![]() 小説家を志すバツイチの英語教師マイルス(ポール・ジアマッティ)とTV俳優の ジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は、大学時代からの親友。一週間後に アルメニア人の令嬢と結婚し、年貢を納めるジャックのために、マイルスはカリ フォルニア・ワイナリーへの旅を計画する。離婚した妻への未練が断ち切れず、 自作の出版も軌道に乗らず自信喪失気味のマイルスと、独身最後の一週間に発情 気味のジャック。対照的な二人が、ワインと女性を巡る旅に出る。 アカデミー賞の脚色賞をはじめ、多くの賞を受賞した本作、監督・脚本は『アバ ウト・シュミット』のアレクサンダー・ペイン。 この映画もアメリカが好むロードムービーの一つであり、過剰なまでの成功を 求めるアメリカという国のマインドを反映している。主人公のマイルスは、英語 (アメリカでは国語ですね)教師というインテリジェンスで固い職業に就いていなが らも、小説を出版できない自分を「海に吐き出される汚物=無価値」だと感じている。 上昇することへの思い入れが強い余りに、失敗したり、「負け犬」と呼ばれることを 恐怖しているマイルスが痛々しい。彼は本能よりも、頭で考えて生きているのだ。 『リトル・ミス・サンシャイン』とこの映画が似ている、と聞き、なかなか手が伸び なかった本作を観てみる気になったのだが、なるほど、一見「敗北者」な主人公たち の人生をシビアに切り捨てない視線には、共通するものがあると思う。 対するジャックは、本能剥き出し、「女とやる」ことが一番。嘘がばれて鼻を折ら れようと、痛み止めを飲みながらでも一夜の相手を探す。「俺にはこれが全てだ。俺 のウズキをわかってくれ」そこまで言うか・・。勝手にやってろ(笑)。 主演のポール・ジアマッティとトーマス・ヘイデン・チャーチの演技が素晴ら しくいい。ワインおたくな「哀愁の薀蓄王」マイルスに降りかかる不幸の数々、その 度にジアマッティの顔に浮かぶ悲しみと諦念がすっごくリアル。軽々しく生きて いるように見えるジャックも、婚約者に捨てられたら自分には何も残らないとむ せび泣く。彼もまた、敗者となることへの過剰な恐れを抱いているのだ。そんな 親友のために、住居不法侵入の危険を冒して一肌脱ぎ、愛車を大破させるマイル ス。ええ男や・・。旅の終わり、一瞬の間を置いて抱き合う二人が絶妙だ。 ![]() 「あきらめるなよ 俺にはそんなうまく書けねーよ」 「俺にも無理さ ブコウスキーをパクッたんだ」 別れた妻に未練タラタラだったり、新しい恋になかなか踏み出せないマイルス を、私は笑えない。いや、大笑いしながらも、めちゃめちゃ身につまされる。人生 半ばにさしかかり、「何も成し遂げていない」という焦り。「ピークを境にワインは ゆっくりと坂を下り始める。そんな味わいも捨てがたいわ」最高の理解者を目の前 にしながら、抱き寄せる勇気と行動力がない、考え過ぎてしまう哀しさ・・。 それでも最後には、自分の意志でドアをノックするマイルス。語り過ぎない、観 るものに委ねる終わり方がまた、ニクイのだ。 脚本は、日本語字幕でも十分その素晴らしさが味わえる。シリアスとコミカル なパートを切り分ける、作劇のバランスが見事。コメディタッチに流れすぎない、 大人のための上質な映画に仕上がっている。傑作です。 (『サイドウェイ』監督・脚本:アレクサンダー・ペイン/ 主演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ/2004・USA) ![]() |
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| 真紅のthinkingdays |
いつまでも青臭い映画好きでいたいのです(名前は紅いんですが)。 観た映画と読んだ本の覚え書き。 記事は基本的にネタバレありです。 どうぞご贔屓に♪
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