小さな、愛すべき佳作~『ウェールズの山』
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 THE ENGLISHMAN

 WHO WENT UP A HILL

 BUT CAME DOWN A MOUNTAIN



 敬愛するブログ仲間(と勝手に思っている)の皆さまが、口を揃えて「大好き!」とおっ
しゃる本作。ヒュー様のファンと言いつつ、皆さまの記事を読むまで恥ずかしながら
この作品の存在を知らなかった。最近読んだ映画評論家・双葉十三郎氏『外国映画ぼく
のベストテン50年』
にもこの作品はランクインしており、1996年の第8位であること
を発見(ちなみに第2位はアン・リー『いつか晴れた日に』)。いつか観たいと思って
いた本作、ラブソングができるまでで先日「生涯一ラブコメ職人」に認定したヒュー・
グラント
の若き日を観てみることにする。

 1917年、第一次大戦で疲弊する英国はウェールズ地方の小さな村に、二人のイング
ランド人
がやってくる。二人は村の象徴である「フュノン・ガルウ」という山を測量し、
山と認定するには6メートル高さが足りないと言う。村の誇りである山を「丘」と言われ
ては後世の恥とばかりに、村人たちは一致団結、「丘」を山にしようと奮起するが・・。

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 長い長い原題「丘を登ったのに山を降りてきたイングランド人」の所以は、観てのお楽
しみ。先日観たキンキー・ブーツや一連の英国映画同様、本作も「小さな映画」であり、
コミカルでありながら心温まる佳作に仕上がっている。正直、これほどの素晴らしい
作品がこれほどマイナーなのは、ひねりもウィットもない邦題に一因があるのではな
いだろうかと思う。いや、「英国映画」と言ってしまうと「これはウェールズの映画だ!」
と村人たちに怒られてしまうだろう。

 イングランド人測量技師アンソンを演じたヒュー・グラントがいい。この映画の彼
は、気弱で人のいい、実直な英国紳士。2・8分けの髪型が少し微妙だけれど、村人
たちの企みを察しながら、気付かぬ素振りで成り行きを楽しんでいる様子を、抑えた
演技
で微笑ましくみせてくれる。奮闘する村人たちもそれぞれ個性的で愉しい。好色
モーガン(コルム・ミーニイ)
をはじめ、この映画の真の主役は彼らと、彼らが愛した山
「フュノン・ガルウ」であるだろう。

 そしてこの映画は、極々控えめではあるけれども反戦映画でもあると思う。「どうして
戦争に行かないの?」というベティ(タラ・フィッツジェラルド)の問いに対するアンソン
の答え。心を病んだ帰還兵ジョニー(イアン・ハート)。「戦争から帰れぬ若者たちの
に山を捧げよう」と敬虔な村人たちを鼓舞する牧師の説教には涙が溢れる。ウェールズ人
としての誇りを持ち、故郷とその土地を愛する素朴な人々。黙々と土を運び、再測量
の結果に喜ぶ彼らに、観ているこちらも胸がいっぱいになる。

 緑溢れるウェールズの村の美しい風景、とりわけフュノン・ガルウ山の夕景が息を
呑むほど素晴らしい。弔いの炎、山の朝焼け、耳に残る音楽とともに、忘れられない
作品
となった。紹介していただいた方々に感謝します。

『ウェールズの山』監督・脚本:クリストファー・マンガー/主演:ヒュー・グラント、
          タラ・フィッツジェラルド、コルム・ミーニイ
/1995・UK)
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[2007/05/05 23:37] | DVD/WOWOW | トラックバック(2) | コメント(8) |
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コメント
真紅さん、こんにちは。ご覧になりましたね~♪

きっと気に入られると思ってました。これは隠れた名作です。
邦題、あまりにストレートだと確かに思うのですけど、
ウェールズの「山」であることが、内容の最大の反映と主張かもしれないとも思ったり。

教会を中心にした人のつながりや、
あの時代だからこその、フュノン・ガルウに託す強い思い。
素朴で個性的ですっ呆けてばかりいる村人たち…
シェル・ショックのアンソンには、きっと別天地だったことでしょう。
同じく、シェル・ショックのジョニーの存在が光ります。
イアン・ハートは、英国作品ではいつも、いい役柄で登場するのですが・・・

語り始めたら長くなるので、この辺にしておきますね。
[2007/05/06 11:01] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます!
そうなんですよ~、やっと観ましたがとっても気に入りました♪
これはホント、いい作品ですね。。
あの状態、「シェル・ショック」と言うのですね・・。
イアン・ハートを意識して観たのは初めてかもしれません。
これから注目して観てみますね。

