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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

シネマよ永遠なれ~『ニュー・シネマ・パラダイス』

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 NUOVO CINEMA PARADISO


「30年、一度も戻らないのよ。兄さんらしいわ、もう忘れているわよ」
「忘れるもんか、私にはわかるんだ」


 何年ぶりの再見だろう、この冒頭の会話はすっかり記憶から抜け落ちていた。
しかしこの老いた母の言葉を目にした瞬間、あのラストシーンが甦り涙がこぼれ
落ちる。あとは2時間、トトと共に「記憶の中の写真」のような映像を、泣きっ放しで
追い続けていた。

『ニュー・シネマ・パラダイス』。現在、最新作『題名のない子守唄』が公開中のイタ
リアの巨匠、ジュゼッペ・トルナトーレ
が弱冠33歳で撮った、映画への愛と憧れ、
故郷と青春の日々への思いが溢れる、問答無用の感動作。
この映画を映画館で観ら
れる日が来ようとは・・。生きててよかった、まじで。

 第二次大戦直後、イタリアはシチリア島の小さな村。トト(サルヴァトーレ・カシ
オ)
は10歳、母と妹の三人暮し。父はロシア戦線から帰らない(この「ロシア戦線から
帰らない」
という設定は、イタリア映画の名作『ひまわり』を想起させる。トトの母も、
ソフィア・ローレンに似たイタリア美人)。貧しい生活の中、村の娯楽は教会兼映画
館「シネマ・パラダイス」
で上映される映画だけ。映画が大好きなトトは、映画を観る
だけでは飽き足らない。映画にもっと近づきたい!とばかりに、映写室に入り浸る。
最初は迷惑がっていた映写技師アルフレード(フィリップ・ノワレ)だったが、二人
の間には、次第に世代を超えた友情が育まれていく・・・。

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 初見時にも感じたが、トトの少年期・青春期・壮年期から成るこの物語、やはり
少年期のエピソードが一番心和む。少年トトを演じたサルヴァトーレ・カシオの愛
らしさの前では、どんな名優も霞んでしまうだろう。トトと奇妙な友情で結ばれ、
父性愛に満ちたまなざしでトトを導くアルフレード。学は無くとも、「人生で大切な
ことは全て映画から学んだ」
ような彼の含蓄ある言葉は胸を打つ。故郷を捨てよ、
自分のすることを愛せよ
と、また愛ゆえにトトを突き放す彼。昨年、惜しくも世を
去った名優フィリップ・ノワレの一挙手一投足が胸に迫る。

 シネマ・パラダイスで上映される、古い映画の数々。銀幕に釘付けになり、何度
も繰り返し、繰り返し観てセリフを暗記する人。赤ん坊を連れた人、授乳させる人、
「いい女」にクラクラする人。映画を観て泣き、笑い、心で映画を求める普通の人々。
映写室に貼られた『カサブランカ』のポスター、父を亡くしたトトに微笑みかけるクラ
ーク・ゲーブル。
これは「映画」そのものだけでなく、映画が観客に届くまでの全ての
過程、全ての関わった人々をも愛し、慈しんだ映画
なんだ。だからこんなにも温か
く、戻ることの叶わない場所にいるような、幸せな気持ちに満たされるのだろう。

 二つの臨終に立ち会ったトトが受け取った形見。試写室で一人、スクリーンに釘
付けになるトトの表情。驚き、歓喜、感嘆、万感の思いが彼の瞳に満ちて、表面張力
になっている。言葉はなくとも全てを伝えるその横顔、ジャック・ペランの名演
光る。そしてもちろん、美しい映像へ郷愁に満ちた旋律を与えた名匠、エンニオ・
モリコーネ
の熟練の技にも拍手を送りたい。

20070915100927.jpg

(『ニュー・シネマ・パラダイス』監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
  音楽:エンニオ・モリコーネ/主演:フィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、
                   サルヴァトーレ・カシオ
/1988・伊、仏)
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テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

2007-09-15 : 映画 : コメント : 16 : トラックバック : 10
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真紅さん、こんばんは~。

この作品、関西で上演されているのですか!
映画館で鑑賞できたなんて、羨ましいです!!

