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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

厳かで壮大な物語~『バベル』

20070508140357.jpg

 BABEL

 *内容に触れています*



 予告編が終わり、暗闇と静寂が戻ったスクリーンから風の音が聴こえてくる。
「あ!ブロークバック・マウンテンだ・・」 その次に聴こえるのはアコギの音では
なく、乾いた足音。モロッコの砂漠、幼い兄弟が追うのは羊ではなく山羊、ライフル
で狙うのはコヨーテでなくジャッカル。でもどこかで観たような映像、耳に馴染む音。
音楽がグスターボ・サンタオラヤ(オスカー受賞)だというのは知っていたけれど、撮影
がロドリゴ・プリエト、字幕翻訳が松浦美奈
氏だというのは知らなかった。鑑賞前は
体調不良報道などで少し身構えていたのだが、この映画に対する信頼感のようなもの
がこのオープニングで私の中に生まれ、映画の世界にすっぽりと入り込むことができ
たような気がする。重苦しく、いくつかの瑕疵はあるけれども、素晴らしい作品だと
思う。


 遠い昔、神に近づこうと天上高く塔を築いた人間は神の怒りに触れ、言語を分かた
れた。旧約聖書の「バベルの塔」の末裔たちを描いたこの映画はカンヌをはじめ欧米で
絶賛され、無名の日本人女優菊池凛子が各国の賞レースを賑わし、物語の舞台の一つ
である日本ではGWに満を持しての公開。監督は『21g』アレハンドロ・ゴンサレス・
イニャリトゥ。脚本はギジェルモ・アリアガ
。一発の銃弾が全てを変えるという設定、
アメリカ-メキシコ国境の抱える問題を描くところは彼の前作メルキアデス・エスト
ラーダの三度の埋葬
と重なっている。

 映画は3つの国の3つの物語から成り、時間軸をずらし、舞台を交錯させながら、
一本のライフル、一発の銃弾がモロッコ、日本、メキシコ(アメリカ国境)でそれぞれ
の登場人物に引き起こす悲運を描いてゆく。

20070508140502.jpg

 モロッコ、日本、メキシコと、どのパートも親子の物語であり、子を思いやれな
い親が描かれる。末息子を(おそらくSIDS、乳幼児突然死症候群によって)亡くし、
失われた夫婦の絆を取り戻すべくモロッコを旅するアメリカ人夫婦、リチャード(ブラッ
ド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)。
ブラッド・ピットの老けメイクに
驚き、ケイトの相変わらずの演技力に感嘆しながらも、子どもを置いて仕事でもな
く海外に出かける、という設定に納得できない。日本はナニーやベビーシッターに
子を預ける、という慣習がないため、どうしても違和感を拭えない。夫婦も傷つい
てはいるだろう、でも子どもたちも同じくらいか、それ以上に深く傷ついていると
思う。
弟と一緒でも、灯りを消しては眠れないほどに。そして彼らを「自分の子同然」に
育てた責任感の強い乳母アメリア(アドリアナ・バラーザ)の不運から、彼らは更
に辛い体験をすることになる。

 聾唖の娘チエコ(菊地凛子)との溝に孤独を深めるヤスジロー(役所広司)は「どうし
て喧嘩したがる?」と娘に問う。彼もまた妻の自殺によって傷ついているのは理解で
きる、しかしそれ以上に行き場を失っている娘を、この父はどうして受け止めるこ
とができないのだろう?
 チエコの奔放な行動は理解を超えている、という意見も
あるだろうことは想像に難くない、しかし彼女は予め音を奪われ、更には母という
居場所を失い、誰かに抱き締められたいという願望を性衝動と混同し、混乱してい
るのだと思う。
彼女はなぜ、いつもイラついているのか。それは「まだヤッてない」か
らではなく、母の死後、一度も泣いていないからではないだろうか。

