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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅   ★劇場鑑賞した映画はインスタにアップしています@ruby_red66

人は変わることができる~『ゴッズ・オウン・カントリー』#7

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 ★ 全面的にネタバレしています ★

 これは監督フランシス・リーのフェティシズムだと思うのだけれど、この映画は手のクローズアップが多用されている。ジョニーの大きくて、少し汚れていたりする手。牛の背を撫で、煙草を吸い、干し草を握りしめる手。ジョシュ・オコナーのキャスティングには、この手が大きな意味を持ったのではないかと想像する。ジョニーが完全に恋に堕ちる瞬間も、その 「手」 がきっかけの名場面だ。

 物語の始まりと終わりで、主人公ジョニーは別人のように変化するが、ゲオルゲと出会い、共に酪農仕事をする中で、ジョニーが決定的に変わる瞬間がある。母のいない子羊に、ゲオルゲがジャケットを着せ、「里子」 に出すシーン(初見時、このシーンは結構な衝撃だった)。母のいないジョニーは、この子羊に自分を重ねていたのかもしれない。ここで彼は、劇中初めての笑顔を見せるのだ。食事のテーブルを整え、感情的になるジョニーをいさめ、無言のまま仕事をする背中を見せるゲオルゲは、母性と父性を同時に持ち合わせた、包容力の塊のような人物。そしてベッドでの作法までジョニーに教え導くのだから、どれだけ有能な人材だよ、と思う。ジョニーでなくとも惚れるしかないではないか。

 この映画は 「ヨークシャーのブロークバック・マウンテン」 とか 「英国版ブロークバック・マウンテン」 とか、「ハッピーエンドのブロークバック・マウンテン」 などと呼ばれている。何回観ても飽きないのは、映像やストーリー、演技の素晴らしさはもちろん、ハッピー・エンディングであることが大きいと思う。脚本も書いているフランシス・リーは 「ゲイが悲しい思いをする物語は、もう観たくなかった」 とどこかで語っていた。確かに、私たちは今までどれほど、ゲイの主人公たちが置かれた悲惨な状況に涙してきただろう? 周囲の無理解、拒絶、暴力、そして 「死」。個人的にはとても大切な映画だけれど、『ブロークバック・マウンテン』 のDVDを取り出して観ようという気持ちにはなかなかなれない。あの映画の悲劇は、ヒース・レジャーの夭折という悲し過ぎる現実とリンクしてしまい、いまだに向き合うことが難しい。

 自らを取り巻くままならない状況にいら立ち、何もかもを諦めて心を閉ざしていた主人公が、もしかしたら自分は 「幸せ」 になれるのかもしれない、そう望んでもいいのかもしれない、と思い始める。その思いは厳格だった父と祖母を変え、自らも大きく変わってゆく姿は感動的で、何度観ても涙が流れる。もちろん、それは簡単な道ではない。主人公は(結果的に)幸運すぎると思う方もいるかもしれない。しかし、それでもいいじゃないか。21世紀なのだ。もう、幸せになってもいいよ。少しの勇気を出して。堂々と。

 この映画を必要としている人は、きっとたくさんいると思う。東京と大阪だけじゃなくて、日本のいくつもの片隅に、本当にたくさんいると思う。一人でも多くの人に、この希望に満ちた力強い映画が届いてほしいと願う。「人は変わることができる」。監督の故郷・ヨークシャーへの愛に溢れたエンドロールも含め、是非その目と心に刻んでほしい。
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2018-09-20 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 :
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