真紅さんのレビューを読んで、細かいところまで映像が蘇えってきましたv-353
全ての映画ファンに観てほしい作品ですよね。

この監督の最新作、凄いらしいですね、、観たいです!こちらからもTB送りますね~。
2007-09-15 19:38 : sumisu URL : 編集
真紅さま~こんばんは(^O^)
私も、この映画は、大好きです!
今もなお、この映画のサウンドトラックの曲は、あちこちのテレビやラジオなどで、聞きますが、聞くたびに、良い曲だな~って、しみじみしちゃいます。
もちろん、映画も最高!!
私の生きて来て見た映画の中でもベスト10に入る映画です♪
2007-09-15 20:13 : latifa URL : 編集
sumisuさま、こんにちは♪ コメント&TBありがとうございます。
そうなんですよ~。ここだけの話、21日までMOVIX六甲で上映されていますよ!
しかも500円です・・。ワンコインでこんな名作を観てしまいました!!
本当に、全ての映画ファンに捧げる作品ですよね。
私もDVDが欲しい・・・と思っています。
『題名のない子守唄』、私もめっちゃ、観たいのですが・・・。テアトルはちょっと厳しいです。
もっと大々的に公開してくれ~と叫びたいです。
もし観ることができたら、お話しましょうね!ではでは~。
2007-09-15 21:54 : 真紅 URL : 編集
latifaさま、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます!
おお、この映画の記事を書いていらっしゃるのですね。
語り尽くされていることですが、音楽が本当に、素晴らしいですよね。泣きます。。
ベスト10ですか、私も迷いまくると思いますが、今ならランクインしそうです!
何度でも観たい映画ですね。映画館で観られて最高でした。
ではでは、記事楽しみに後ほどお伺いします~。
2007-09-15 21:58 : 真紅 URL : 編集
私もこれ大好きです。
人生の映画のベスト10に入りますわ。
何回も見たい映画ってそうそうないけど、私にとってこれは特別です。
純粋に映画って素晴らしいって思うんです。
2007-09-20 17:22 : 牧場主 URL : 編集
監督最新作「題名のない子守唄」は傑作です。
モリコーネの音楽も、今回控えめですが、うまいものです。ミステリーとして見ても一級品です。
2007-09-20 21:29 : 筆知 刻久 URL : 編集
牧場主さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
この映画、特別な思いを持って好きだとおっしゃる方が多い気がします。
本当に、純粋な映画への愛が感じられますよね。
改めて観て、つくづく素晴らしい映画だな~と思いました。
ではでは!
2007-09-21 09:28 : 真紅 URL : 編集
筆知刻久さま、こんにちは。お久しぶりです、コメントありがとうございます!
『題名のない子守唄』、非常に観たいのですが、今月は厳しいです。
来月、出来れば劇場鑑賞したいと思っておりますので、その時お話できましたらうれしいです。
ではでは、またよろしくお願いいたします!
2007-09-21 09:40 : 真紅 URL : 編集
心に残る映画、FC2のテーマで投稿する時やはりこれはそうなりますよね!
いつまでも心にじんわり響いてくる作品。
ふとしたきっかけで思い出して気持ちがあたたかくなる、そんな映画でした。

これはDVDと劇場公開では上演時間が大きく違うと聞いたのですが
真紅さんが今回観られたのは劇場用に編集されたものだったのでしょうか?
実際もうそちらは観ることができないと思っていたんですけど
こういう機会がいつかあったら私も足を運んでみたいなぁ。。。
2007-09-30 16:35 : ジュン URL : 編集
ジュンさま、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
『ブラッド・ダイアモンド』にもTBありがとうございました!

さて。。この映画、本当に映画史と人々の心に残る永遠の名作ですね。
私もよくわからないのですが、完全版っていう尺が長いバージョンがあるのですよね。
このとき私が観たのは尺が短いほうです。リマスターもされていない、普通のフィルムでした。
完全版も通常版(?)も両方DVDになっていると思うのですが、私は完全版は観たことないのですよ。
私は関西に住んでいるのですが、全国の映画館で名画は必ず上映しなければならないっていう条例でもあればいいですよね!
今回『ローマの休日』も上映されたのですが、それは時間の関係で観られなかったのが残念でたまりません・・。
いい映画は、時代を超えて残って欲しいです。
私も、また機会があれば是非劇場で観たい映画です。
ではでは、後ほどお伺いしますね~。
2007-09-30 19:38 : 真紅 URL : 編集
真紅さま
ヤット鑑賞する事が出来ました。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督に敬服です。
〈題名のない子守唄〉〈マレーナ〉〈海の上のピアニスト〉そして本作と
時代を逆行する形での鑑賞でしたが次回作が楽しみです。
人生って、あぁ人生って〈映画のように簡単じゃない〉けれど
捨てたもんじゃありませんね
2008-05-21 20:20 : Maria URL : 編集
Mariaさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
おお、トルナトーレ作品は最新作からご覧になったのですか!
私は『マレーナ』は未見なんですよ。
この作品は、昨年劇場で再見する機会に恵まれ、感無量でありました。
素晴らしい映画です。映画が「人生そのもの」である人だけが作り得るマスターピースですね。
ではでは、後ほどお伺いします~。
2008-05-21 20:34 : 真紅 URL : 編集
はじめまして。sanaeと申します。
実は…maria様のところから飛んできたんです(笑)
最近、更新がストップしてて…どしたんでしょう。。

この作品は私の一番でして…ついコメントしてしまいました。
私も劇場で観ることができたんですよ。

TBさせて下さいね…上手くいきますかどうか…?
2008-06-25 20:53 : sanae URL : 編集
sanaeさま、はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
Mariaさまのお宅からいらしていただいたのですか。コメントとTBもありがとうございます。
Mariaさま、最近私もお話していないので、少し気になっておりました。

おお、オールタイム・ベストですか!
しかし、そう言われる方が多いかもしれませんね。問答無用の名作だと思います。
ではでは、後ほどお伺いします!今後ともよろしくお願いいたします。
2008-06-26 14:30 : 真紅 URL : 編集
真紅さん。TBありがとうございました。
劇場で再見って、数年前の冬のガーデンシネマ?
私も正月休みに見に行きました。
再びの感動でした。
機会あればオリジナル版も見てください。真紅さんならきっとさらにさらに感動されると思いますよ。
2008-08-01 08:30 : シュエット URL : 編集
シュエットさま、こちらにもコメントとTBをありがとうございます。
私が観たのはガーデンシネマではないのですよ。
梅田でもやっていたのですね~。この映画、本当に映画館で観たい映画ですよね。。
完全オリジナル版も、いつか絶対に観たいと思います。
トルナトーレ監督の新作も観たいですね~。
ではでは、またお伺いします!
2008-08-01 22:45 : 真紅 URL : 編集
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