 ライフルを与えられ、山羊飼いを命じられる兄弟にも悪意はなく、発砲はほんの
いたずら心からだった。もちろん許されることではない、しかし学校に行き、習い
事に通い、甘やかされ可愛がられる日本の子どもたちと違い、労働力として当然と
見なされる彼らが辿る運命が痛々しい。

 
「我が子同然」のマイクとデビー(エル・ファニング)を連れ、国境を越えるアメリア
は、暴走気味の甥サンチャゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)と飲酒運転で国境を越え
ることの危険を量れず、結局は全てを失う。「悪い事をしたわけじゃない、運が悪かっ
ただけ」
。アメリアのこのセリフが強い印象を残す。職を得て16年もアメリカで生活
しながら、不法就労で強制送還されてしまうという矛盾。このエピソードには監督
と脚本家の、アメリカに対する強い怒りを感じる

 菊池凛子の熱演が評価されたのは喜ばしいことだと思う(私にはどうしても高校生
には見えなかったけれど)。エル・ファニングがすっかりおしゃまに、そして実姉よ
りも土屋アンナに似て見えてしまったのは私だけか。その他、国境警備警察官役で
マイケル・ペーニャとクリフトン・コリンズ・Jrが出演していたのも密かにうれし
かった。

 血の赤、アメリアのドレスの赤、高層ビルに点滅する灯りの赤が心に残る。バベル
の塔のようなタワーマンションのベランダで抱き合う親子は、を取り戻すことが
できたのか。父の胸で、初めて泣くことができたチエコ。家族でさえも、触れ合う
ことなしには分かり合えない。エンドクレジットで我が子にこの作品を捧げた監督
は、家族の間にさえ存在する孤独や溝や痛みを、言葉だけの愛でなく、触れ合い、
抱き締めあうこと
で癒そうと伝えたかったのだろうか。この壮大な物語、もう一度
観たいと思っている。

『バベル』監督・製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
      脚本:ギジェルモ・アリアガ/撮影:ロドリゴ・プリエト/
      音楽:グスターボ・サンタオラヤ/2006・仏、米、メキシコ/
      主演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、菊池凛子)
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テーマ : バベル
ジャンル : 映画

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非公開コメント

真紅さん、こんにちは!
真紅さんにとって、印象深い映画だったようですね。
私は、残念ながらこの映画のメッセージを素直に受け取れなかったようです。
多分、映画のテーマである『届け、心』と映画のエピソードに、微妙なズレを感じてしまったからだと思います。
一つ一つのドラマは重厚で見応えがありましたので、機会があったら、もう一度鑑賞してみたいです。

ところで、リンクありがとうございます!
とっても嬉しいです~♪
こちらもリンクさせて頂きますね。
これからもヨロシクお願いします。
2007-05-08 16:01 : 由香 URL : 編集
由香さま、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
設定や描写にいくつか難点はあると思ったのですが、なかなか素晴らしい作品だと思いました。
もう一度観たいのは、「もっと前の方で観たい」せいもあります。
例の体調不良報道にビビッて、いつもなら前の方で観るのにかなり後ろで観たので←小心者

こちらこそ、リンクの件了承していただきありがとうございました♪
ただ、スペースの関係で後ろの★は省略させていただきました、ごめんなさい!
今後とも、どうぞよろしくお願いします♪
2007-05-08 16:43 : 真紅 URL : 編集
おやこ
真紅さん、こんにちはー。
親子の絆を取り戻せたということにつきますね。
メキシコ、モロッコ一家のパートは一見、無念の終わり方をしたような印象もあったのだけど、親子(家族)の繋がりという点では必ずしもそうじゃなかったなぁと今思い起こしました。
そして、グスターボ・サンタオラヤの音楽はやっぱりよいですよねぇー。
2007-05-08 20:00 : かえる URL : 編集
かえるさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
『サンシャイン2057』のエントリにもありがとうございました。
さて。確かにメキシコとモロッコの一家だけ「失われた」ラストのような印象を受けますが、アメリカと日本は予め失われていますからね。
アリシアは「全てを失う」と私も書いていますが、息子がいますから・・。
音楽は本当によかったです。『モーターサイクル~』また観たくなってきました。
その前に『アモペロ』ですね!
ではでは、またお伺いします~。
2007-05-08 21:30 : 真紅 URL : 編集
こんばんは。いつもTBとコメントありがとうございます。

