ラテンの熱い血~『アモーレス・ペロス』
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 AMORES PERROS


バベルアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の長編映画デビュー作。
同じく『バベル』に出演しているガエル・ガルシア・ベルナル(クレジットはガエル・
ガルシア)
の長編映画デビュー作でもある。その他脚本・撮影・音楽も全て『バベル』
と同じメキシコ印。『バベル』でガエルの叔母役を演じたアドリアナ・バラッザも、
ガエルの母親役で出演している。東京国際映画祭はじめ、世界各国の数々の映画賞
を受賞した傑作。これは凄い。

 兄嫁を愛し、「二人で逃げる」ために闘犬賭博にのめり込むオクタビオ(ガエル・
ガルシア・ベルナル)
。売れっ子モデルと雑誌編集長、不倫カップルのバレリア(ゴヤ
・トレド)とダニエル
。犬を連れてメキシコ・シティをさ迷うホームレス、エル・チー
ボ(エミリオ・エチェバリア)。
全く接点を持たない彼らを巡る3つの物語が交差点で
交錯
し、時間軸をずらしながらそれぞれの過去、現在、そして未来が語られる。
過剰なまでの愛と流血、家族や恋人同士の衝突伝わらない思い、変わってゆく
人生
。それらの全てが手持ちカメラによる緊迫感あふれる映像と、荒削りだが骨太
で確かな演出によって描き出される。圧巻

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 オクタビオとスサナ、バレリアとダニエル、エル・チーボとマル。3つの物語の
登場人物たちは、互いに、または一方的に愛しながらも思いは空回りし、破滅、崩壊、
離別の運命
を辿る。彼らはそれぞれに「犬」を飼い、「犬への愛」を存分に表現する。
しかし、人間同士は分かり合えない。バレリアに与えられた運命は不倫の代償と
してはあまりに惨いように思われるし、エル・チーボが娘に最も伝えたかった言葉
は記録に残らず、過ぎ去った日々を嘆いてもどうすることもできはしない。

 驚くのはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥにとって、これが長編映画デビュ
ー作である
、ということ。スピーディなカーチェイスで一瞬にして観る者を物語に
誘い、2時間半の長尺をものともしない圧倒的な力が、映画全体に漲っている。

 そして同じように、ガエル・ガルシア・ベルナルにも驚かされた。映画デビュー作
にして、この演技、この存在感。若さと危うさが同居するオクタビオの報われない
熱情と、満たされない欲望
を表現し切っている!彼がこの作品以降、瞬く間に世界的
大スターとなったのも納得。狂おしく美しいが映し出す悲しみ、憎しみ、欲望全て
を映像に焼きつけてくれた撮影監督、ロドリゴ・プリエトに感謝

 そんなガエル・ガルシア・ベルナルの圧倒的存在感で魅せるオクタビオのエピソード
よりも強い印象を残すのが、初老の殺し屋エル・チーボ。かつて革命の志に燃えて家族
を捨て、夢破れ、世捨て人のような生活を送る彼の一挙手一投足から目が離せない。
この男は何を考えているのだ?何を望み、何をしようとしているのか。標的は簡単に
撃てても、たった一匹の犬の中に「殺し屋」である自分を見つけ、撃つことができない男。
その犬に名前を与え、道連れとして彼が荒野へ旅立つラストシーンは、崇高なまでに
美しい。

 犬や人間の流す夥しい量の血のために、この映画が観る人によっては耐え難い内容
であることは想像に難くない。そのことを差し引いても、メキシコの輝ける才能たち
が花開いた記念すべき作品
であることは間違いないだろう。

