この愛、観るべし!~『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
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 公開当時からとても気になってはいた映画なのだけれど、ポスターのあまりにも
強烈なビジュアルに引いてしまい、未見だった本作。しかし、こ、これは・・・。
素・晴・ら・し・い。感動した。すごい。なんて形容すればいいのだろう?
とにかく強烈に心に突き刺さって、言葉が出ない。映画館で観ていたら、しばらく
席を立てなかったんじゃないだろうか。これは、騙されたと思って多くの人に観て
欲しい。


 ベルリンの壁が築かれた1961年、東ベルリンに生まれたハンセルは、米軍放送の
ラジオでロックを聴いて育ち、アメリカ行きを夢見る少年。米兵と結婚するために
性転換手術を受けるも、彼の股間には怒りの1インチ(アングリーインチ)が残ってし
まう。母の名、ヘドウィグを借りて渡米した後、彼(彼女)が愛、すなわち自分の半身
=the other Harf
を求めて彷徨う半生を、グラムロックに乗せて描いてゆく。
原作のミュージカルはオフ・ブロードウェイで大ヒット、ロングランとなり熱狂的な
ファンを生んだ伝説の名作だという。

 、という↑の話は全て観終わってから知った。ほとんど予備知識なしで観たため、
エンドロールが上がり始めるや「この主演俳優は誰?」と思って目を凝らしていると、
Hedwig:John Cameron Mitchellのクレジットに驚愕
な、な、なんという才能なんだ・・。
監督・脚本・主演、ジョン・キャメロン・ミッチェル。イノセント・ラブでジョナサン
を演じたダラス・ロバーツに少し、雰囲気が似ている。

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 映画冒頭、物凄いメイクとウィッグのヘドウィグが唄い始める。毒気のある、グロ
テスクな容姿に最初は度肝を抜かれるが、彼の歌がもう、文句なしに素晴らしい!
のだ。低く通る声、哲学的な歌詞に乗せた魂の叫びは最高にエモーショナル。観る
ものの胸にガンガン響き渡り、たちまち惹きつけられる。「愛の起源」「ミッドナイト・
レディオ」「薄汚れた街」などなど、一見特異でキワモノ的なストーリーを普遍的な愛の
物語へと昇華させる
、魔法のようなナンバーたちだ。

「片割れ」を探し、裏切りに傷つき、自分に無いものを補うかのように奇抜なメイク、
ウィッグ、衣装で武装していたヘドウィグ。彼が自分自身の中に愛を見つけ、全てを
脱ぎ捨てて歩いてゆくラストシーン
は静かな感動に胸が満たされる。ラスト直前「全て
のはぐれ者たち」へと、穏やかな表情で唄うヘドウィグに、もう涙、涙・・。
ヘドウィグの独白と歌でストーリーが進んでゆくため、バンド仲間であり夫でもある
イツハク(ミリアム・ショア)とヘドウィグの関係や、かつての恋人であり師弟関係にあ
ったトミー(マイケル・ピット)の心理は描写されない。そのために、物語としてはやや
説明不足な印象
は否めない。しかし、それを補って余りあるこの歌の能弁さはどうだ!
ヘドウィグの悲しみ、苦しみ、切なさが渦巻き、無茶苦茶パワフルで、ソウルフル
まさに「魂の叫び」。時折挿入されるアニメーションも、ヘドウィグの激しさと怒りの
緩衝材となり、物語の印象をやわらげるのに成功している。

 この作品、日本でも2004年に三上博史、2007年にも山本耕史主演で舞台化されている。
三上博史は中性的で妖しい魅力の持ち主だからハマっていたのかもしれないけど、「熱い
日本男児」バリバリの山本耕史くんがヘドウィグ、う~ん想像できないなぁ・・。

 ジョン・キャメロン・ミッチェル久々の新作も、年内公開予定らしい。昨年のカンヌ
映画祭で上映され、全編性描写満載の映像が話題になったという。日本ではカットなし
では観られないんじゃないか、って話だけど、期待してます。

20070225015111.jpg

 『Shortbus』(2006・USA)

  Directed and written by
  John Cameron Mitchell



『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』2001・USA
      監督・脚本・原作戯曲・主演:ジョン・キャメロン・ミッチェル

★追記:05/Sep/2007:★ 『ショートバス』観ました。感想はこちら⇒
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[2007/02/25 02:08] | DVD/WOWOW | トラックバック(3) | コメント(10) |
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コメント
真紅さん!ご覧になられたんですね!良かったですよね!
最初は「何?何なの?これ~?」という感じなんですが、繰り返し繰り返し出てくる歌(アニメも)が雄弁に私たちに訴えかけてくるんですよね、求めて求めてやまない存在、片割れ。
真紅さん、これ泣いちゃいますよね~。私、BBMに通じるものが見えた気がして涙がこぼれました。イツハクの寂しさもね。
舞台の山本耕史、実は期待してるんです。共演の中村中も。観に行けないのでそのうちBSでやるだろうと期待してるんですが。

