ダルデンヌ兄弟 『イゴールの約束』 『息子のまなざし』 『ロゼッタ』

ダルデンヌ兄弟の新作 『トリとロキタ』 を観逃してしまった。
ちょっと無理をすれば時間を作れないこともなかったのだけど、彼らの作品は 『サンドラの週末』 くらいしか観たことがなくて
「どうしても観たい!」 という気持ちになれず結局スルー
そこでU-NEXTで観られるダルデンヌ兄弟の監督作品を観てみることに
以下、とりあえず3作品観たところで観た順に感想をメモ
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
『イゴールの約束』 (原題:LA PROMESSE/1996)
父とともに不法移民の就労に手を染めている少年イゴールの物語
アニエス・ヴァルダやグザヴィエ・ドランがフェイバリットに挙げている作品なのだそう
イゴールを演じた少年、かわいい、、どこかで観たことある、、、と思っていたらなんと 『2重螺旋の恋人』 のジェレミー・レニエじゃない!
彼が 「人として」 の善性に目覚める過程がとてもリアル
ラストは 「ここで言うか!」 というタイミングなのだけれど、彼なりにギリギリまで逡巡したのだろうな、、、と思う
『息子のまなざし』 (原題:LE FILS/2002)
職業訓練校で木工を教えているオリヴィエのクラスに、ある少年がやってくる
手一杯だと一度は少年を拒否したオリヴィエだったが、少年の挙動が気になり結局は彼を受け入れるのだが、、
カンヌ映画祭男優賞受賞作
予備知識なく鑑賞したので、少年がオリヴィエの(生き別れた)息子なのか? と思いながら観ていた
これは邦題のミスリードですね
少年とオリヴィエの関係が明かされてからはサスペンスの様相
少年が 「名前で呼んでいい?」 「後見人になって」 と距離を詰めてくるに連れて大きくなるオリヴィエの戸惑い(葛藤)が伝わってくる
言葉少なく、感情をほとんど表に出さないオリヴィエゆえに緊張感が半端ない
最悪の事態を予想させながら、希望を感じるラストシーンに安堵
いや~この映画は凄い!
『ロゼッタ』 (原題:ROSETTA/1999)
酒浸りの母とキャンプ場のトレーラーで暮らす少女ロゼッタが、理不尽な仕打ちを受けながらも懸命に生きようとする物語
カンヌ映画祭パルムドール&女優賞受賞作
う~ん、、これは観るのが辛い作品だった
同性として、あまりにも過酷なロゼッタの境遇が苦し過ぎる
「生活保護を申請して」 と言われても頑なに拒否し、仕事を探して生きるのだと突っ張る
「どうしてそこまで意地を張るの?」 と思う自分がいた
あの母と二人、今までどうやって生きてきたのだろう、、、とロゼッタの来し方に思いを馳せてしまう
救いがない、、しかし最後の最後にロゼッタは変われたのです
そう思いたい
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
3作ともにオリヴィエ・グルメが出演
彼は2021年のマイベスト作の一本 『私は確信する』 が印象深かったのですがダルデンヌ兄弟作品の常連俳優さんだったのですね
『サンドラの週末』 はオスカー女優マリオン・コティヤールの映画、という印象が強かったのだけれど、ダルデンヌ兄弟は社会的弱者に目を向け、常に問題提起する映画作家なのだとわかった
被写界深度が浅く主人公の視線に観るものを極力近づけるような映像表現と、シンプルなタイトル、最小限の登場人物、セリフ、劇伴、短めなランタイムで主題を明確に描く作風が貫かれている
ケン・ローチに近いものを感じます(尊敬)
彼らを評価し、世界に紹介してきたカンヌ映画祭はやはり凄いなと改めて思う(運営にいろいろ文句はあるにしても)
遅すぎるけどサブスクにあるダルデンヌ兄弟作品は全て観たいし、今後も公開作は観続けたいと思う
彼らはベルギー出身ですがアニエス・ヴァルダ、シャンタル・アケルマン、新作 『クロース』 がもうすぐ公開(超期待♪ ロゼッタ役の女優さんが出演するらしいと知りますます楽しみよ)のルーカス・ドンもそう
いい映画作家が多い印象なのは大国に挟まれた国の成り立ち(歴史)と無関係ではないのかもしれないと思う
ポーランドもそうですよね
そんなことを考えていると、映画を娯楽として観るだけでなく映画史的に勉強してみたいな、、と思ったり
ああ~、人生
時間が足りねぇ
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trackback
「息子のまなざし」の世界各国ポスター探しをしてみましたところ。どこのお国のものも、それぞれなかなかgood!でした。左上のはフランス版、一番私は、しっくり来るかな。その下は英語版なのでthe son、なんとなくちょっと違った印象ですね。その右の韓国版ハングルでアドル「息子」。一番下は日本版。
2023-05-31 07:48 :
ポコアポコヤ 映画倉庫
コメントの投稿
No title
真紅さん、こんにちは!