『アモーレス・ペロス』監督・製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
     脚本:ギジェルモ・アリアガ・ホルダン/撮影:ロドリゴ・プリエト
      音楽:グスターボ・サンタオラヤ/主演:エミリオ・エチェバリア、
        ガエル・ガルシア・ベルナル、ゴヤ・トレド/2000・メキシコ)
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[2007/05/29 22:56] | DVD/WOWOW | トラックバック(5) | コメント(14) |
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コメント
真紅さん、こんにちは♪
凄い作品ですよね~
観た当時は私にとっても、焼き付いて、しばらくは逃れられない…な作品でした。
ガエル君の天賦の才能も凄いですよね。
感想を書いておけば良かったと残念です。
>撮影監督、ロドリゴ・プリエトに感謝
分かります。私もよく監督たちに感謝したくなりますよ(笑)
早く『バベル』観たいです。
[2007/05/30 00:14] URL | fizz♪ #0HzTjQFo [ 編集 ]
fizz♪さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
公開時にご覧になったのでしょうか?私は2000年前後は映画とはかけ離れた生活をしていたので、見逃している作品が多いんです。
これもその一つだったんですよ。念願叶って観られてうれしいです。
『21g』は観たのですが、『バベル』と『アモペロ』を観た今、観てみたらまた違った観点が生まれるかもしれませんね。
『バベル』是非ご覧になって下さいませ~。
ではでは、またお話しましょう!
[2007/05/30 09:32] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは♪
いつもTB、コメントありがとうございます。

この作品は本当に傑作ですね。
犬を一つのテーマにして3人の種類の違う人間の生き様が、人間臭く生々しく描かれてて、
本当に心を動かされる作品です。
私にとってもベスト5に入る作品です。
また、こういう作品に出会いたいですよね。

ところで、いつも幣ブログに、TB、コメントして下さってありがとうございます。
で、こちらのLinkをお気に入り欄に貼らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
[2007/05/30 10:00] URL | non #FXbBe/Mw [ 編集 ]
nonさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
アレハンドロ監督はこの映画を三年間温めて完成させたということですが、本当に噂にたがわぬ傑作だと思いました。
ガエルくんのデビュー作ということでずっと気になっていたのですが、観ることができて本当によかったです。
ベスト5ですか!すご~い♪ 私はどうかな・・ベスト20には絶対入ります。10に入れてもいいかも?

え!お気に入りに入れていただけるのですか、うれしいです、光栄です、ありがとうございます!
私もリンクさせていただきますね♪
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ではでは。
[2007/05/30 10:09] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま~こんにちは!
私も2000年頃は、映画とか殆ど見れない不遇の時代(爆)だったので、ここ何年か前から、復活?色々見る様になりました。
この映画を見たのも、最近だし、きっと上映当時見ていたら、もっと衝撃的でインパクトも大きかったに違いないです。
この映画でのガエル君は、本当に輝いており、印象に残る演技だったと思います☆
[2007/05/31 09:12] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさま、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
おお、お互い冬の時代だったのですね・・(涙)
私もいろいろあって、映画どころではなかったです。
だから今、映画館のシートに座った瞬間、幸せだな~と実感できるんですよ。
で、この映画ですが、おっしゃる通り物凄いインパクトですよね。
ガエルくん、月並みな言い方ですが「鮮烈なデビュー」って感じですよね!
もう、上映当時観ていたら、大騒ぎしていたと思います、レオを初めて観たときくらい騒いでいたんじゃないかな。
(自分の中では、今でも十分大騒ぎなんですけど)
今後もガエルくんは注目ですね!未見の作品、どんどん観たいです。
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2007/05/31 09:32] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
 真紅さん、こんばんわ
「アモペレ」僕は3,4年前にDVDで見ました、イニャリトウ監督のことをメキシコのタランティーノと紹介していたので見てみようと・・・、(タランティーノも好きなんで)僕は映画を見終わった時、ストーリーより、これはいい映画、これはつまらなかった映画みたいな基準で記憶するんですが、もちろん「アモペロ」は凄い映画!でした、なるほどタランティーノみたいに衝撃的でした、ただちゃんと理解できなかったみたいです、特にあの殺し屋のところはよくわかりませんでしたね、ただ真紅さんの記事を読み、少し理解できたかもです、僕の中ではやはり、ガエルくんとイニャリトウ監督の素晴らしさだけは頭に焼き付いてます、また見たい作品です。
[2007/05/31 20:50] URL | イニスJr #- [ 編集 ]
イニスJrさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
私が観たDVDのパッケージにも、「メキシコのタランティーノ」って書いてありました!
当時はそういう呼ばれ方していたのですね。
「凄い映画」と思われた気持ち、わかりますよ~。
いいとか悪いとかを超えて、「これは凄い!」と思わせられる映画ですよね。
殺し屋の行動については、不可解な部分もありますね。でも私はあのエピソードが一番よかったです。
親子の話は『バベル』にも繋がりますよね。
私も、また観たいと思います、ガエルくんが輝いてますよね~!
ではでは、またお話しましょう~。
[2007/05/31 23:23] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは。
拙宅にコメントありがとうございました!
この作品、犬たちの猛々しさだけが印象に残っています。当時はあまりぴんとこなかったので再見するかもしれません。3話形式ってことさえ気づいてなかったような。
BBM以来、どんな映画を見ても難解だとは思わなくなりました(ほんまか?)、特典映像を見逃すなんて(涙)、プリエトさんも見たいです。

