祝・凱旋上映~『フラガール』
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 日本アカデミー賞、キネマ旬報日本映画ベストワンはじめ、数々の映画賞に輝い
『フラガール』。今週末にはDVDリリースとなるけれど、凱旋上映に行ってきた。
封切りの時から、これはDVDで観たら絶対「映画館で観ればよかった」と後悔する
『ウォーターボーイズ』タイプの映画だと思っていたから。
同じ思いの方が多いようで、劇場は大盛況。一律1,000円という価格設定も功を奏
してか、客席は8割方埋まっていた。新作よりも入りが良いのでは?と思うほどだ。

 物語の舞台は福島県の炭鉱町。昭和40年、エネルギー革命は例外なく日本の炭鉱
にも影を落とし、炭鉱で働く人々はリストラや閉山を恐れる日々。そんな町を再生
・活性化させるために、「常盤ハワイアンセンター」の建設が計画される。センターの
目玉としてフラダンサーが募集され、高校生の紀美子(蒼井優)は親友の早苗(徳永えり)
に誘われ、ダンスチームの一員となる。
 元SKDのダンサーで、東京から都落ちしてきたダンス教師平山まどか(松雪泰子)と、
ダンサーを目指すド素人の炭鉱娘たち。この水と油のように相容れない両者が、フラ
ダンス
という共通語を得、ハワイアンセンター柿落とし公演で遂に一つになるまでを
感動的に描いた「フラガールズ」たちの物語だ。
(そう、この題名単数形なのが不思議なのですが・・。語感の印象からかな?)

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 役者が皆いい。彼らの操る見事な方言は「訛ってて全然わからない」ほど。皆、ごく
自然にセリフを自分のものにしている。まずはなんと言っても蒼井優。この映画は
彼女の成長物語でもあり、ラストのダンスシーンに説得力がなければ感動もカタル
シスもあったものではないが、十分その重責を全うしていると思う。母親譲りの強情
っぱり、「おれの人生おれのもんだ!」と叫ぶ場面は遠い空の向こうにのホーマー
を思い出す。その母親、富司純子も、夫亡き後、女手ひとつで一家を背負う母親を
ほとんどノーメイクで熱演。食卓で炭鉱への熱い思いをぶつ場面は、彼女が一家の
父親でもある
ことを表している。レッスン室に出向いた母に、娘が無言のまま踊る
場面はセリフなしで両者が対峙し、蒼井優のダンス、富司純子の演技ともに圧巻
子の夢を反対する父、見守るやさしい母、という構図がこの映画では成り立ってい
ない。けれどその中間の役割を果たすのが、豊川悦司演じる兄、洋二朗。「妹を
よろしく頼みます」

 
 そして、主演でありながら蒼井優に見せ場をさらわれた感のある松雪泰子、彼女
も素晴らしかったと思う。助演に圧倒的見せ場があり、評価されたところはジェニ
ファー・ハドソンとビヨンセの関係
ドリームガールズとダブる。彼女が踊る
「見せ場」はたった一度しかない、しかし少女たちを指導するその手の美しさ、理不尽
な暴力への体当たりの怒り、ラストの涙・・。私からも言いたい。「いい女になったなぁ」

 早苗と紀美子の別れのシーンは『北の国から』の蛍だし、駅のホームで手話のシーンは
『ブラス!』ダニー・ボーイを思い出す。この確信犯的なベタさ、ハンカチを手放させ
ない演出、鼻につくと言う意見もあるかもしれない、しかし私にはとても心地よいス
トーリー展開だった。登場シーンだけで笑いを取ったしずちゃんも、ちゃんと映画の
中に収まっている。

