「裸足」の前に~『オーファンズ・ブルース』

記憶障害を抱えたエマは幼馴染のヤンから届いた絵の消印を頼りに、彼を探す旅に出る
昨年観逃して一番残念だった映画 『裸足で鳴らしてみせろ』 を観ました(WOWOWありがとう)
週末に二回観て、それから何度もリピートしています
本作は「裸足」の監督・脚本を担った工藤梨穂(28歳)の京都芸大映画学科卒業制作作品
失われゆく記憶とともに漂う若者たちのひと夏のロードムービー
商業デビュー作である「裸足」の前の作品であり、PFFグランプリ受賞作
学生の卒業制作(自主映画ですよね)でこのクオリティ、小規模ながら全国公開もされたとは凄い!
才能、天賦の才ってやっぱりあるんだなぁと思う
U-NEXTにて鑑賞(アマプラにもあります)
「処女作にはその作家の全てがある」 と言いますが、本作にも「裸足」に繋がるモチーフがたくさんある
タイトルでもある孤児
日本なのにどこか異国のような風景
カセットテープ、レコーダー
多用されるバックショット
その背中に触れようとして触れられない指
そして何より携帯電話、スマホが出てこない
鳴るのは家電、かけるのは公衆電話!
時代設定が気になるところ
「裸足」の主人公のひとり、佐々木詩音が全く違う印象を受けることに驚きます
何この半端ない色気は?
彼が演じるアキみたいな人が現実にいたら伝説的モテ男でしょうよ
やっぱり役者さんって凄いなぁ
彼が独り踊るタンゴ、イエローがかった色調は 『ブエノスアイレス』 を彷彿させる
(監督のTwitter、トプ画がまさにブエノなのです)
その後の疾走は 『汚れた血』 ですね
セリフでも映像でも多くを語らず、想像の余地の中に物語を託した作劇は賛否分かれるところかもしれません
私はとても好きでした
何もかもわかろうとしなくてもいいんじゃないかな
映画も人生も
象が好きなヤンに、もういないフー・ボーを重ねてしまった
ロードムービーだしね(あちらは冬でこちらは夏だけど)
工藤梨穂監督、ずっと撮り続けてください
「裸足」も必ず言葉にします
( 『オーファンズ・ブルース』 監督・脚本:工藤梨穂/
主演:村上由規乃、上川拓郎、佐々木詩音、窪瀬環、辻凪子/2018)
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