賛否両論の喧しい作品ですが、
否の方はともかく、「賛」の方でも一人一人が違う視点で観て、違うことを主題と捉え、それぞれの心に思いを残している作品だと思います。
強い衝撃を受ける方があれば、真紅さんのように冷静な方もいて、
たくさんの方の感想を読ませていただくのが、とても興味深い作品でもあります。

『アモーレス・ペロス』、レンタルでは見つけられなかったのですが
昨年、BSなどでアン・リー作品が放送されたように、
今年もどこかで放送がないかと思っています。
2007-05-08 22:20 : 悠雅 URL : 編集
悠雅さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
鑑賞前、我慢して一切のレビューや批評を読まなかったのですが、開けてビックリ、こんなに評判が悪いとは・・。
驚きました。確かに、設定や描写が納得できない点はあると思うのですが、素晴らしい作品だと私は思いました。
そう、結構冷静にそう思いました(笑)。自分が気に入った作品が評判が悪いと結構落ち込む小心者なんですけど、今回不思議と冷静です。
本当に、観た方ひとりひとり、感じ方が違いますよね~。。そこがまた面白いんですけど。
『アモペロ』、ガエルくんのデビュー作ということでずっと観たいのです・・。
『21g』はまぁまぁ好きだったので、期待が膨らんでいます。
ではでは、また伺いますね!
2007-05-08 22:34 : 真紅 URL : 編集
こんばんは♪
好きな作品と言うわけではないのですが、とても心に残る作品です。
特に日本パートのヒリヒリする痛みはどうでしょう。
真紅さんがおっしゃるようにチエコはもしかして母亡き後一度も泣いていないのかもしれない。
そして泣けないわけは母の死の真相にも繋がっているかもしれませんね。
あの手紙の内容をチラっとしか見せないのは、想像の余地を与えたのでしょうかねぇ。
2007-05-08 23:58 : ミチ URL : 編集
真紅さん、こんにちは~☆
うん、うん!!最初の音楽、ブロークバックマウンテンか??と、一瞬私も思いましたよ。
私ね、この音楽担当のサンタオラヤさんだっけか?(いつまでたっても、名前を暗記出来ない難しい名前だわ~ ←私の頭が悪いだけか(^^;))の音楽が大好きなんですよ♪