ダルデンヌ兄弟の映画一杯見たのねー。
私は「息子のまなざし」がお初だったんだ、その次に「ロゼッタ」だったかな。
最初に見たせいか「息子のまなざし」が特に印象に残ってます。
オリヴィア・グルメおじさん、常連よねー。
『イゴールの約束』
そうなのよ!ジェレミー・レニエが主役で出てたのにはビックリ。私もこの映画は1,2年前に見たから、彼って少年の時は可愛かったんだなあと驚いた。
>ケン・ローチに近いものを感じます
そうそう! 私もそう思う。
こういう作風の監督さんを応援したくなっちゃうし、ずっと作り続けて欲しいね。
シャンタル・アケルマンさんは知らなかった。
真紅さんがインスタであげていて、初めて頭にインプットしたところ。
ダルデンヌ兄弟の映画一杯見たのねー。
私は「息子のまなざし」がお初だったんだ、その次に「ロゼッタ」だったかな。
最初に見たせいか「息子のまなざし」が特に印象に残ってます。
オリヴィア・グルメおじさん、常連よねー。
『イゴールの約束』
そうなのよ!ジェレミー・レニエが主役で出てたのにはビックリ。私もこの映画は1,2年前に見たから、彼って少年の時は可愛かったんだなあと驚いた。
>ケン・ローチに近いものを感じます
そうそう! 私もそう思う。
こういう作風の監督さんを応援したくなっちゃうし、ずっと作り続けて欲しいね。
シャンタル・アケルマンさんは知らなかった。
真紅さんがインスタであげていて、初めて頭にインプットしたところ。
2023-05-31 07:59 :
latifa URL :
編集
No title
latifaさん、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
私もTBさせてね。
>「息子のまなざし」が特に印象に残ってます
わかる。。私もこの3作の中では一番印象的だったから↑画像載せたよ。
オリヴィエ・グルメもジェレミー・レニエも、ず~っと第一線で活躍していて素晴らしいわ。
>シャンタル・アケルマンさんは知らなかった
日本ではまだ知名度低いよね。
私も昨年、息子が特集上映に通ってるって言うんで初めて知ったもん。
「それ誰??」って感じやった(汗)。
それがいきなりBFIの1位になってビックリ。
『ジャンヌ・ディエルマン』、しかし凄い映画体験だったよ。。
こんな凄い映画があったんだな、と思った。
私もTBさせてね。
>「息子のまなざし」が特に印象に残ってます
わかる。。私もこの3作の中では一番印象的だったから↑画像載せたよ。
オリヴィエ・グルメもジェレミー・レニエも、ず~っと第一線で活躍していて素晴らしいわ。
>シャンタル・アケルマンさんは知らなかった
日本ではまだ知名度低いよね。
私も昨年、息子が特集上映に通ってるって言うんで初めて知ったもん。
「それ誰??」って感じやった(汗)。
それがいきなりBFIの1位になってビックリ。
『ジャンヌ・ディエルマン』、しかし凄い映画体験だったよ。。
こんな凄い映画があったんだな、と思った。
こんばんは。
こんばんは。
ダルデンヌ兄弟の作品、私は「サンドラの週末」と「午後8時の訪問者」しか見てないんですよ。
いつか過去作品を観てみたいと思っていたので、真紅さんが挙げてくださってて興味津々だわ。
>社会的弱者に目を向け、常に問題提起する映画作家なのだとわかった
2作品しか見ていませんが、それは感じますね。
確かにケン・ローチ作品に通じるものが!!
「ロゼッタ」は辛そうですね。
実は「少年の君」を見始めたのですが、途中で止めてしまった・・・弱虫です(>_<)
時間足りませんよねぇ・・・激しく同意!(^^)!
>映画を娯楽として観るだけでなく映画史的に勉強してみたい
おお~~!!素敵です♡
ダルデンヌ兄弟の作品、私は「サンドラの週末」と「午後8時の訪問者」しか見てないんですよ。
いつか過去作品を観てみたいと思っていたので、真紅さんが挙げてくださってて興味津々だわ。
>社会的弱者に目を向け、常に問題提起する映画作家なのだとわかった
2作品しか見ていませんが、それは感じますね。
確かにケン・ローチ作品に通じるものが!!
「ロゼッタ」は辛そうですね。
実は「少年の君」を見始めたのですが、途中で止めてしまった・・・弱虫です(>_<)
時間足りませんよねぇ・・・激しく同意!(^^)!
>映画を娯楽として観るだけでなく映画史的に勉強してみたい
おお~~!!素敵です♡
2023-05-31 21:50 :
瞳 URL :
編集
No title
瞳さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
『午後8時の訪問者』はマイリストに入ってます!
アデル・エネルが映画界から引退してしまった(残念)ので、今や貴重な作品ですよね。
『ロゼッタ』これはかなりキツイですよ。。
パルムドール受賞作なのですが、その時の審査委員長が誰か知りたいです。
もちろんいい作品なのですが、こういう地味な作品を最高賞に推すってなかなか勇気がいると思うんですよね。
『少年の君』いつかまた是非。
小学生の頃に戻って勉強をやり直したいと思う今日この頃。。
退職して時間が出来たら学び直したいです。
『午後8時の訪問者』はマイリストに入ってます!
アデル・エネルが映画界から引退してしまった(残念)ので、今や貴重な作品ですよね。
『ロゼッタ』これはかなりキツイですよ。。
パルムドール受賞作なのですが、その時の審査委員長が誰か知りたいです。
もちろんいい作品なのですが、こういう地味な作品を最高賞に推すってなかなか勇気がいると思うんですよね。
『少年の君』いつかまた是非。
小学生の頃に戻って勉強をやり直したいと思う今日この頃。。
退職して時間が出来たら学び直したいです。