Love goes on...~『ひかりのまち』

WONDERLAND
ロンドン、ある木曜日の夜。カフェで働く27歳のナディア(ジーナ・マッキー)は、
出会いを求めて伝言dialにメッセージを吹き込む。姉デビー(シャーリー・ヘンダー
ソン)は9歳の息子ジャックと二人暮らしのシングルマザー。妹のモリー(モリー・
パーカー)は臨月のお腹を抱え、その夫エディは転職を思案中。。
英国労働者階級に生きる三姉妹を軸に、彼女たちの親、家出した弟、それぞれの
家族の生き方を、ある週末に沿って描いたアンサンブル劇。監督は英国の俊英(と
言われて久しい)マイケル・ウィンターボトム、音楽は『ピアノ・レッスン』のスコア
で一世を風靡したマイケル・ナイマン。大スターは登場しないけれど、英国映画で
はお馴染みのキャストが数多く出演している。
この温かく、キラキラ煌くような珠玉の小品に出逢えてとっても幸せ。もちろん、
オープニングからラストまで目が離せない、と言った類の作品ではないし、途中や
や散漫な印象も受ける。それでも、観終わったときの胸に迫る感動は忘れ難い。
ロンドンの光り輝く美しい夜の顔を見せてくれるこの映画、『ひかりのまち』という
邦題も名意訳だと思う。マイケル・ウィンターボトムの監督作品は『ウェルカム・トゥ
・サラエボ』くらいしか観ていなかったのだけれど、ブラピ製作、アンジー主演の
公開待機作『マイティ・ハート』がとても楽しみになった。

登場人物全ての造形がとてもリアルで、一人として不自然なキャラクターが登場
しない。誰かと繋がっていたい、でも誰でもいいわけじゃない。身近な、手の届く
距離にある幸福に気付かないナディア。奔放で夜遊びを止めないデビー、それでも
一人息子への愛情はストレートで強靭。元教師でスクエアな性格のモリーは、妊娠
中で精神的に不安定なためか、夫についキツく当たってしまう・・。
三人三様、どこにでもありそうで誰でも持っている強さと弱さ。退職後「濡れ落ち葉」
となった父、その父にイラつく母。家出しても、家族との絆を捨てきれない弟。内
にこもり、ナディアへの恋心を告げられない青年フランクリン。「普通」の市井の人々
をリアルに描いて、やさしさも失わない演出が心地良い。