 ジェイク・シマブクロの奏でる音楽も耳にやさしく響く。古今東西、炭鉱モノに名作
は数あれど
、この映画も十分、その一つに加えるべき出来映えだと思う。

『フラガール』監督・脚本:李相日/主演:松雪泰子、蒼井優/2006・日本)
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[2007/03/13 16:57] | 映画 | トラックバック(7) | コメント(15) |
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[2007/03/13 17:07] | # [ 編集 ]
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[2007/03/13 22:24] | # [ 編集 ]
こんばんは。
凱旋上映なんてやっているんですね。
そうそう、これは劇場体験すべき作品です。
踊るシネマの高揚感ってたまりませんよね。
炭坑モノにもはずれなし。
ベタだけど、感動せずにはいられない、去年一番泣けた映画でしたー
[2007/03/14 00:08] URL | かえる #LkZag.iM [ 編集 ]
管理人のみにコメント下さった方、ありがとうございました。
[2007/03/14 00:14] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
かえるさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
そうなんです、凱旋上映、関西だけなのでしょうか?
お客さんたくさんでしたよ。観逃してしまったので、劇場で観られてホントにラッキー☆でした!
そうそう、炭鉱モノっていいですよね~!
私も途中からハンカチをずっと顔に当てていました。
フラガールズたちの涙も、映画を越えた、本物の涙だったと思います。
ではでは、またお伺いしますね~。
[2007/03/14 00:19] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん TB&コメントありがとうございます。
「凱旋上映」で初めて観たということでしょうか。かなり入っているということですから、いまだ人気があるんですね。そういえば上田でもまだやっています。あれも「凱旋上映」なのかな?
確かにベタでストレートな映画ですが、そんな分かった風なレッテル張りをあっさり乗り越える力をこの映画は持っていますね。僕も何度か涙を流しましたよ。懸命に努力することが今のように茶化しの対象になる以前の、誰もが夢を持っていた時代の雰囲気がよく描かれていると思います。
炭鉱ものには確かに傑作が多く、僕が一番すきなのはジョン・フォード監督の「わが谷は緑なりき」です。これは何度観たか分かりませんが、観るたびに泣かされます。僕にとって、最初から最後まで涙が乾くことのない唯一の映画です。
[2007/03/14 01:02] URL | ゴブリン #2YYP0Fkg [ 編集 ]
ゴブリンさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
昨秋の封切り時には都合がつかず、今回初めて観ました。上田での上映も「凱旋」ではないでしょうか。
子どもから大人まで誰が観ても楽しめる、いい映画だと思いました。
シネカノンは凄いですね。李社長も男前だし(笑)
炭鉱もので私が思いつくのは『リトル・ダンサー』とか『遠い空の向こうに』とか最近の映画ばかりです。
ゴブリンさまに「唯一の映画」と言わせるジョン・フォード、『わが谷は緑なりき』ですか!
是非探して観てみたいと思います。
またお伺いしますね、ではでは~。
[2007/03/14 09:15] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
コメ&TBありがとう。
おっしゃるように、とってもバランスのいい映画でした。また、テレビ局の配給ではない作品としては、昨年もっとも頑張った興行成績をあげましたね。
[2007/03/14 11:19] URL | kimion20002000 #fOhGkyB. [ 編集 ]
kimionさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございました。
テレビ局の配給、そうですね、今ほとんどフジや読売が絡んでいますよね。
凱旋上映も賑わっていましたので、かなりの大ヒットです。邦画のこの勢い、続くでしょうか。
またお伺いしますので、よろしくお願いします。ではでは。
[2007/03/14 15:37] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん こんにちは!
そうそう、これって確信犯的なベタさが売りもんみたいなところありますよね!
だけど日本人って、そこら辺りが好きな人種ですから、どうしても涙が出てしまうんですよねぇ。
言わば「浪花節」みたいな臭さがあるんですが、そこが心地良かったです♪
[2007/03/14 17:18] URL | なぎさ #- [ 編集 ]
こんばんは。TB&コメントありがとうございました。
誰にでもわかる物語でありながら、それぞれの「映画的記憶」を
呼び覚ますのが、この作品の深いところではないでしょうか。
私は全般的にアジアンテイストを感じてしまいました。
松雪泰子演じたまどか先生の気性の荒さは、韓国映画ばりの
勢いがありましたね。
私は去年の紅白歌合戦にジェイク・シマブクロが出演しているのを
見たとき、この映画の影響に違いないと思いました。
こういう良心的な日本映画は、一年に一度は見たいものですね。
[2007/03/14 21:26] URL | 丞相 #- [ 編集 ]
なぎささま、こんにちは。コメントありがとうございます。
インフルエンザはもう大丈夫ですか?お大事になさって下さいね!
このベタさにすっかりはまって泣いてしまう典型的日本人でございます。
こういう映画がヒットするってやっぱり悪いことじゃないですよね。
私も心地よく観ました。
また遊びに伺いますね。ではでは~。
[2007/03/15 03:59] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
丞相さま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
「映画的記憶」、本当にそうですね。炭鉱モノはスタンダードですから「あ、このシーンは・・」と思うところがありましたね。
それでもこの映画は何かの模倣としてでなく、オリジナルな作品として十二分に評価されて然るべきですね。
あの銭湯のシーンは確かに韓国映画っぽかったです、あの激しさが。
ジェイク・シマブクロ、私も紅白観ましたよ~。
これからも良質な日本映画が作られることを願っています。
ではでは、またお伺いしますね。
[2007/03/15 04:06] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんにちわ、真紅さん♪♪♪

カゴメは昔のど根性ものアニメに夢中になって育った世代の所為か、
この手の、逆境に耐えて踏ん張って、最後の最後に栄光をつかむ式の作品が、事の他好きなのであります。
だもんで、好きが嵩じて、ちょっと辛口になっちゃったきらいがあるかも(笑)。

と、ふとゴブリンさんのコメントを読んでて一驚っ!
ああああ!「わが谷は緑なりき」!!
もぉこのタイトルを目にした瞬間に全身に電気が走り、目がしとどに潤むですよっっ。
カゴメにとっては忘れる事の出来ない不変の名作であります。
うん、文句なしに炭坑物では至高の逸品ですなぁぁ。

さて、この映画に観られる“韓国映画っぽさ”ですが、
テイスト的にはとてもテーマにマッチしてて良かったと思うてすね。
そも、「東北にハワイ」という突き抜けた破天荒さなんですから、作品の基調としてピッタリであると思ったですよ。
これからも、純和風とはちょっと違った色合いの作品をどんどん手掛けて欲しい所ですね。
[2007/04/01 14:27] URL | カゴメ #- [ 編集 ]
カゴメさま、こんにちは。コメント&TBありがとうございます!
私は劇場で観たので、感動が三割増でしたよ。
もうあのダンスシーンがねぇ、圧巻!蒼井優ちゃんの肌がまた、白くてキラキラ光ってるんですよ~。
観終わった後、多くの方々が「よかったねぇ~。。」とシミジミされておりました。
そういう作品なのだと思います。
『我が谷は緑なりき』、先日レンタルで見つけたのです。
カゴメさまも絶賛の作品なのですね、それは是非観なくては!
李監督って、とても才能ある若手の方なのですね。
『GO』をリメイクして欲しいわ←無理!
シネカノンともども、これからも頑張って欲しいです。
ではでは、また伺いますね~。
[2007/04/01 22:31] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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