[2007/02/25 12:58] URL | kママ #7iSbDyII [ 編集 ]
kママさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうなんです、最初は「?!?」という感じなんですが、すぐに惹き込まれました。
泣けますよ~、これは。胸がいっぱいになります。
2回観て、コメンタリも聴いてしまいました。今日はサントラも借りて来てしまいました!
中村中ちゃんがイツハクですか~、それはハマってますね!
BSか、WOWOWでやるかもしれないですね。
山本耕史くんは超熱演していることでしょう!
ではでは、また遊びにいらして下さいませ~。
[2007/02/25 16:36] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
TBサンクスです!
この映画はインパクトありますよね~。クラッシックになること間違いなしです。

最近、またTBがすごいことになっているので、少し禁止設定するかも。不具合が起こったら、連絡してくださいね!
[2007/02/26 04:06] URL | チュチュ姫 #- [ 編集 ]
お邪魔します~
魂の叫びでしたよね。
歌詞を聞いているだけで涙が出そうに
なりますね。
ヘドウィグのトミーへの気持ちはあんなにも純粋だったのに、なんてひどいトミーv-293
サントラ借りてきましたか。
お気に入りありましたか・・。私は薄汚れた街が好きで・・思わず、今流しました・・・笑
[2007/02/26 11:07] URL | みみこ #mQop/nM. [ 編集 ]
チュチュさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうそう、すっごいインパクトでした~。いい映画ですよね、ホント。
TB、の件、了解です。『トランスアメリカ』がNGだったんで、またトライしてみますね。
ではでは。
[2007/02/26 14:45] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
みみこさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
そうなんです、サントラ借りてリピートしてます(笑)。
今日HMVに寄ってみたらオリジナルキャストのサントラがあって買いそうに(汗)
お気に入りは全部!ですけど、やっぱ『ミッドナイト・レディオ』かな。
泣けました、ネイキッドなヘドウィグに(涙)。
ではでは、またお伺いしますね!
[2007/02/26 14:45] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは。
コメントありがとうございました。

「ヘドウィク…」、私もあの強烈なビジュアルに退いていたんですがもっと早く見るべきでした、とてもいい映画ですよね。

山本くんの女装ドラマ、女性になると声が吹き替えになるのが残念でしたが、ほんっとにキレイでしたよ。当時19歳…、今後もヘドウィクの舞台に立ってほしいですね。
ではでは、またー。
[2007/03/22 17:20] URL | びあんこ #w4Ib0zSU [ 編集 ]
びあんこさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
私もこの映画は本当に好きです。サントラをずっとリピートしていました。
多くの方が「食わず嫌い」だと思うので、是非観ていただきたいですよね。
山本くんのヘドウィグ、私はちょっと想像つかないんですが・・。
4月にもまたあるんですよね。頑張って欲しいですね!
ではでは、またお伺いしますね。
[2007/03/23 06:09] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
この映画、わたしも0年代のベストに入れたい、と思う映画です。映画館は立ち見でしたが、立っている人たちはみな、体が自然に動いていて、そのことも忘れられません。
[2010/02/16 21:03] URL | mizu #- [ 編集 ]
mizuさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私もこの映画は後世に残る作品だと思います。JCMが魂を込めた傑作ですね。
映画館でご覧になったのですね! 素晴らしい。。
私もその場所にいたかったです。
[2010/02/16 21:50] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ    
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ    (2001  アメリカ)   監督/脚本 ジョン・キャメロン・ミッチェル                                出 ジョン・キャメ
[2007/02/26 10:55] ちょっとお話
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』もう一度考えてみる
ヘドウィグというのは何だろう。何故彼女は美しく皆は彼女に惹かれてしまうのか。 彼女は最初からヘドウィグではなくハンセルという名前の男の子だった。 ヘドウィグはハンセルが自由になる為につけた架空の名前である(母親からもらったものではあるが) ハンセルは自ら望..
[2007/11/30 23:48] 藍空放浪記
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
 『探し求めるものは「愛」――』  コチラの「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」は、セレブリティやニューヨーカーの熱狂的な支持を受け、オフ・ブロードウェイでロングランヒットした同名ロック・ミュージカルを映画化したミュージカル映画です。  舞台と同じ...
[2008/05/01 20:30] ☆彡映画鑑賞日記☆彡
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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