Stay Blue.〜『裸足で鳴らしてみせろ』 #2

(承前)
劇伴を担当したsoma(藤井草馬)の音楽が素晴らしいのですが、主題歌 『Primula Julian』 はサクラソウ科の花の名前
花言葉は 「青春の喜びと悲しみ」 なんだそう
この映画のために書かれたわけではない既成曲なのに、驚くほど作品世界にマッチしていますよね
リピートしてずっと聴いています
☆以下、引き続きネタバレ☆
どん底だった直巳と再会し、直巳と生きていく朔ちゃん(伊藤歌歩)
彼女の人物造形がリアルでとても好感しました
男性二人が主人公の物語に登場する女性は、恋敵だったり浮気相手だったりして 「憎まれ役」 なことが多いけど、本作の朔ちゃんは憎めないどころか救世主なのです
朔ちゃんは直巳のことをずっと思っていたのだろうけど、(自信のなさゆえに)煮え切らない直巳の元を去り、カナダへと旅立ちます
大好きで、(多分)生きがいだったギターも断ち切って
だから海辺で直巳が言ってくれた 「朔ちゃんの曲が一番好きだった」 「カナダでいい曲書けたら、また聴かせてよ」 という言葉が本当にうれしかったんだと思う
でも、砂山で朔ちゃんが差し出した手に直巳は触れられない
時が流れて、直巳は槙と再会するのか?と思いきや物語は予想外の方向へ進んでいく
カナダ帰りの朔ちゃんがコンビニでアルバイトしているのもすごくリアル
(ワーホリから帰ってきて、そのスキルや英語力を活かせずになんとなくバイトや派遣を続けている人を何人も見てきました)
朔ちゃんの背中にやさしく触れる直巳の手に安堵している私がいた
ラストシーンで彼女は 「蚊帳の外」 だけれど、それもまたリアルな描写だった
もう一人の主要な女性登場人物・美鳥ちゃん(風吹ジュン)もとっても素敵でした
夢見るように旅を語る美鳥ちゃんを見つめるふたりのまなざしのやさしさ
看取れなかったことを槙は悔やんでいたけれど、人生の最期に彼女は安らぎを得ていたよね
暴力や犯罪も内包しながら、この映画はとてもとてもやさしいのです
ゆるやかな円環構造のようにもみえる反復の多さは監督の作風なのかな
今年のマイベスト作の一本
Stay Blue.
☆トリビア(工藤梨穂監督インタビューより)☆
① 直巳は23歳、槙は20歳の設定
② 直巳と朔ちゃんが映画館で観ているのは監督の前作『オーファンズ・ブルース』(音声だけフランス語をかぶせたのか?)
③ 直巳と朔ちゃんは中・高の同級生
(つづく)
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