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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

『海よりもまだ深く』

海よりもまだ深く2

 15年前に文学賞を受賞したきり、鳴かず飛ばずの小説家・篠田良多(阿部寛)は、妻・響子(真木よう子)にも愛想を尽かされ離婚。興信所で探偵をしながら糊口をしのいでいるものの、ギャンブル依存のために月一回の一人息子との面会日にも金策に苦心する有様。団地で独り暮らす老いた母(樹木希林)のもとへ、金の無心に赴くのだった。

 歩いても歩いても の姉妹編のような、是枝裕和監督の新作。樹木希林と阿部寛が演じる、親子の会話は絶品。いつまでたっても息子がかわいい母と、その母に甘えて自立できない男の哀しさ、情けなさが際立つ。「なりたかったものになれた?」 ほとんどの大人にとって、それは残酷な問いかけだろう。あの頃の未来に、僕らは立っているのかな・・・。

 しかし、泣く気満々だったにも関わらず、私は泣けなかった。樹木希林が放つ名言の数々に心揺さぶられ、阿部寛ってこんなに演技巧者だったのかと驚きつつも、是枝監督の目線の 「偏り」 が気に障って仕方なかった。

 正直、私はこの作品に感動し切れなかった。あまりにも身勝手で大人になり切れない良多に対して、女たち(特に母、元妻)がやさし過ぎる。虎の子の給料を競輪でスって、養育費を滞納して姉(小林聡美)の職場まで押し掛けて借金を頼む。最低。シングルマザーの響子にとって、経済は死活問題のはず。なのに新しい恋人(年収1500万!)に元夫の小説をdisられ、伏し目がちになるなんて、、、いやそれ良多の願望でしょう。

 元夫の実家に泊って 「お母さん」 を連発する響子、、、あり得ませんから。それにお母さん、いくら息子が心配だからって、元嫁をハメちゃいけません。自分の息子や夫や弟がこんなだったら、めっちゃ嫌な気分になると思う、私だったら。そんなやさしくなれませんって。ていうかね、シングルで子ども育てていたら、毎日がもう、必死なんじゃない? 今日明日の生活が大事で、「自分はなりたいものになれたのか?」 なんて、自問自答している暇はないですよ。いっそ良多が息子を引き取って、育てればいいのに。
  
 良多=監督の、母や妻や姉にはこうあって欲しい、いつまでも夢を追いかける自分をやさしく見守って欲しい、っていう甘えが根底にあって、ちょっと勘弁、だったなぁ。結局、この映画ってファンタジーなんだな、と思いました。ただ・・・。

 「寝たきりと、ポックリ逝って生きたまま夢に出て来る、どっちがいい?」
 「・・・寝たきり」

 この会話だけは、ほんとグッときたなぁ。どんな姿でも、生きていて欲しい。母に対するその感情には、私も共感します。

 ( 『海よりもまだ深く』 監督・原案・脚本・編集:是枝裕和/
        主演:阿部寛、真木よう子、池松壮亮、樹木希林/2016・日本)
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2018-06-02 : 映画 : コメント : 2 : トラックバック : 1
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真紅さーん、凄くこの記事、目からウロコで、おおお!そういわれればそうよね?って、新鮮だったー。
ありがとうね。
なかなか、こういう感想書くのって、勇気が要るのに。
とても興味深く読ませてもらったよ。

>良多=監督の、母や妻や姉にはこうあって欲しい、いつまでも夢を追いかける自分をやさしく見守って欲しい、っていう甘えが根底にあって

確かに。
そうだよね、そういわれてみれば。
気がつかずに見てたなあ・・・
私も良多 ダメすぎじゃんー!って呆れて(時に腹立って)見てたんだけどね。

私はね、是枝監督の映画は、ほとんど好きなんだけど、なぜか名作と言われている「海街diary」は、あんまり・・・だったんだ、
なんでか解らないんだけどね、一回で見れず、何度かに分けて見たんだけど・・・(感想確か書かなかった)
2018-06-04 10:10 : latifa URL : 編集
latifaさん、こんばんは~。コメント&TBありがとうございます。
こちらこそ、読みたいって言ってくれてありがとう。
この記事、もうこのまま永遠に塩漬けにするところだったわ(笑)。
確かに、ネガな感想ってあんまり書きたくないよね。。
書く方も、読むほうもそんなに気持ちのいいものじゃないし。
特に、絶賛してる人ばっかりなのに、自分だけ否定的なこと言うのってね。
勇気と言うか、覚悟がいるよね。
まぁ2年経って、誰も気にしてないしいいかー、みたいな(笑)。

『海街diary』そう? そうなのね?
私は、広瀬すずがかわいい、、、かわい過ぎる、、、と思いながら観ていた記憶が。
監督も、すずちゃんが好きで好きでたまらんのやろな~、と思っていました。
ほんと、人それぞれよね~、感じ方って。
最近それがとても心地良く感じる。いろんな観方があるってことが。
すごく健全だと思う。
だから、私は私の「好き」を貫き通そうと思うんだよね。
それって暴走やろ、と自分で突っ込みながら(笑)。
2018-06-04 23:22 : 真紅 URL : 編集
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