内容は、色々思う処はあったものの、楽しく引き込まれて見ることが出来ました。
2007-05-09 09:16 : latifa URL : 編集
ミチさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
私も、大好きかと問われるとう~~ん、、という感じですが、とても真摯に作られた力作だと思います。
母の死の真相、チエコが刑事に渡したメモ、とても気になりますね。
DVDになったら一時停止して読もうとしてしまうかも?
細かい字で、たくさん書いていましたね。。
俳優さんたちには真相がわかっていて、その上で演技しているのかな・・と考えてしまいました。
またお伺いしますね、ではでは。
2007-05-09 10:37 : 真紅 URL : 編集
latifaさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
私も、この映画の製作陣の名前は憶えられません(笑)監督も、アレハンドロ以下略とか。
サンタオラヤさんの音楽、いいですよね~。2年連続オスカーゲットも納得です。巨匠と呼びましょうか。
この映画、私も引き込まれました。劇場で観ると、時間を忘れるので好きです。長尺が全く気にならないっていいことですよね。
またお話しましょう、ではでは~。
2007-05-09 10:38 : 真紅 URL : 編集
アメリカ
真紅さん、
自分も鑑賞後イロイロ考えてしまってる
映画で、今感想書き直すと違うモノになる
かもしれません。
書かれているようにアメリカに対する怒りみたいなものは感じます。(あと警察権力)
アメリアのエピソードは判りやすいですが、
事件の発端の銃はウインチェスターだし、
危険な国へ観光で来てるくせに、危険が迫ったら怒鳴り散らす、自分だけは助かろうとする・・
人ん家のナベを平気で使う(苦笑) 水を飲まず
ダイエットコーラが無いと不満を言うなど・・
そういう事を考えると映画のもうひとつの
テーマみたいなのが見えてくる気がしてます。
2007-05-09 12:49 : kazupon URL : 編集
kazuponさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
この映画って百人百様の感想があるだけじゃなく、同じ人でも観るたびに違った感想になりそうですよね。
私もあの部屋で都合よく洗面器型の鍋が出てくるところはちょっと・・でした。
主な製作陣が皆メキシカンだから、きっとアメリカの傲慢さは意図して描かれていると思います。
建前上は不法就労者は強制送還だけど、彼らがいないとアメリカの経済が成り立たないって歪んでますよね。
少し先になると思うのですが、やっぱりもう一度観たいなと思います。重いけど。
また伺いますね、ではでは~。
2007-05-09 13:55 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、コメ&トラバアリガトです。
かなり手厳しい批評も多い映画です。
チエコの暴走振りだけをクローズアップする
メディアも多いのですが、
日本人としては、日本のシークエンスが
一番理解できたし、印象に残っています。
再見のレビューを上げたら、
またお邪魔しますね。
2007-05-10 00:40 : TATSUYA URL : 編集
真紅さん TBとコメありがとうございました!
そう言えば、赤の色が印象的に使われていましたね。
派手な作品ではないけれど、人間の奥深い部分を取り出して描ききったところがとても心に残りました。
真紅さんは再鑑賞されるのですね☆
私もDVDでもう一度ゆっくり鑑賞して噛みしめたいです♪
2007-05-10 08:58 : なぎさ URL : 編集
達也さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
私も、この映画を否定的に捉える方が多くて驚いています。
東京にもクラブにもタワーマンションにも縁がない私ですが、描かれ方に違和感はあまりなかったです。
チエコの行動を「過激」とだけ捉えられるのは残念ですね。
再見されて、レビューされるのですね!楽しみに拝見させていただきます。
私も是非もう一度観たいと思います。ではでは。
2007-05-10 13:49 : 真紅 URL : 編集
なぎささま、こんにちは。コメントありがとうございます。
メキシコでのパーティの後の椅子も紅白でしたね。
4つの国で、異なる言語を使用したこのような壮大な物語をまとめるには、相当な力が必要だと思います。
欧米では評価されているようですから、監督の苦労も報われたかな?
再鑑賞、できたらいいんですけど・・。私も噛み締めたい!
ではでは、また伺います~。
2007-05-10 13:50 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんにちは。「バベル」日本での評判は良くないようですが、世界的には大ヒットです。世界で1億数千万ドル稼いでるみたいです。

この映画で、サンテグジュペリの「星の王子さま」のエピソードを思い出しました。キツネが王子さまに言う台詞です。「最初はお互いちょっと離れて座る。俺は君を目の隅で見るようにして、君の方も何も言わない。言葉は誤解のもとだから。でも、毎日同じ時間に少しずつ近くに座るようにして行けば、幸福ってのがどんな事なのかよく分かる」人は言葉ではなく、人間の根源的な繋がりを強く求めていて、その根源的な繋がりはどうやって築かれるものなのか……そこに愛がある……。

