罪と罰~『マッチポイント』
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 MATCH POINT


 いわゆる「ニューヨーク派」監督であったウッディ・アレンロンドンに舞台を移し、
BBC製作で撮った作品。スカーレット・ヨハンソンのファム・ファタールぶりが
話題となった本作、私自身も久々のアレン作品鑑賞となった。

 アイルランド出身の元プロテニス選手・クリス(ジョナサン・リス・マイヤーズ)
高級会員制テニスクラブのコーチとなる。アッパー・ミドルクラスの御曹司・トム
(マシュー・グード)
のコーチとなったクリスは彼の家族ぐるみで付き合う仲となり、
トムの父の会社に就職し、トムの妹クロエ(エミリー・モーティマー)結婚する。
順風満帆に見えた彼の人生は、トムの婚約者ノラ(スカーレット・ヨハンソン)との
出会いから、少しずつ歯車が狂ってゆく・・。

 ウッディ・アレンの新たなミューズ、スカーレット・ヨハンソン。はち切れんば
かりのボディを誇示するかのように、上目遣いの視線も挑発的。彼女の美しさを際
立たせるためか、裕福な令嬢のはずのエミリー・モーティマーが地味すぎて気の毒
なほど。「物理的に」子どもを欲しがる姿が滑稽に描かれていて辛い。上昇志向の青年・
クリスを演じたジョナサン・リス・マイヤーズは、茫洋とした雰囲気の人だと思って
いると、うっかり足元をすくわれそうだ。

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 貧しい青年であったクリスは、上流社会に近づこうと様々な努力をする。オペラ
好きを装い、奢られるのを嫌い、ドストエフスキー
(正確には、ドストエフスキーの
ハウトゥ本)を読む。彼が読もうとした『罪と罰』を未読であるため、この物語の主題
を理解できていないかもしれないが、感じたことを書いてみたい。

★以下、ラストに触れます。未見の方はご注意下さい!★

 ラリーが行われているテニスコートで、ボールとネットだけが映し出されるオー
プニング。ボールはネットに当たり、向こう側に落ちれば勝ち、こちら側に落ちれ
ば負け。そしてそれはが決める--。ノラとの不倫関係が袋小路にはまったとき、
クリスが犯した罪はあまりに短絡的にも、計画性が欠けるようにも取れる。しかし
彼の人生観--勝敗は運が支配する--を考えれば、彼は後先考えず、一つの賭け
に出たのだと思えなくもない。

 この映画で最も印象的な、指輪が欄干の手前で落ち、観る者がクリスの「負け」を
確信
するスローモーションの場面。しかしその指輪は結局、クリスの運命を暗転さ
せることなく終わる。いや、一見クリスは「勝った」ように映るけれども、果たして
本当に、彼は「勝った」のだろうか

「金持ちの生活は癖になる」と言い、罪を犯してしまったクリス。彼はその「癖」と引
き換えに、悪魔に魂を売った。信仰を持たないと語ったクリスには「神に背く」という
意識はないかもしれない。しかし犯した罪を償えず、一生涯愛を知らず、血にまみ
れた肉欲の記憶に苛まれ続ける彼は果たして「勝った」と言えるのか。新しい家族の
誕生の喜びに沸く家族の脇で、一人物憂げに佇むラストの彼の表情が、全てを語っ
ているのかもしれない。

『マッチポイント』監督・脚本:ウッディ・アレン
     主演:ジョナサン・リス・マイヤーズ、スカーレット・ヨハンソン
                      2005・英、米、ルクセンブルグ)
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