本当に、語りだすと止まらなくなるかもしれません(笑)
物凄く壮大なドラマが起きるわけでも、めくるめくラブ・ストーリーが展開されるわけでもないのに、ずっと心に残る作品だと思いました!
ではでは、またお伺いします~。
[2007/05/06 16:38] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま、こんばんは~♪
連休はいかがでしたでしょうか。(私は、オット実家にて嫁稼業に燃えた?GW後半でございました^^;)
TBとコメントをいただき、ありがとうございました。
私もこの作品は大好きでした。役者さんたちも適材適所でとてもよかったですね。
来週にはヒューさん&ドリューを観に行けたらいいのですけど・・・
また、お邪魔させてくださいね☆
[2007/05/06 22:08] URL | 武田 #qs0owOX6 [ 編集 ]
真紅さん今晩は
僕もことある毎にこの映画を紹介してきたので、この映画を観て良かったという人が現れると仲間が増えた気持ちになります。
おっしゃる通りイギリス映画には、「シャンプー台の向こうに」とか「キンキー・ブーツ」といった小粋で愉快で洒落た小品がたくさんあると思います。こういう作品にもっと出会いたいと思います。
ストーリーを別にすれば、牧師を演じたケネス・グリフィスと”Morgan the Goat”を演じたコルム・ミーニーがとりわけ印象に残っています。倒れた牧師さんを村人が囲んで祈りを捧げるシーンは感動的でしたね。あの「好色モーガン」が心から彼の死を悼んでいる。
「タラちゃん」ことタラ・フィッツジェラルドは「ブラス!」とは違ってやや妖艶な感じが出ていました。最近姿を見ないけれど、どうしているのでしょうか。大好きな女優なので気になります。
反戦映画という捉え方はさすがですね。その点はすっかり忘れていました。そしてあの美しい山の風景。また観たくなってきました。
[2007/05/07 00:55] URL | ゴブリン #2YYP0Fkg [ 編集 ]
武田さま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
GW、お疲れ様でした(涙)。私は何と言うこともない連休でございました。
この映画、武田さまが昨年旧宅でレビューされてから、ずっと気になっていた作品でした。
やっと観ることが叶ったのですが、やはり、期待に違わぬ良作でした!
最近DVDを観ても、なかなか感想が書けなくて・・。
『夜よ、こんにちは』も実は最近観たのですが、もう一度観たいと思いつつそのままです。
『ラブソング~』、元気になれますので是非ご覧下さいね!
こちらこそまたお話したいです。ではでは~。
[2007/05/07 16:57] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
ゴブリンさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
この映画お好きなのですね!お仲間ですね~♪
最近、イギリス映画っていいなと本当に思っています。小品ですけれどもユーモアがあり、心が温かくなるような良作が多いですね。
牧師さん、私も印象に残りました。説教の場面は名演技だったと思います。
あの弔いの炎も忘れがたい印象を残しますね。
ベティは「タラちゃん」ですか、かわいいですね(笑)
DVD、買ってもいいと思うくらい気に入ってしまいました、安いですし・・。
と言うか、DVDって全部¥1500くらいになってほしいですよね。
手元に置いて、何度も観返したい作品だと思いました。
ではでは、またお伺いしますね。
[2007/05/07 16:58] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
お久しぶりです、真紅さん。
この場に出てくるには、どうかと思うほど、
映画オンチな私ですが、久々に来たわよー、ビビっと。
先日、夜中に「アクターズ・スタジオ・インタビュー:××××が、自らを語る」とかっていう番組が
やってたから、(結構この番組に出くわすことが
あるんだけど)何気に見始めたの。
インタビューされる俳優は、「ヒュー・グラント」。
彼のその聡明さと、ユーモアと、ちょっと意地悪な感じと、そして時々見せる笑ったときの目。。
一気に惚れちゃいました。

だから、ここにやってきたのです。
何から見たらいいっすかぁ?
今やってる「ラブソングができるまで」?
やっぱり「ウエールズの山」?
[2007/05/08 21:29] URL | くっち #lfkct2pI [ 編集 ]
くっちさん、お久しぶりね~♪ コメントありがとう!
とかげ?イモリ?大変だったね(笑)
さて。『アクターズ・スタジオ・・』観たのね!私ももちろん録画してるよ、そして当然永久保存♪
えーと、もしかして彼の映画は一つも観たことがないのかな・・。
じゃあ、時間あったら今上映中の『ラブソングができるまで』を映画館で観て下さい。
で、気持ちが継続してたらレンタルで『ウェールズの山』を観るのもいいし、『アバウト・ア・ボーイ』もいいし・・。
『ラブ・アクチュアリー』と『ノッティングヒルの恋人』はDVDがあるので、もし今の気持ちが続いていたら今度会うときに貸すね。
もし「すぐ観たい!」なら送るよ(笑)
とは言うものの、私もコンプリートしてるわけではないのですよ。
またお勧めあったら語るわ!延々と。
この間、オペラ座公演NHKでやってたね。もちろん、DVDに落としました。
というわけで『ラブソング~』、是非観て下さいませ~。
[2007/05/08 21:45] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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ウェールズの山
The Englishman Who Went Up A Hill But Came Down A Mountain1917年、ウェールズの村にイングランドの男がやってきた。
[2007/05/06 10:44] 悠雅的生活
ウェールズの山
『THE ENGLISHMAN WHO WENT UP A HILL BUT CAME DOWN A MOUNTAIN』1995年イギリス初見。うわぁ、なんて素敵な物語でしょう。大好きです  &quot;Cymru am Byth&quot;!!『コールドマウンテン』と一緒に「お山」つながり・・と思って借りたのですけど、大正解でした。ヒュー
[2007/05/06 22:02] 終日暖気
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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