過剰な人々~『編集者という病』

『アクターズ・スタジオ・インタビュー』という番組をご存知だろうか。ジェームズ・
リプトン氏が俳優・監督など著名な映画人をゲストに招き、生い立ちや演技論、
出演作品などについてインタビューする番組だ。表現する人が語ることに興味が
あるので、放送はできるだけチェック、録画してゆっくり観るようにしている。
登場する映画人たちは皆、魅力的で輝いている。「この仕事に就く気はなかった」な
どと語る人もいるけれど、やはりどこか「過剰」な印象を受ける。物腰は柔らかく、語
る言葉は静かで穏やかでも、誰もがどこかに表現という激情を秘めているのだ。
見城徹氏の『編集者という病』を読みながら、そんなハリウッドスターたちのことを
考えてしまった。
幻冬舎社長にしてカリスマ編集者である著者の、仕事と生き様、関わった作家や
ミュージシャンとの交流を語った初めての単行本。ベストセラーを連発し、直木賞
作家を輩出し、出版界の常識を覆し続ける見城徹という人物の人生哲学が読み取れ
る。世界や社会に対する違和感から、表現することによってしか生きられない芸術
家たち。表現すべき衝動を持たない我々「普通の人々」と彼らを繋ぐ触媒で在り続ける
編集者。精神の混沌から作品と言う黄金を紡ぎ出すための「精神のデスマッチ」の数々。
昔大好きだった銀色夏生やユーミンのエピソードが読めたこともうれしい。
既出や重複内容が多いことが残念。もし「次」があるのなら、見城氏自身の書き下ろ
しが読んでみたい。
(『編集者という病』見城徹・著/太田出版・2007)
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