映画好き必読!~『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』

映画は絶対「字幕派」で、吹替えのTV放映はめったに観ません、というアナタ。面白
い本が出ましたよ~。映画字幕製作の内幕や苦労話、言葉のプロから見た気になる
日本語についてユーモアたっぷり、縦横無尽に叫び倒した、現役字幕翻訳者による
痛快な一冊。これは一気読み確実。映画好きな皆さん、是非手に取ってみて下さい!
映画字幕翻訳家といえば、露出の多さでは戸田奈津子さん、韓国映画では根本理恵
さんが代表格ですが、意外とたくさんいらっしゃるようで「映画翻訳家協会」なるものも
あるそうです。また、英語以外の言語の字幕翻訳はほとんどの場合「重訳」なんだそうで
す、知ってました?! 外国映画を観ていると、「字幕担当:」というテロップが必ず出
ますよね。英語以外の言語で製作された映画でも、担当がよく名前を見かける方だっ
たりして「この人は、一体何ヶ国語に精通しているんだ?!」と驚愕していたのですが、
英語からの重訳なのですね、なるほど。
字幕に頼っているくせに、字幕に文句をつけることも多々ある「うるさい観客」である
私ですが、やはり一番腹が立つのが映画の解釈を誘導するような「意訳」です。字幕翻訳
は厳しい字数制限があるため、ほとんど「翻訳でなくて要約」であることは重々承知して
いるつもりですが、映画における一番重要と思える場面、もっとも繊細であるべきセ
リフを「彼はこう言いたいんですよ」と押し付けられるのはご免です。何度か書いている
ことですが、そういう点でやはり一番印象深いのが『ブロークバック・マウンテン』のラ
スト、イニスのセリフです。
あの字幕を観て「???」と思った方も多いのではないでしょうか。字幕を担当された
方は、BBMへの熱い思いをパンフレットで語っておられるだけに、「なぜ?」という思い
も大きかったのです。しかし、これも本書を読んで納得。「字幕操作」が配給会社主導で、
宣伝方針にのっとって行われるらしいのです。万人にわかりやすく、なるべく感動で
きる、「泣ける」字幕になるように。時には字幕翻訳者の承諾も得ず、勝手に改悪される
こともあるのだとか。テロップで名前が出される翻訳担当者はたまったもんじゃない
ですよね・・、こういう本を書きたくなる気持ちもわかります。
そしてこの本の偉い(?)ところは、そうした流れは日本語力の低下・変質から来てい
ると喝破しているところです。メールやブログで一見「書くこと」がブームのようで、実
のところコミュニケーション能力は低下している、字幕もそうした世間の「幼稚化」に
迎合しているのだ、と嘆いているのです。
近頃やたらと目に付く「~させていただく」という謙り過ぎる言い回しについてなど、
自らを振り返って反省させられる部分も多くありました。映画を観て、登場人物の心情
や微妙な表情を読み取れる、深い思考のできる大人にならねば、と思うのでした。
あとは英語の聴き取り能力があれば・・。DVDに必ず英語字幕をつけてくれたら、勉強
になるんだけどなぁ。。
(『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』太田直子・著/光文社新書・2007)
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おはようございます、真紅さん。
私も英語は??なので、このような本の紹介を読むと、映画のストーリー自体の意味もかなり解釈が変わってくるのでは、、、と不安です(汗)。
BBMのラストそうですよね、、。
今、たまたまマレーネ・ディートリッヒに関して書かれた本(わがマレーネ・ディートリッヒ伝 鈴木明著)で、日本の映画関係者は、時として途方もないことをやってのける、、とあります、例えば
ルネ・クレール「7月14日」を「パリ祭」とし、ジャン・ギャバン「ペペ・ル・モコ」を「望郷」と題名を変えた。
マレーネの「青い天使」も、踊り子ローラを形容する”青い”をなくし、日本題「嘆きの天使」としたのは、ローラによって破滅する男性主人公の目線に勝手に変換した題名である、、本文長いので要約ですが、このような主旨のこと書かれていました。
なんだか、言語が違うと、受ける印象が全く変わってきますよね、、、。
私も英語は??なので、このような本の紹介を読むと、映画のストーリー自体の意味もかなり解釈が変わってくるのでは、、、と不安です(汗)。
BBMのラストそうですよね、、。
今、たまたまマレーネ・ディートリッヒに関して書かれた本(わがマレーネ・ディートリッヒ伝 鈴木明著)で、日本の映画関係者は、時として途方もないことをやってのける、、とあります、例えば
ルネ・クレール「7月14日」を「パリ祭」とし、ジャン・ギャバン「ペペ・ル・モコ」を「望郷」と題名を変えた。
マレーネの「青い天使」も、踊り子ローラを形容する”青い”をなくし、日本題「嘆きの天使」としたのは、ローラによって破滅する男性主人公の目線に勝手に変換した題名である、、本文長いので要約ですが、このような主旨のこと書かれていました。
なんだか、言語が違うと、受ける印象が全く変わってきますよね、、、。
sumisuさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、昔の邦題は「超訳」ですが、最近のカタカナ変換邦題よりは情緒があったのではないでしょうか。
紹介した本の中でも、『カサブランカ』の名セリフ「君の瞳に乾杯」が紹介されています。
あれも超訳ですが、あのセリフがないと最早カサブランカではない!というくらいの名訳ですよね。
提供する側が、芸術を無視して商業主義を推し進める、そこのところに字幕の危機があるのだと思います。
また何か面白い本があれば紹介して下さいね。ではでは!
確かに、昔の邦題は「超訳」ですが、最近のカタカナ変換邦題よりは情緒があったのではないでしょうか。
紹介した本の中でも、『カサブランカ』の名セリフ「君の瞳に乾杯」が紹介されています。
あれも超訳ですが、あのセリフがないと最早カサブランカではない!というくらいの名訳ですよね。
提供する側が、芸術を無視して商業主義を推し進める、そこのところに字幕の危機があるのだと思います。
また何か面白い本があれば紹介して下さいね。ではでは!
記事を紹介いたしました
真紅さん、こんにちは。
たいへん興味深い本のご紹介ありがとうございました。昨日ゲットしてあっという間に読了しました。拙ブログでも、こちらの記事を紹介いたしました、よろしくお願いします。
私も「させて頂く」、よく使うのですが(今も「紹介させていただきました」と書いてしまい変更)、今後は改めたいと思ってます。言葉はむずかしいですねー。
たいへん興味深い本のご紹介ありがとうございました。昨日ゲットしてあっという間に読了しました。拙ブログでも、こちらの記事を紹介いたしました、よろしくお願いします。
私も「させて頂く」、よく使うのですが(今も「紹介させていただきました」と書いてしまい変更)、今後は改めたいと思ってます。言葉はむずかしいですねー。
びあんこさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
そしていつも拙記事のご紹介、ありがとうございます。
おお、一気読みされました?面白かったですよね~、なんか1ページに一回は笑わせないと、というノルマがあるかのごとくでした。
「させて頂く」私も使ってしまいます。決して悪い言葉ではないと思うのですが、目に付きますよね・・。
日常でもネット上でも、本当に言葉は難しいですね。
私も後ほど伺いますね。ではでは~。
そしていつも拙記事のご紹介、ありがとうございます。
おお、一気読みされました?面白かったですよね~、なんか1ページに一回は笑わせないと、というノルマがあるかのごとくでした。
「させて頂く」私も使ってしまいます。決して悪い言葉ではないと思うのですが、目に付きますよね・・。
日常でもネット上でも、本当に言葉は難しいですね。
私も後ほど伺いますね。ではでは~。