善と悪が出会うところ~『オール・ザ・キングスメン』
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 1950年代、アメリカ・ルイジアナ州の片田舎から、貧困層の味方として知事の座に
ついた清廉な男が、権力を握ったことでに染まってゆく。彼の側近として仕える元
新聞記者が見た、善と悪、理想と現実、権力と腐敗が混然一体となった政治の裏世界
を描く重厚なドラマ。知事ウィリーショーン・ペン側近ジャックジュード・ロウ
が演じ、ケイト・ウィンスレット、アンソニー・ホプキンスら豪華キャストが脇を固
める。ジェームズ・ホーナーの重厚な音楽も印象的。原作は実話に基づく、ロバート・
ペン・ウォーレン
のピュリッツァー賞受賞作。

 冒頭からジュード・ロウ=ジャックのクローズアップ、ナレーション。主役は知事
ウィリーということになってはいるけれど、これは完全にジャックの物語だった。
ジュード目当てで劇場に足を運んだ身としてはそれでも構わないのだけれど、映画と
してはどうなのだろう? 原作は未読だし、1949年に製作されたという同じ小説の
映画化作品も観ていない。予備知識なしで観たためか、ちょっと余裕がなかったかも
しれない。字幕を読み、ストーリーを追うのに忙しかった。

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 ショーン・ペンは相変わらず巧い。彼は目が独特、何も映していないようで、全て
見通しているような不気味な目をしていると思う。演説シーンのカリスマぶりもさす
が。しかし、理想に燃えていた彼がどうして汚職に手を染めたのか、酒を飲み、手当
たり次第に女に手をつけるようになったのか、その辺りの内面描写がないため、彼が
ただの小悪党に見えてしまう。ケイト・ウィンスレットとマーク・ラファロ兄弟の行動
唐突に見える、彼らは何故あんなにも落ちぶれてしまったのか、兄は何故引きこも
るように暮らしているのかが読めない。演技派を配している割に、ガチンコの演技
合戦が観られず残念。
彼らには役不足の感が否めない。

 対して、知事の側近ジャックの心情は細かく描写される。初恋の人、アン(ケイト・
ウィンスレット)
に対する複雑な思い。真面目で純真、一糸纏わぬアンを前にしても、
「将来を大事にしよう」と言うウブなジャック。その汚れのなさが、逆に相手をどれだけ
傷つけるのかわかっていない。そんな彼が、どうしてウィリーのような「悪い奴」の懐に
いるのか理解に苦しんだ。それも名付け親である恩人、アーウィン判事(アンソニー・
ホプキンス)
を陥れてまで。彼の真面目さ、誠実さが、「雇い主」であるウィリーを裏切
ることを良しとしなかったのか? それともジャックは、ウィリーの中にある「善」を
最後まで信じていたのだろうか。


 並み居るオスカー俳優の中、一際異彩を放っていたのがウィリーの運転手兼用心棒
シュガー・ボーイを演じたジャッキー・アール・ヘイリー
。角砂糖を口に含み、ほと
んど無言ではあるけれど、強烈な負のオーラを放って一番印象に残った。ケイト・ウィン
スレットと共に彼がオスカーにノミネートされた『リトル・チルドレン』超期待!

『オール・ザ・キングスメン』監督・脚本:スティーヴン・ザイリアン
         主演:ショーン・ペン、ジュード・ロウ/2006・USA)
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

[2007/04/15 11:01] | 映画 | トラックバック(8) | コメント(8) |
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コメント
真紅さん、こんにちは。
映画を観る時には原作は先には読まない主義のわたし(とか言いつつ最近読書はとんとご無沙汰…)、
なのに、この作品のオリジナルは、そうと知ってて先に観たのでしたが。
原作やオリジナルを知らなければ理解できない作品は
やはり、映画としては成功だとは言えないのでしょう。
そういう意味では、脚本は確かにオリジナルのほうが面白いと思います。
オリジナルにあってリメイクにないシーンが本当は重要だと思うので、
あっさり平板な印象になってしまったのは否めません。

ジュード・ファンとしては、ただ彼が観れたら嬉しいのは確かなのだけれど。。。
[2007/04/15 18:00] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
私も絶対「観てから読む」派です~。でもこの映画は、予備知識なしではストーリーを追うのに忙しかったです。
オリジナルは、オスカー作品賞を受賞しているのですよね。
物凄く豪華なキャストだっただけに、ちょっともったいない気がしました。
しかし・・。最近、映画を「理解しよう」と考えて観ている自分に気付きました。
「感じる」だけでもいいかな、とも思うのですよね・・。
やっぱり、ブログに感想書こうと思ったら考えて観てしまって・・。
ちょっと反省です。
「ジュードかっこいい~~」で終ってもいいかもしれませんよね(笑)
ではでは、またお伺いします~。
[2007/04/15 20:27] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんばんは。
あー私はいつも感じるばっかりで、考えてないでーす。単細胞でーす。笑
おかげで支離滅裂なことばかり感想にかいてますが;
ストーリーはいつも二の次なんで、別にわからなくても平気なんですが、感じることの出来ない作品は辛いです。例えば、先回りして説明口調のものとか表現力に乏しいとか・・・
そういう点ではこの作品は、表現力に溢れた優れた点をいくつも感じられたので自分の中では結構goodです。
そうそう、シュガーボーイ。良い存在感でしたね~
[2007/04/15 22:10] URL | シャーロット #gM6YF5sA [ 編集 ]
こんにちは真紅さん

TBとコメントありがとうございました!

リメイクが最近多いですよね~
オリジナルもあまりにふるくて憶えていなかったんですが
正直、あまり面白いって感じの映画ではなかったですねー。
ショーンペン、あいかわらずいいです♪

今後もよろしくお願いします☆
[2007/04/15 22:49] URL | mig #- [ 編集 ]
シャーロットさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
私もあんまり考えてばっかりだとブルース・リーに怒られそうなんで、これからは気をつけます。
あ、でもブログタイトル「thinkingdays」なんだった(爆)
映像と音楽と、あとはジュードで満足♪できるとも言える映画でしたね。
ジャッキー・アール・ヘイリー初めて観ましたが、なかなか収穫でした。
ではでは、またお伺いします~。
[2007/04/15 23:59] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
migさま、こちらでは初めまして。ようこそいらっしゃいました、コメントありがとうございます。
面白さは私も感じませんでした。だからオリジナルも観よう!って気にはならないんですよね。
ショーンは特別な位置にいる俳優さんのような気がします。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
またお邪魔させて下さいね。ではでは~。
[2007/04/16 00:00] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんは!
TB&コメントありがとうございました^^・
こちらの勝手な先入観なのですが、ウィリーにスポットを当てた映画だと思っていましたので、途中からジャックが前面に出てきた事に違和感を覚えました。
別にジャックが主体でも構わないのですが、あまり上手く表現出来ていたとは思えませんでした。
ショーン・ペンもジュード・ロウもオーラを放っていただけに残念です。
それにしてもショーンの演説は迫力がありましたね。私は一農民になった気分で聞き入りました(笑)
[2007/04/19 00:32] URL | 由香 #- [ 編集 ]
由香さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
私も同感です。ジャックが主人公でも全然構わないのですが(と言うかジュード目当てで観てますから、大歓迎!)、ウィリーへの心情がわかりにくかったですよね。
アンへの思いはよくわかるんだけど(笑)。
ショーンは、ちょっと怖いくらいでしたね。私もウィリーに一票!という感じでした。
ではでは、またお伺いします~。
[2007/04/19 09:22] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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[2008/07/15 22:34] KINTYRE’SDIARY
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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