わざとフィルムに傷を施したような、ざらついたドキュメンタリータチの映像も、
この映画の「リアルさ」に一役買っている。そこに被さるマイケル・ナイマンの美
しくやさしいスコア。映画における音楽の偉大なるチカラを改めて感じさせてくれ
て感動的だ。
この映画の白眉は、ナディアが一人、雨の中を走るロンドン・バスで涙するシーン
だろう。都会の無機質な明るさが、抱き合っても心はひとつになれない孤独を浮か
び上がらせてどうしようもなく切ない。誰かと繋がりたい、その誰かはどこにいる
のだろう・・・。
出産、事故、襲撃、何らかのイニシエーションを経て、再び繋がろうとする家族。
願った幸福がすぐ側にあったことをナディアが悟るであろう、希望に満ちたラスト
シーンが素晴らしい。愛も、人生も、続いていくんだ。。
Life goes on...
(『ひかりのまち』監督:マイケル・ウィンターボトム/音楽:マイケル・ナイマン/
主演:ジーナ・マッキー、シャーリー・ヘンダーソン、モリー・パーカー/1999・UK)
- 関連記事
-
- 奇妙な小島~『魚と寝る女』 (2007/09/10)
- Love goes on...~『ひかりのまち』 (2007/09/03)
- 法で裁けない罪~『ヴェラ・ドレイク』 (2007/08/31)
スポンサーサイト
trackback
元気でやってるよ
2007-09-04 09:51 :
悠雅的生活
Wonderland「私はナディア、27歳。瞳はブルー。友情から始めたい人を探しています。」光とネオンが揺れ、きらめくロンドンの街。そのひとつひとつの光に、小さな命が宿る。大都会で生きる人々の、ほんの少しの温もりを求める姿が切なく、そして愛おしい4日間の...
2007-09-06 00:45 :
knockin' on heaven's door
今回紹介するのは、マイケル・ウィンターボトム監督作品の『ひかりのまち』です。
ひかりのまち:ストーリー
「わたしはナディア。27歳、趣味は音楽。スポーツ、ダンス、散歩も好き。身長175センチ。髪は栗色、瞳はブルー。友情から始めたい人、募集します。もちろんロ...
2009-03-05 02:41 :
gflblog.jugem.jp | 映画・音楽・グルメ紹介ジフル
光に、そして雨にむせぶ11月のロンドン街並みと人間模様
2009-10-13 12:25 :
心の栄養♪映画と英語のジョーク
コメントの投稿
真紅さん、こんにちは。
『リトル・ミス・サンシャイン』にTBとコメントありがとうございました。
わたしのコメントはこちらに残しますね。
英国作品は、好きな作品が本当に多いけれど、
中でも特に地味ながら、これはとても好きな1本で、
何度も観てしまいます。
わかっていても、ラストに浮かび上がる文字を観たいからなのかもしれません。
三姉妹とイアン・ハート、
それぞれが別の作品ではまた違う感じの役柄を多数演じていて、
その辺りを観るのも楽しいですね。
『リトル・ミス・サンシャイン』にTBとコメントありがとうございました。
わたしのコメントはこちらに残しますね。
英国作品は、好きな作品が本当に多いけれど、
中でも特に地味ながら、これはとても好きな1本で、
何度も観てしまいます。
わかっていても、ラストに浮かび上がる文字を観たいからなのかもしれません。
三姉妹とイアン・ハート、
それぞれが別の作品ではまた違う感じの役柄を多数演じていて、
その辺りを観るのも楽しいですね。
悠雅さま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
「特に地味」、本当にその通りなのですが、とても素敵な作品ですね。
大スターも出ていないし、涙と感動の物語でもないのですが、いつまでも心に残る映画だと思います。
ラスト、そうですね。。邦題もいいですね。
ああ、イアン・ハートについて書くのを忘れていました!
追記しようかしら。。彼も、とってもいい役者さんですよね。
これからも少しずつ、英国作品観ていきたいと思います。
ではでは~。
「特に地味」、本当にその通りなのですが、とても素敵な作品ですね。
大スターも出ていないし、涙と感動の物語でもないのですが、いつまでも心に残る映画だと思います。
ラスト、そうですね。。邦題もいいですね。
ああ、イアン・ハートについて書くのを忘れていました!
追記しようかしら。。彼も、とってもいい役者さんですよね。
これからも少しずつ、英国作品観ていきたいと思います。
ではでは~。
こちらにも。
監督&マイケル・ナイマンが好きなのでこの映画は観ました。ナイマン曲の効果というものもありましたよね。聞いているうちの、感情が揺さぶられました。新作があるのですね。楽しみ~~
ところで・・・ショートバスご覧になったのですね。
新種のスポーツという言葉に安心・・・。
色々言われていたから心配だったのよ・・笑
たぶん、DVDになろうかと思いますが
こっそり観たいと思います。
音楽はやっぱり良かったかな・・・。
監督&マイケル・ナイマンが好きなのでこの映画は観ました。ナイマン曲の効果というものもありましたよね。聞いているうちの、感情が揺さぶられました。新作があるのですね。楽しみ~~
ところで・・・ショートバスご覧になったのですね。
新種のスポーツという言葉に安心・・・。
色々言われていたから心配だったのよ・・笑
たぶん、DVDになろうかと思いますが
こっそり観たいと思います。
音楽はやっぱり良かったかな・・・。
2007-09-05 15:14 :
みみこ URL :
編集
真紅さん、こちらにもTBありがとうございました♪
素敵な作品ですよね。大好きです。
Wonderlandという原題も、『ひかりのまち』という邦題も素敵です。最後にWonderlandって文字が出てくると、言葉にできない余韻が残るんですよね~。
マイケル・ウィンターボトムの作品全てを観ているわけではないのですが、いい意味で職人質な監督だなぁ・・・って思います。
特に『24アワー・パーティ・ピープル』とか『めぐり逢う大地』とか好きですねー。でもこの作品がベストです♪
素敵な作品ですよね。大好きです。
Wonderlandという原題も、『ひかりのまち』という邦題も素敵です。最後にWonderlandって文字が出てくると、言葉にできない余韻が残るんですよね~。
マイケル・ウィンターボトムの作品全てを観ているわけではないのですが、いい意味で職人質な監督だなぁ・・・って思います。
特に『24アワー・パーティ・ピープル』とか『めぐり逢う大地』とか好きですねー。でもこの作品がベストです♪
みみこさま、こちらにもコメントありがとうございます。
両マイケルさんお好きなのですね♪ 音楽が本当によかったです。
最初の木曜にナディがバーから夜の街に出るところで、音楽にアレっと思わされたんです。
この映画、音楽で映像とは違う面が引き出されている感じですよね、内面が聴こえてくるというか・・。
新作は、アンジーがジェンから夫も主役もオスカーも奪うだろう・・とか言われているいわくつきの作品ですよ~。
でも、評判いいようですよ、楽しみですね♪
『ショートバス』、私には珍しく気合を入れて初日に行きました。
音楽、もちろんよかったですよ!でも今回は脇役に徹していた感じです。
DVDででも、是非ご覧下さいませね~。
ではでは!
両マイケルさんお好きなのですね♪ 音楽が本当によかったです。
最初の木曜にナディがバーから夜の街に出るところで、音楽にアレっと思わされたんです。
この映画、音楽で映像とは違う面が引き出されている感じですよね、内面が聴こえてくるというか・・。
新作は、アンジーがジェンから夫も主役もオスカーも奪うだろう・・とか言われているいわくつきの作品ですよ~。
でも、評判いいようですよ、楽しみですね♪
『ショートバス』、私には珍しく気合を入れて初日に行きました。
音楽、もちろんよかったですよ!でも今回は脇役に徹していた感じです。
DVDででも、是非ご覧下さいませね~。
ではでは!
sallyさま、こちらにもコメント&TBをありがとうございます。
ものすごく地味で静かな映画ですが、余韻があって素晴らしい作品ですね。
あのタイトルが浮かび上がるところ、ホントなんとも言えませんね。
監督の映画、この作品がsally様的にベストなのですか!
DVDの特典映像に、監督作品の予告編がたくさん収録されていました。
私は全然観てないので、これから少しずつ、観ていきたいと思います。
ではでは、またお伺いします~。
ものすごく地味で静かな映画ですが、余韻があって素晴らしい作品ですね。
あのタイトルが浮かび上がるところ、ホントなんとも言えませんね。
監督の映画、この作品がsally様的にベストなのですか!
DVDの特典映像に、監督作品の予告編がたくさん収録されていました。
私は全然観てないので、これから少しずつ、観ていきたいと思います。
ではでは、またお伺いします~。