FC2ブログ
映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅   ★劇場鑑賞した映画はインスタにアップしています@ruby_red66

Parce que c'etait lui. Parce que c'etait moi. ~『君の名前で僕を呼んで』#6

君の名前で僕を呼んで10

 この作品に関して、何よりもまず惹かれるのは原題 “Call Me By Your Name” における、その語感の素晴らしさ。妙な邦題やトンチンカンな副題が付くのを何よりも恐れていたけれど、それが杞憂に終わり、心底ほっとしたのを憶えている。
 そのタイトルのために、ポスターや原作の表紙に使われている手書き風のフォントがまた印象的。黒板にチョークで書いたような素朴さ、青空に浮かぶ太陽の様な黄色。エリオとオリヴァー、ふたりの若さと、そこから生まれる奔放で健全な欲望の表出のようで、心に残る。

※ここから原作のネタバレを含みます

 原作小説は、全てエリオの一人称で語られる。「あの夏」 を追想し、それから20年後の 「去年の夏」 まで。もちろん、主な舞台は映画で描かれた 「1983年、夏。北イタリアのどこか」 なのだけれど、映画では描かれなかった 「その後」 のほうにむしろ、私は心を奪われてしまった。278ページ目、第三部のラストシーンから第四部「ゴーストスポット」。ここを夜、寝る前に何度も何度も読み返している。そしてその度に泣き過ぎて、頭が痛くなるのだけれど。

 ルカ・グァダニーノ監督がこの映画の続編(リンクレイターのビフォアシリーズのような?)を構想していると知ったときは驚いた。けれど原作を読んでしまった今では、そう考えるのが当たり前だと思える。映画で描かれた 「あの夏」 に人生の煌めきと歓びと美しさが凝縮されているとしても、描かれなかった 「その後」 の部分にもまた、この物語の核心が宿っていると思えるから。

 エリオは、17歳という年齢にはあり得ないほどの知識と語学力を有する 「世界一恵まれた(byオリヴァー)」 少年だけれど、「大事なことは何も知らない」。だから彼の頭の中は妄想と青い欲望と自意識でパンク寸前で、ジェットコースターのように感情が起伏する。それが奔流のように溢れ出る語り口は、正直少々読み辛い。だからこそ 「あの夏」 から歳月を経て、多少は自らを客観視している大人になったエリオが語る最終章は、心にすっと入ってくる。(それは私もまた、少し哀しい大人だからかもしれない)

 エリオとオリヴァーの別離は、原作では映画の数段、残酷な形でもたらされる。時間、距離、社会通念、常識と呼ばれるもの。そして何より自らの 「弱さ」。様々な困難によって成就しえなかった関係。そしてそれが、長い長い年月を経ても、互いの多世界解釈、 「パラレルな人生」 (byオリヴァー)の中でずっとずっと、息づいているとしたら? 

 ・・・それは単なる自己憐憫なのかもしれない、しかしエリオはそれでも信じたいのだ、「何ひとつ忘れない」 という言葉を。

 家庭を持ち、順調に大学で地位を築いているオリヴァーに対し、エリオのプロフィールは明かされない。アカデミックな仕事に就いていること以外は、結婚しているのか、子どもはいるのか、どこに住んでいるのかもわからない。だからこそ、エリオのオリヴァーへの思慕が純化されているとも言えるのだけれど。

 何度も読み返すうち、この小説の中では 「愛」 という言葉がほとんど使われていないことに気付く。そして、その言葉を使わずして、一冊丸ごとで 「愛」 というものを描写していることにも。オリヴァーの視点から、同じ物語を読んでみたいと思う。

 それは君だったから。それは僕だったから

 映画を観て映画を観て原作を読み、また映画を観てスクリプトを拾って、サントラを聞きながらパンフレットを眺める。原作を読み返しまた読み返し、次は英語版のペーパーバック。日本版のBDが出て、続編の製作発表がアナウンスされる頃までは、この情熱の時間を黙認しよう。

 ( 『君の名前で僕を呼んで』 アンドレ・アシマン著/高岡 香訳/オークラ出版)

 (続く
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2018-05-17 : CALL ME BY YOUR NAME : コメント : 0 :
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

What's New?

真紅

Author:真紅
 Cor Cordium 
★劇場鑑賞した映画の感想はインスタにアップしています@ruby_red66

Archives

Search this site

Thank You!