ではでは、このへんで。
[2007/06/03 18:40] URL | びあんこ #w4Ib0zSU [ 編集 ]
びあんこさま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
TBも送ったのですが、反映されなかったようで残念ですー。
さて。この映画、撮影と音楽はBBMと同じなんですよね。
やはりそういう事が意識にあるのと無いのとでは、映画に向かう姿勢も変わってきますよね。
長尺ですから気軽に観る、というわけにはいかないのですが、私も機会があれば再見したいと思っています。
BBMに出逢えて、本当によかったですね。。感謝、感謝です。
ではでは、またお伺いします!
[2007/06/03 19:30] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
この映画好きです。
なんか、生きるパワーというか、スキルというか、生々しくて濃いんですよ。だしが取れるくらい。
ガエルくんのラブシーンにはびっくりしました。
何て言うか、生々しくて濃いんで・・・・・・今でもあの目を思い出すと赤面します。
[2007/08/05 14:16] URL | 牧場主 #- [ 編集 ]
牧場主さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
私もこの映画には圧倒されました。ガエルくんもアレハンドロ監督もデビュー作とは凄いですよね。
メキシコって、あまり地域としてのイメージがないのですが、この映画は強烈でした。
ガエルくん大好きです、ちょっと背が低いんだけど・・・。
ではでは、またです~。
[2007/08/05 20:05] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんは。

>たった一匹の犬の中に「殺し屋」である自分を見つけ

というところ、そうだったのか!と膝を叩きました。単にやっぱり犬好きだから撃てなかったのかなと思ったわたしは映画の本質を理解していない(笑)。
エル・チーボのエピソードはしんしんとしたせつなさがあってよかったですね。強烈な個性と“動”のエピソードでぐいぐいひきつけられたオクタビオの話よりも、やはりなぜかこちらが印象深いです。
ラストシーンも本当に素晴らしかった。『バベル』のあのラストにも痺れましたが… 監督さん、上手すぎです。
TBこちらからも送らせてもらいます♪
[2007/08/30 20:01] URL | リュカ #- [ 編集 ]
リュカさま、こんにちは。ご無沙汰してました。コメント&TBありがとうございます。
いえいえ、本質を理解してないなんてことはないですよ!リュカさんのレビュー読み応えがあって好きです。
私も『21g』『バベル』と観て本作が最後だったのですが、これがデビュー作とは本当に凄い才能ですよね。
ガエルくんも鮮烈でしたし・・。でもエル・チーボのエピソードが一番じ~んと来ますよね。
私もこの監督の作品は追いかけたいと思います。ご一緒しましょうね♪
ではでは、またお伺いします!
[2007/08/30 22:28] URL | 真紅>リュカ様 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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