取り返しのつかないこと~『16歳の合衆国』
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 ある日突然、恋人の弟を殺した16歳の少年、リーランド。逮捕され、矯正施設へ
収容された彼は、作家を志す教師パールと出会う。聡明で、一見純真なリーランド
に興味を持ったパールは、自作のネタに利用しようとリーランドに近付く。少年の
家族、被害者の家族、彼らを取り巻く状況、崩壊してゆく人間関係をアンサンブル
形式で描いた、静かな問題作。主演はライアン・ゴズリング

 監督・脚本のマシュー・ライアン・ホーグは、実際に矯正施設で殺人を犯した少年
たちと接した経験があり、彼の実体験に基づいた映画なのだという。アメリカだけ
でなく日本でも頻発している少年による凶悪犯罪、その理由について考察しようと
した、議論を呼ぶ作品だと思う。

 ライアン・ゴズリング主演、というだけで興味を持って観始めたが、キャストが
豪華なことに驚いた。リーランドの恋人ベッキーにジェナ・マローン、リーランド
の両親はケヴィン・スペイシーレナ・オリン。矯正施設の教師はドン・チードル
その他マイケル・ペーニャ、ミシェル・ウィリアムズ、ケリー・ワシントン、そし
『ツイン・ピークス』が懐かしいシェリリン・フェン!脚本に惚れ込んだというケヴィ
ン・スペイシーは、製作にも名を連ねている。

「なぜ、人を殺してはいけないのか?」という問いが、様々なメディアに躍った時期が
あった。私はそういう問いかけ自体に「ふざけるな!」と言いたい古いタイプの人間な
ので、当然、この作品の主人公リーランドのしたことに共感も同情もできない。彼
があまりにもセンシティヴで、悲観的過ぎるのはどうしてだろう?それを彼の育っ
た家庭環境や「親のせい」にはしたくないと思う。「どうやって『怪物』を育てたんだ?」
リーランドの親に投げつけられるこの言葉が悲しい。確かに、作家である彼の父親
は、子育てを放棄していただろう。しかし、母親一人で子どもを育てている家庭な
どいくらでもある。経済的にも恵まれていたリーランドは、ありふれた、少しだけ「変わ
った家庭」に育ったに過ぎないと思う。

 しかし、この作品はそうした「問題のある」少年たちを告発し、結末で描かれたよう
断罪することが主題ではないだろう。実は私は、リーランドは犯人ではなく、ラ
ストに真犯人が明かされるのでは・・とずっと思いながら観ていた。パールも感じた
ように、彼をわかりたいと思い、彼を救いたいと思った。誰もが犯した罪は償わね
ばならない、しかしその罪はただの過ち=ミステイクではなく、取り返しのつかな
い間違いなのだと理解
させなければ、どんな贖罪も意味が無い。死だけは、どうあ
がいても取り返しがつかないのだから。

20070320054700.jpg

 Ryan Gosling


 赤いパーカーが印象的なリーランドを演じたライアン・ゴズリング。彼は「ネクスト・
ショーン・ペン」
などと呼ばれ、第79回アカデミー賞では主演男優賞にノミネート
された、ハリウッド期待の若手演技派。1980年生まれ、私の中ではジェイクと同い
年のライバル
、という位置付けである(笑)。神経質そうな瞬き、何を見ているのかわ
からないうつろな眼差し、眉間に刻まれた深い皺。『ハーフ・ネルソン』を観るのがま
すます楽しみになった。

『16歳の合衆国』監督・脚本:マシュー・ライアン・ホーグ/
       主演:ライアン・ゴズリング、ドン・チードル/2002・USA)
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

[2007/03/20 05:59] | DVD/WOWOW | トラックバック(4) | コメント(10) |
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コメント
お邪魔します~TB&コメントありがとうございましたした。
色々考えさせられる映画でしたよね。
家庭環境のせいで罪を犯すわけでも
ないですからね・・。難しいわ・・。
ジェイク君と同い年のライバル・・
そうですね!!!ともに演技派ですものね。
活躍、楽しみよね。
そうそう・・このあいだジェイク君の新作の
Zodiac・・・テレビで予告観ました。面白そう~~~あまり恐い話じゃなければいいけど・・。
[2007/03/20 09:41] URL | みみこ #mQop/nM. [ 編集 ]
みみこさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
子どもの罪は親に責任があるのは勿論なんですけど、「親のせい」だと言われるのはなんだか納得行かないんですよね・・。
子にも子なりの人格がありますから、親が悪いとは言い切れないんじゃないかな、と・・。
ジェイクの年代って、演技派が多いような気がします。
ライアンやヒースもそうだし、ジェームズ・マカヴォイとか。
え~~、テレビで予告を?!知りませんでした!テレビ、ほとんど観ないんですよ。
私も怖いのが苦手なので、ちょっと不安です、D.フィンチャーだし(苦笑)
でも楽しみですね!ではでは、またお伺いします~。
[2007/03/20 09:57] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんは。
やはり、考え込んでしまう作品だったと思います。

