私もフラストレーション溜まりましたよ。
ケイトだからさすがの演技ではあったのですが、いかんせん役柄が・・・。
ホント、この映画巷でほとんど話題になっていないですよね。
でも私も観てよかったと思いました。あのケイトを観られただけでも。。
ではでは、またです~。
2007-10-03 08:15 : 真紅 URL : 編集
真紅さん

映像はすばらしかったんですけど、
どうもいま一つのりきれず・・
なんだかオチャラケなレビューを書いてしま
いましたがTBさせていただきます・・。
雰囲気いいんでもっと好きになりたい
映画でした;;
2007-10-03 20:37 : kazupon URL : 編集
kazuponさま、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
ご覧になったのですね♪
確かに、話が分かりにくいので乗れないと辛い映画かもしれませんね。
なんかほとんど話題になってないですよね~、ここのところ話題作がたくさん公開されてますから。
後ほど「オチャラケレビュー」楽しみに伺います(笑)。
ではでは~。
2007-10-04 00:31 : 真紅 URL : 編集
こんばんは~ (^o^)/ 深夜にお邪魔します。
TB送ってみました(届いてますか?)。 めいっぱいトビーファン目線で書いてみました(恥)

ケイト・ブランシェット、すごい悪女ぶりでしたね。ん?こういう人は悪女って言わないのかな? 妖婦?
(ボキャブラリー足りなすぎ)

あと、ななさんところからバトンが回ってきてるんですが(スターのお仕事バトン)、真紅さんに回してもいいですか?(汗)

え~、ではでは、また |〃▽〃)ノ
2008-02-26 02:55 : ゆきちママ URL : 編集
ゆきちママさま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
そうかー、ゆきちママさまはトビーファンでもあるんですよね!
ケイトが悪女だった印象はないんですよ。う~ん、何だろう、ヒロイン?←ボキャ貧←古!

バトン、ありがとうございます。
実はその「スターのお仕事」バトンはね、私もななさまから頂いているんですよ。
でもアップはちょっと先になると思うので、お二人から頂いたということでアップしますね♪
ではでは、後ほどお伺いします~。
2008-02-26 20:14 : 真紅 URL : 編集
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