「バベル」の登場人物たちはお互いの人生に影響を及ぼし合っていますが、彼らは自分たちが影響し合い、繋がっている事を知りません。この映画では「星の王子さま」で描かれている「繋がり」から次元がもう一つ飛びます。それは、人はただ生きているだけで人と繋がっていて、人に影響を及ぼしているという事です。心さえ失わなければ、本来人間はただ生きているだけで、人を愛する事も出来れば、許す事も、認める事も出来る存在なんだ。この映画はそう言っている様に思え、特にチエコのラストシーンは心が震えました。このシーンはまさに、先のキツネの台詞が描かれているとこだと思いました。
ではでは。
2007-05-12 07:00 : horiken URL : 編集
horikenさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
この映画、制作費が100億円かかったと聞いたのですが、回収は十分できそうですね。
日本での評判の悪さは想定外だったかもしれませんけれど・・。

『星の王子さま』、偶然ですが私も少し前に池澤夏樹さんの新訳で再読したところです。
内藤濯さんの訳より、かなり大人向けに訳されていると感じました。
村上春樹が「翻訳には賞味期限がある」と言っていますが、確かにそうかもしれない、と私も思いました。
「飼い慣らす」っていう表現に違和感があったのですが、内藤氏の訳からそこは変わっていないんですよね。
『星の王子さま』も、『バベル』と同じように親子の愛について考えてしまったんです。
「飼い慣らしたら、責任が生まれる」っていうところに。

言葉を分かたれても、人は確かに根っこのところでは繋がっているはずですよね。
自分が生きているだけで、誰かに影響を及ぼしている・・。
「僕のした単純作業が・・」っていう桜井和寿の歌声が聴こえてきそうです。
チエコのラストシーンは、ヤスジローとチエコはお互いを許し、認め合えたのですよね。
ただ生きているだけでいい、心さえ失わなければ。これは非常に重い言葉ですね。
「大切なものは目には見えない、心で見ないとね」まさしく、映画を観るときもそういう気持ちでいたいです。
ではでは、また遊びにいらして下さいませ。
2007-05-12 21:47 : 真紅 URL : 編集
こんばんは。TBありがとうございました。
観終わってからいろいろ考えてしまう映画でした。
感想も人それぞれで、評価も様々。
いろいろな見方ができるのかも知れませんね。

ところで「アモペロ」、機会があったら是非観てみてくださいね。
私は「バベル」より、熱くて好きかも…。
2007-05-14 22:35 : mambotaxi URL : 編集
 真紅さん、こんばんわ
 「バベル」は1月に前売りを買い楽しみに初日に六本木ヒルズに行きました、前列から2番目の超見にくい席だった為、もう1度映画の日に見に行きました、1回目の時は期待どうりではなかったんですよ、もっとブラピやガエルが出てるかな~って・・・、そうしたら菊池凛子やメキシコ人のアメリアの方が印象的でした、ブラピやガエルやケイトは少しおまけ?的な感じがしまして、でも2日目見たらやはりいい映画かな?って気がします、イニャリトウ監督は好きで「アモペロ」も「21グラム」も見たんですが、結局僕にはきちんと理解できてないんですね、ただ「アモペロ」は衝撃的でした(監督のことはメキシコのタランティーノって紹介されてました)これでガエルのファンになってしまいました、、
 本編はやはり菊池凛子とアメリアとモロッコの少年たちを監督は描きたかったんだと感じます、特にアメリアはすごく不運な運命でそれをアドリアナ・パラーザはすごくうまく演じてたと思い
ます、菊池凛子も聾唖の女性をうまく演じてた、真紅さんが言われた母親のことが消化されてないというのはなるほどと感じました、でも言葉が通じなかったり、それだけで扱いがひどい男の子の仕返しにノーパンになるなんて強い女性ですね、またメキシコやモロッコ編にはアメリカに対する皮肉みたいのも垣間みえますよね、 
 僕もまた見てみたい、もっと監督と作品を理解したいです
2007-05-15 00:16 : イニスJr URL : 編集
mambotaxiさま、こちらにもコメントとTBをありがとうございます。
貴宅にはTBのみで失礼しました。
この映画のように賛否が割れる作品は、やはり力があるんだと思います。
映画は観客に観られることで完成すると言いますし、評価が人それぞれなのはとっても正しいことですよね。
皆が右へ倣え、ではよくないですよね。。
『アモペロ』、行きつけ(?)のレンタルで発見したので、近々観ます!
楽しみです♪ ではでは、またお伺いしますね~。
2007-05-15 09:39 : 真紅 URL : 編集
イニスJr.さま、こちらにもコメントありがとうございます!
初日に六本木ヒルズ・・。芸能人に会いそうですね、ホリエモンとか(笑)
確かに、日本パートとメキシコパートが印象的でしたね。
トップクレジットはブラピですけど、やはり菊池凛子とアドリアナが印象に残ります。
僕にはきちんと理解できてない、とおっしゃっていますが、そんなことないと思いますよ。
言葉でわかったように批判したり、上っ面をなぞることよりも、映画を観て何かを深く感じ、その「感じたもの」が何なのか、心に抱え続けるほうがずっと大切だと思います。
たとえうまく言葉にできなくても。
一度観ただけでわかったような気持ちになることよりも、「もっと監督と作品を理解したい」と感じることのほうが重要だと思います。
イニスJr.さまの言葉を聞いたら、アレハンドロ・・監督も喜ばれるのではないでしょうか。
私は『天国の口、終わりの楽園。』という映画でガエルくんを好きになりました。気になる俳優さんですよね。
『アモペロ』レンタルで発見したので近々絶対観ますね!わ~い♪
ではでは、またお話しましょう!
2007-05-15 09:58 : 真紅 URL : 編集
久しぶりの重い映画に少々疲れ気味ですが、
「良い映画」でした。
ブラピが、ブラピであることを忘れるくらい、
内容先行の映画で、わざわざ映画館に出向いてよかったと思えます。