「なぜ、人を殺してはいけないのか」という問いかけに対し、
多感な年代の子ども達と「何故か」を話し合ったわたしも、
真紅さんに一喝されそうですね。
わたしは決して新しい人間ではないけれど、
結果の善悪ではなく、「何故」についての理由を
きちんと言葉にして説明できるかどうか。
彼らが間違った考え方をしてないかどうか。
「切れる17歳」と言われた、少年犯罪に注目された時代だったからこそ、
同年代の彼らが何を考えているのかを知りたかったのだと思います。

リーランドは、その「何故?」をも理解しての行動だったような気がして、
悲観的すぎるまでの心情に寄り添ってしまった気がします。
彼にそこまでの発想をさせる前に、大人たちができたことはなかったのか?
普段は考えない部分にまで、深く入り込んでくるこの作品は、
それぞれの信念や立場や経験で、様々に感想を分かれさせることでしょう。
[2007/03/20 22:20] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
いえいえそんなー、悠雅さまを一喝だなんて滅相もないです。
一人の人間が生まれてくるまでに、どれほどの苦しみと痛みがあるか。
あなたも私もその一人の人間なんだよ、その命をどうして殺めたりできるの!
あなたが死ぬことは私も死ぬことなんだ!
あなたが誰であろうと、あなたには必ず「私」がいるんだよ。
・・っていうのが私の「何故」なんです。
お子さん達ときちんと話し合われた悠雅さまの家庭は素晴らしいと思います。
私も話し合いたいと思いますが、なんだかその「問い」自体に怒りを覚えてしまうんです・・。
ちょっと激してしまったかもしれません、ごめんなさい。
(私、実は物凄く激しい性格なんです、恥)
本当に、考えさせられる作品ですね。私ももう少し考えてみないといけないかもしれません。
冷静に!(笑)
ではでは、またお邪魔しますね。
[2007/03/20 23:37] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま、こんばんは~♪
コメントをいただき、ありがとうございました。TB相変わらずで申し訳ありません。
>取り返しのつかない間違いなのだと理解させなければ、どんな贖罪も意味が無い。
そうですよね、私もいつもそう思います。それをまったく理解できないというところに、心の機能の一部の大きな欠落というかそんなものがあるのだろうか・・とか。
ライアン君の考え方はすごく傲慢だと全然言っていないところと、ケリー・ワシントンを殺人者にさせているラストに私は非常に脱力感というか、欺瞞というか、はっきり言って怒りを覚えました。
「Zodiac」予告!?いや~ん、見たいですよね!!
[2007/03/21 00:09] URL | 武田 #qs0owOX6 [ 編集 ]
武田さま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
TB、できなくて残念ですね←ずっと言ってるけど
でも、コメントだけでも本当に、ありがとうございます!
そうそう、リーランドの考え方は傲慢ですね。
あのラストで、監督は「因果応報」みたいなことを言いたかったのでしょうか?
なんか、それも傲慢、いや欺瞞のような気も・・。
し、しかし、ケリー・ワシントンって誰か殺してましたっけ?!?!
クリス・クラインですよね?多分、いや絶対(汗)
『Zodiac』予告観たいわ!本編も、早く観たいですね♪
ではでは、またお邪魔します~。
[2007/03/21 00:40] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん こんにちは!
ライアンが「ネクスト・ショーン・ペン」と言われているというのは納得できます!
なんか似た香りがしますねぇ。
S・ペンの後をいくなら、私、今はライアンがあまり好きではないですが、ペンも若い頃より今のほうが数倍好きになってますので、彼も歳を重ねたほうが良い役者になるような気がします。
受け留め方がさまざまできそうな作品でした。
どんな理由があろうとも、人を殺めることは罪ということだけは声高に描いて欲しかったです。
[2007/03/21 16:20] URL | なぎさ #- [ 編集 ]
なぎささま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
「ネクスト~」っていうのは雑誌に書いてあったんですよ。でもなんとなく雰囲気ありますよね。
彼は顔より演技で勝負するタイプ(ライアンくん、ごめん)だと思うので、歳を重ねたほうがいいでしょうね~。
私も、どんな理由があろうとそれはダメ!っていうメッセージが欲しかったです。
16歳くらいの若い子が観たら共感したりして、それも怖い!ですよね。
ではでは、また伺いますね~。
[2007/03/21 17:27] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま、こんばんは♪
きゃー、間違えてます!!
>クリス・クラインですよね?多分、いや絶対(汗)
まったくです(大汗)
思い浮かべていたのはクリス・トム嫁元彼・クラインの顔だったのに・・。大変失礼いたしました。私の頭もいよいよ春です・・
[2007/03/21 23:04] URL | 武田 #qs0owOX6 [ 編集 ]
武田さま、再びこんにちは~。コメントありがとうございます。
あ、やっぱりそうですよね(笑)。何か見逃したのか?!と思ってしまいました。
そうか、彼ってケイティの元彼なのね。知らなかった!メモメモ。。
ではでは、またお伺いしますね♪
[2007/03/21 23:39] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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16歳の合衆国
16歳の合衆国(2003  アメリカ)監督・脚本 マシュー・ライアン・ホーグ出    ドン・チードル/ライアン・ゴズリング/クリス・クライン     /ジェナ・マローン/レナ・オリン16歳の少年リ
[2007/03/20 09:02] ちょっとお話
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[2007/10/29 19:16] <花>の本と映画の感想
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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