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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅

1分間の人生~『欲望の翼』

欲望の翼



 

 阿飛正傅

 
 DAYS OF BEING WILD



 1960年、香港。サッカー競技場の売り子スー(張曼玉マギー・チャン)は、コーラを買いに来たヨディ(張國榮レスリー・チャン)に声を掛けられる。「名前は?」

 「1960年4月16日、3時1分前。君は僕といた。この1分間を忘れない」

 2018年7月の終わり、20時40分スタートのレイトショー。平成最後の夏、火星大接近の夜に、この作品をやっとやっと、スクリーンで観ることができた。初めてDVDで観たのは一体何年前だろう? 世紀の大天才・王家衛ウォン・カーウァイの長編第二作。レスリーが亡くなり、マギーが引退状態である以外は、キャストは梁朝偉トニー・レオンはじめ劉嘉玲カリーナ・ラウ、劉徳華アンディ・ラウ、「歌神」張學友ジャッキー・チュンと、今も第一線で活躍する面々。彼らの若き姿に、胸がいっぱいになる。

 キャストだけみると超豪華な青春群像劇なのだが、初めて観たときからそういう印象はない。レスリーの存在感が強烈過ぎるため、「脚のない鳥=ヨディの物語」 として記憶に刷り込まれてしまうのだ。ラテン・ミュージックをかけ、白いランニングとトランクスで踊るヨディ=レスリー。30年近く語り継がれているこの場面、芸術の神に愛された自らのナルシシズムを隠そうともせず、ただ音楽に身を任せる彼に、至高とは何か、天賦の才とは何かを感じずにはいられない。

 今回、この物語はヨディの回想なのだな、と初めて気がついた。冒頭、フィリピンの熱帯雨林が車窓に流れる。ラスト近く、今際の際のヨディにタイドは問いかける。 「1960年4月16日、3時1分前を憶えているか?」 「あの女といた」。あの風景は、あの日からの記憶を 「走馬灯のように」 辿っているヨディの目に映る最後の記憶なのだ。

 そして、同じ男を愛した二人の女、スーとミミ。これまで、結婚に憧れを抱く生真面目なスーに圧倒的に感情移入し、ギャーギャーと喚き散らす自己主張の塊のようなミミには嫌悪感があった。しかし、今回はつくづく、カリーナって美しいと思った。均整のとれたスタイルと、アイラインで強調させた目力、それだけじゃない。強く、逞しい女は美しい。惚れた男をどこまでも追い、国境を超える彼女は、どんな場所でも生き抜いてみせるであろう生命力に溢れていてまぶしい。

 つい先日、トニー・レオンがジェット・トーン(ウォン・カーウァイが設立した映画製作会社)との契約を満了し、関係を解消したというニュースに衝撃を受けたばかり。ラストシーンは少し感傷的な気分で観てしまった。超ロマンチストなウォン・カーウァイは、役者に背中で語らせる。影帝トニーと、この涙の大天才とのコラボレーションをまだまだ観てみたかった。

 字幕翻訳が、今年6月に亡くなった寺尾次郎氏だったことも記録しておきたい。合掌。

欲望の翼2

( 『欲望の翼』 監督・脚本:王家衛/1990・香港/
               主演:張國榮、張曼玉、劉嘉玲、劉徳華、張學友、梁朝偉)
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2018-08-03 : 映画 : コメント : 4 : トラックバック : 1
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欲望の翼(阿飛正傳)
この繁体字のタイトルと背景のブルーグリーンにフィルターがかかった亜熱帯の木々。そしてこの映像に重なるラテン・ミュージック。あまりにも美し過ぎて胸を締めつけられる。初めて劇場で鑑賞してからすでに四半世紀。この作品を再び劇場の大きなスクリーンで観る機会にめぐまれたことにただただ感謝。当時は張學友(ジャッキー・チュン)演じるサブの純粋さに惹かれたが今回の鑑賞では断然ミミ(劉嘉玲:カリーナ・ラウ)の...
2018-08-04 21:50 : 龍眼日記 Longan Diary
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No title
感想アップ楽しみにしていました。スクリーン初めてでいらしたのですか!?私は多分最初もスクリーンでしたが、どこで見たのやら。。大毎かも知れません。演技以外に何がよいのかうまく表現できませんが、湿気、熱気、空気感、虚無感、哀しみ、濃い愛情、出演者たちの心がセリフがなくとも感じられる、完成された世界があるからでしょうか。。大好きな映画です。トニーは元気なのですかね。。
2018-08-04 08:33 : べり URL : 編集
夜と湿気
真紅さん、レイトショーでの鑑賞お疲れ様でした!
ほぼ30年も前の作品なのですよね。
なのにこの作品を超える香港映画に今日まで出会えていない私です。
私も真紅さん同様今回の鑑賞で一番存在感を感じたのはミミでした。
自分の気持ちを抑えることなく言葉や行動で表すその潔さに
昔は反感を覚えたのに今は共感してしまう・・・
我ながら月日がもたらす変化の不思議を感じてしまいます。
ミミがヨディの育ての母親を訪ねて部屋の中を見せてもらう姿は少女のようで
愛らしかったですね。

私が過ごす最期の日もいい天気だといいな。
2018-08-04 22:52 : sabunori URL : 編集
No title
べりさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうなのです、初めての劇場鑑賞なのですよー。記念すべき♪
>演技以外に何がよいのかうまく表現できませんが、
王家衛の映画って、これ、というストーリーがないものが多いですよね。
でも、どんな映画監督よりも印象的な映像を撮れる作家だと思っています。
ドイルのカメラの貢献度もあるとは思いますが。。。
トニーは、日々動向を伝えて下さるファンの方のサイトによると元気そうですよ。
今月、中国・香港で主演映画が公開されるようです。
日本での公開はないのかな。。。
2018-08-05 17:23 : 真紅 URL : 編集
電話ボックス
sabunoriさん、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
>この作品を超える香港映画に今日まで出会えていない
すごい。。。sabunoriさんにそう言わしめるこの映画、本当にパワーがありますね。
(ちなみに私の香港映画№1は『花様年華』です。あれでトニーに感電したので)
映画って時を経て観返すと、違った印象や感想になるのがまた面白く素晴らしいところですよね。
私も、以前はミミがうっとおしくて堪らなかったのに、、と驚きでした。
>ミミがヨディの育ての母親を訪ねて部屋の中を見せてもらう姿
そうなのです。あのシーンは忘れてしまっていたので、ミミが愛おしかったです。
>私が過ごす最期の日もいい天気だといいな
そうですね。。気持ちのいい日だといいですね。酷暑は勘弁して欲しい~
2018-08-05 17:32 : 真紅 URL : 編集
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