この映画のメッセージを考えると
頭の中がこんがらがってしまいます。
「世界は、分かり合えるのか」いや、
「結局分かり合えないのか」と。。。

ようやく救助ヘリが来た後、リチャードからの
お礼金を、ガイドの彼は丁重に断ったとこなんか、この2人は、国の違いを超えて、共感、協調し合えた場面で印象的でした。
だけど、国レベルでは、政治的思惑がどうのこうの、、、と騒いでる。。
個:個では、理解しあえているのに、塊になると
そうでないこの世の中。

チエコが最後に真宮刑事に渡したメモは、
私もものすごく気になるの。
あのメモには、ものすごくしょーも無いことが書かれていて、読んだ真宮が愕然としてしまっている、、、もしくは、
チエコたちの半ば狂った遊び方が
克明に記されている。。。か、だと想像します。
真宮も過激なチエコを目の前にして、
一瞬、その罠に甘えそうになっていた天罰でしょうか。私はそう思う。

人と分かり合えるのか、と共に
自分の犯してしまったほんの些細なミステイクや後ろめたさを自分で見逃すな!と
言われているような気がしてならなかった、
そんな見終わった直後の感想です。



2007-05-16 15:18 : くっち URL : 編集
くっちさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
映画館に行かれたのですね。この映画、かなり毀誉褒貶の激しい作品ですが、「良い」と感じられて私もうれしいです。

「頭の中がこんがらがってしまう」というの、私もわかりますよ。
登場人物が数人のわかりやすいストーリーじゃないし、「あの場面はあそこに繋がっているのかも・・」などと考え出すと止まらないですね。
でも、この映画が言いたいのは「世界は分かり合える」という肯定的なメッセージだと思いますよ。

そうそう、あのガイドさんがお金を断るところ!私は「え~!自分だったら絶対受け取るわ・・。鍋も買い替えなあかんし」などと思いながら観ていました(笑)。
個人対個人なら容易いことが、もっと大きなレベル(国とか、集団とか)になると難しくなるのは変えがたい事実ですね。
でも、個人対個人では分かり合えるんだ、というところに監督の託した希望も感じられます。