[2007/05/21 09:13] | DVD/WOWOW | トラックバック(6) | コメント(12) |
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コメント
 真紅さん、こんばんわ
 「マッチポイント」は映画館で見ました、もう、ジョナサン・リス・マイヤーズの虜になりました、以前は写真で見る限り濃い顔ゆえ、あまり好みではなかったですが、この映画でファンになりました、セクシーだし、顔も役柄のせいか、下品ではなかった、むしろスカジョの方が下品でしたね(役柄は可哀相でしたが)一番印象的な場面は
クリスが悪魔に魂売った後にタクシーに乗ったあと泣きますよね、あのシーンがツボでした、ジョナサンも熱演!クリスは自分も可愛いけど、ノラのことも好きだから泣いたの?まあそれまでの葛藤の大きさに泣いてしまったんでしょうか?
ここの演技はグッときました、映画自体も好きです、こういう心理描写のしっかりしたサスペンス、映像や衣装もキレイでしたし、脚本も良かったです。
[2007/05/21 22:36] URL | イニスJr #- [ 編集 ]
真紅さん、コメントとTBをいただき、ありがとうございました。
私もTBさせて頂きました。
クリスの犯行の顛末は予想を越えた小気味いい裏切られ方でしたね。
その後のクリスの人生の方が監督の目論見といったところなのでしょうか?
『罪と罰』も主人公が恋人を殺してしまうそう…
さすがアレン監督なのでしょうね。
また機会があったらアレン監督の事、色々教えてくださいね。
ジョナサン君は『楽園をください』が私は好きでした(余談)
[2007/05/22 00:14] URL | fizz♪ #0HzTjQFo [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは。
そもそも人生に勝ち負けがあるの?という疑問は置くとして、
私たちの目から見るとラストにクリスの得た人生は
本当に彼が欲しいものだったの?と考えてしまう結末でした。
だって彼は1度たりとも心から笑っていなかったですものね。
でも「金持ちはクセになる」のね。
知らない世界だからこんなコトを言っているのかも、私。
[2007/05/22 07:47] URL | sabunori #JalddpaA [ 編集 ]
イニスJr.さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
私も映画館で観たかったのですが、こちらでは単館上映で断念しました。
ジョナサン、確かに濃いですね、一つ一つのパーツが大きくて、絶妙のバランスで男前が出来上がってる感じです。
私もあのタクシーのシーンでは彼の演技力を感じました。
クリスは、ノラに対して「愛」はなかったと思うんですよね・・。身体だけの関係だったと思います。
だからあの場面では、自分の犯してしまった罪の大きさに慄き、後戻りできないことに対する涙だと私は解釈しています。
彼は自分しか愛していないように見えました。寂しいことですね・・。
イギリスの上流社会が垣間見れてよかったです。おっしゃる通り、美術や衣装が綺麗でしたね!
上質の映画だと思いました。
ではでは、また遊びにいらして下さいませ~。
[2007/05/22 08:56] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
fizz♪さま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
この映画のレビュー、fizz♪さまの復帰(?)第一作でしたので、絶対観てからお伺いしたかったんです。
そうそう、あの指輪がああいう結末に至らしめるとは・・。
ちょっとオチが甘いかなとも思いますが、綺麗に裏切られましたね。
アレン監督作は十数本は観ていると思います。でも昔のものは記憶が曖昧だし、よく理解できてなかったと思います。
でも『カイロの紫のバラ』は印象的でしたよ。トライされたかな?
『楽園をください』、レンタルで探しているんですが未見です。
こちらこそ、またいろいろ教えて下さいね!ではでは~。
[2007/05/22 08:57] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
sabunoriさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
はい、今回はすんなりTBいただけました!毎回こうであって欲しいですね。
私も、クリスの人生って・・それでいいの?と疑問でした。
あの家族には根っから馴染めない感じでしたよね。
階級社会であるイギリスで、実際にああいうこと(ワーキングクラス→アッパーミドルクラス)ってあり得るのかな、とも思いました。
まぁ、まったく私にも関係のない世界ですが(笑)。
一度クセになってみたいですね~。
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2007/05/22 08:58] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
最近わたしも見ました。
ラストの主人公の表情はやっぱり幸せをつかんだ人間のする顔ではないですよね。
なんとも皮肉です。
あの指輪のシーンは白眉でしたね~…。
ヨハンソン嬢は『モンタナの風に抱かれて』の普通の少女のイメージが大きくて、最近のどの作品を見てもなんだか別人のように思えちゃいます。
[2007/05/24 23:26] URL | リュカ #- [ 編集 ]
リュカさま、こちらにもコメントありがとうございます。
あの指輪のシーン、どうやって撮ったんだろう?CG?とか考えてしまいました。
「勝った」ように思わせて、実は「負け」だという・・。なかなか一筋縄ではいかないウッディ・アレン、健在ですね!
『モンタナの~』は未見なのですよ。当時、ウチの母が「よかった~♪」と騒いでいたような(笑)
本当に、今観たらビックリするかも!?ですね~。。
ではでは、またお話に伺いますね~。
[2007/05/24 23:53] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは!
先日wowowで鑑賞したのですが、物凄く面白かったです。
好きな映画ってわけではないのですが、残る余韻が素晴らしく惹き込まれました。
クリスが勝ったのか負けたのか・・・監督がどう描きたかったのか分かりませんが、少なくとも勝ったわけではないでしょうねぇ~
あの後のクリスが精神的に崩壊していく様が見えるようです。全くバカな男でしたよね~
[2007/09/18 14:56] URL | 由香 #- [ 編集 ]
由香さま、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
wowowですか~、いいですね。レンタルいらず?
そうですね、好きな映画だとは言えないけれど、引き込まれて観てしまう作品ですね。
完成度もとても高いと思います。
巧く立ち回ったようでも、自分のしたことは自分に帰ってくるわけで。。
クリスは一生自分の犯したことを背負って生きるわけですからね。
辛い人生だと思います。。
後ほどお伺いしますね、ではでは~。
[2007/09/18 17:13] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん こんにちは!
マッチポイントのジョナサンもよかったです♪
本来ならもっとずるくて冷徹で野心満々な男が主人公でもよかったと思うのだけれど
一見普通のちょっとばかり上昇志向のあるキャラに設定したのが面白かったですね。

本当にスカーレット・ヨハンソンが美しく描かれていて、
監督の思い入れの強さがうかがえました(笑)
新しいミューズなのですね・・・・。

私もラストは本当に彼は賭けに勝ったのかどうか疑問です。
あのままうまく生活が続けていけるほど、
クリスは神経が太くないような気がしますしね。
余韻の残る終わり方が印象的です。
「タロットカード殺人事件」も見たくなりました。
では、またお邪魔いたします~!




[2008/06/29 11:12] URL | Minita #- [ 編集 ]
Minitaさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
この映画、DVDで観ましたけれどもとてもよくできている映画だと思いました。
さすが、ウディ・アレンというか・・・。
冒頭からラストまで、引き込まれて観ました。

スカ嬢は、あんな小悪魔的美女だったら誰でも深みにはまってしまいそう。。
私は、この役のジョナサン結構好きかもです。悪い奴だけど・・。

『タロットカード~』も面白そうですよね!
実は、一度レンタルしたのですが、ウチのレコーダーと相性が悪かったのか再生できなかったのです。
結局観られずに返却したのですが、今考えるとPCで観ればよかった!
ヒューさまも出てるし、いつか観たいです。
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2008/06/30 11:20] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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