あのメモは、しょーもないことは書かれてないと思うなぁぁ(笑)
私は、母の死に関して、何らかの真実が書かれていると思いました。
でも、どういう観方をしても自由ですからね。監督に聞いてみたいですね。
菊池凛子はあのメモの内容わかって演技しているのだよね・・、彼女に聞いてもいいかも。

人間は、生きているだけで罪な存在かもしれませんね。
自分で壁を作っておいてその壁を嘆くようなことのないように、生きていきたいと思いました。

率直な感想、ありがとうね。ではでは、また遊びに来て下さ~い。
2007-05-17 09:44 : 真紅 URL : 編集
この映画は2000万ドルくらいの低予算映画だったはずです。それでも日本映画からしたら大作ですが(笑

日本での評判の悪さの原因の一つは、映画の肝となるパートの舞台が日本だからだと思います。なんであのシークエンスが日本を舞台にしたかと言えば、それはもう日本は白人社会じゃないという事、又、制作者たちの身近な存在ではないからってのが一番の理由だと思います。「顔も言葉も文化も何もかもが違っても、自分たちは同じ存在なんだ、同じ人間なんだ、繋がってるんだ、だから分かり合えるはず」って事を伝えるには、映画のメッセージを一番分かりやすく伝えているチエコのエピソードを白人社会や、アメリカ、ヨーロッパ、その近隣の国にしちゃ不味いと思うのです、この映画はアメリカ映画ですから。ですが、不幸な事に日本人は当たり前に日本人が身近なんですよね。

自分で壁を作っておいてその壁を嘆く事のないように……。凄く胸に響きました。今では人は社会や周りの人間を無意味に怖がってしまい、人間の優しさを信じられなくなっています。人の優しさを信じられなくなったら行き着く先は孤独ですから、そんな孤独に耐えられない人間は罪を犯してしまい、また人は人を怖がり始める。この連鎖を止めるために必要なのは、こんな恐ろしい事件が起きたという警告ではなく、何かしらの希望なんだと思います。

「翻訳には賞味期限がある」私も、ある種の本はそうだと思います。特に村上春樹の小説の様な文章、又は彼が翻訳している海外小説の様な文章の場合は特に。語り口調と言いますか、ああいうのは言葉や口調に時代性が出てしまうので、時が経つと古くさくなってしまうんですよね。でも、例えばマイケル・カニンガムみたいな詩的な表現の本とか、情景描写の優れた本とかの翻訳は、余り古くさくならない様な気がします。表現が古くさくなっても、詩や優れた情景描写はやっぱり美しいんですよね。それにカニンガムの本の翻訳は素晴らしいですし、何度読んでもカニンガム素敵です(笑)
長々と失礼しました。
2007-05-17 18:10 : horiken URL : 編集
こんにちは。
私はこの映画に選ばれなかったようです(v_v。)
希望の光が見えませんでした。
広々とした風景に甲高い楽器の音。
確かにブロークバックマウンテンを彷彿しました。

ブラピも素敵だったけど
(老けメイクだったんですか?)
ガエルくんの笑顔が素敵すぎでした。
坂本龍一の「美貌の青空」もよかったな。
私のダラダラした感想、TBさせていただきますので
よろしくお願いいたします。

2007-05-17 19:29 : miyuco URL : 編集
horikenさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
チエコのエピソードの舞台になる国からはブーイングが起こる、と製作側がわかっていて日本を舞台にしたのだろう、ということなんでしょうか?
確かに、チエコの奔放な行動に反発している方は多そうですね。
女性より男性のほうが拒否反応を示しているような気がするのですが、男性はチエコの行動が理解不能なのかな・・などと思ってしまいます。
かく言う私も、理解できているか自信はないのですが。

 そうですね、人と人とは繋がれるという希望と、あとは信じる心が必要なんだと思いました。
人を「国」、罪を「戦争」とも言い換えられそうですね。

 確かに、村上春樹の小説のコンテンポラリーな部分は古びていくかもしれませんね。
でも私は彼の作品はきっと日本でも海外でも古典になり得ると思っています。海外での翻訳事情はよくわからないのですが。
カニンガムの翻訳は『この世の果ての家』は素晴らしいと思うのですが、『めぐりあう時間たち』はあまり好きじゃなかったです。
ちょっと堅すぎる感じを受けました、カニンガムの詩的な文章の「流麗な」ところが感じられませんでした(原書を読んだわけではありませんが、そう思ったんです)

 映画も文学作品と同じく、何度観返しても飽きない、新たな視点や感動が生まれる作品が古典となり得るのですよね。
『バベル』が古典となり得るかどうかはわかりませんが、少なくとも再見する価値はある作品だと思っています。
またお話しましょう、ではでは。
2007-05-17 20:54 : 真紅 URL : 編集
miyucoさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
TBは残念ながら届いていないようです。後ほどこちらからトライしてみますね。
さて。う~ん、選ばれませんでしたか~、残念!
この映画、日本パートで終わっていますが、チエコと両親の間に何があったのかを故意に語っていないため、確かに消化不良の感は否めませんね。

ブラピのあの目の下の皺は、絶対メイク!だと思いますよ~。
そうそう、この映画ガエルくんがとっても素敵でしたよね♪
彼の弱点(と私は思っている)、上背のなさもわからなかったし。
坂本龍一の音楽は、どこに使われていたのかわかりませんでした。
彼は世界のサカモト、まさしく巨匠ですね。
ではでは、後ほどお伺いします~。
2007-05-17 20:56 : 真紅 URL : 編集
ようやく観てきました。

>どうしても高校生には見えなかった。
よかった、私だけが思っていたことじゃない!!
私も、同じことを考えていました。
外国の人から見ると、気にならないのもしれないけれど。

映像と音楽が本当に良かったけれど、
ブロークバック・マウンテンのコンビなんですね(パンフ見て知りました)
モロッコの岩場の空の映像が好きです。
2007-05-17 22:09 : raum18 URL : 編集
raum18さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
ご覧になったのですね。堪能されましたでしょうか。
そうなんですよね、凛子さんやはり高校生演じるには無理がありましたね。
しかしあの役は10代の女の子が演じるのは難しいでしょうね。

カメラと音楽は、今やハリウッド最強コンビですね。
BBMのコンビだというのは、私も観てから知ったんです。
モロッコの空、確かに印象的でした。
ではでは、また遊びにいらして下さい~。
2007-05-18 02:45 : 真紅 URL : 編集
真紅さん~~

やっと鑑賞しました。
見終わったあとより、数日経つと
じわじわくる作品でした。
チエコの行動・・たしかに疑問感じました。
でも真紅さんのように理解すれば
多少なりとも納得できそうです。
高校生には・・見えませんでしたよね・・笑
私はあの刑事さんも良かったと思うのですが・・
ちょっと素敵・・。

音楽は素晴らしかったです。
ブラッド・ピットはちょっと汚れた感じのほうが・・笑・・好きです。
ではでは。
まとめて色々カキコしてごめんね~~
2007-05-20 08:10 : みみこ URL : 編集
みみこさま、こちらにもコメント&TBありがとうございます。
たくさん読んでいただいてありがとうございました。
確かに、鑑賞直後から数日はいろいろと考えてしまう作品ですよね・・。
チエコの行動にしても、監督が意味もなくああいった描写をするわけがないと思うので、いろいろと考えてしまいました。
あの刑事さん、日本ではあまりお見かけしない方ですよね。
菊池凛子さんもそうですが、無名でもいい俳優さんはたくさんいるのだな・・と思いました。
ブラピは素敵だとずっと思っていますが、ファンになったことはないのですよ。
男前過ぎて演技が評価されなくて、ちょっと気の毒ですね。
ではでは、のちほどお伺いしますね、たくさんのコメント&TB、ありがとうございました~。
2007-05-20 10:42 : 真紅 URL : 編集
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