破壊の申し子~『ディストラクション・ベイビーズ』
ディストラクション・ベイビーズ

 松山市西部の港町・三津浜。そこでケンカに明け暮れていた泰良(柳楽優弥)
は、ある日突然姿を消す。弟の将太(村上虹郎)は兄を探して、松山の繁華街
と向かう。

 「楽しければええけん」

 街を彷徨い、とり憑かれたように殴り殴られ、血を流しても、倒れても何度で
も喧嘩を吹っ掛ける
。そこには大義名分どころか、言葉も理由もない。ただ殴り、
ただ殴られるだけ
。そんな怪物のような男と、その男に魅入られた少年。理解を
超えた 「暴力」 の凄まじさと、人間の業について否応なく考えさせられる作品。
過激で不気味な主人公を、ほとんどセリフのない柳楽優弥怪演し、その主人
公の威を借って粗暴な行動をエスカレートさせてゆく高校生・裕也菅田将暉
演じている。彼らの犯罪に巻き込まれるキャバ嬢・那奈小松菜奈女優開眼
かな。身寄りのない兄弟を引き取り、住まわせていた男を演じたでんでんも貫禄
たっぷり。他に池松壮亮の顔も。豪華キャストを束ねた監督真利子哲也

 「あんた、スゲエな! 俺と面白いことしようや」

ディストラクション・ベイビーズ2

 不協和音とともに始まるオープニングは、不快で不穏な物語を予感させる。
『ブラタモリ』 にも登場した渡しが今も残る、田舎の小さな港町。松山は、四国
の中でも瀬戸内側の温暖な風土で、太平洋に面した高知や徳島よりも穏やか
な印象
がある。どちらかと言えば、小説 『坊ちゃん』 や 『坂の上の雲』俳句
甲子園
など、文学的なイメージが強い。その街で、真利子監督が強烈なバイオ
レンス
を感じ取り、この映画を全編オールロケで撮った、というのはとても興味
深い。もしかしたら、私が感じている 「イメージ」 とは、対外的に 「造られた」 
もの
なのかもしれない。

 本作を語る評の多くが、「衝動」 という言葉を使っていることに、私は違和感
を覚える。衝動? 登場人物たちは、全くの本能のみで動いているように見え
た。理解不能な、破壊の申し子たち。彼らを肯定はできないけれど、この映画
を否定することはできない


ディストラクション・ベイビーズ3

 むき出しの暴力を描きながら、性的な暴力表現は避けているところに、監督
の青さ
善性があるようで、私は好感する。観る人を選ぶ映画ではあるけれど、
観る価値のある映画だと、私は思う。

 ( 『ディストラクション・ベイビーズ』 監督・共同脚本:真利子哲也
        主演:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎/2016・日本)
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[2016/06/01 07:52] | 映画 | トラックバック(9) | コメント(6) |
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コメント
真紅さん☆
とても気になっていた映画ですが、なかなか踏ん切りがつかず・・・
監督はあのような温暖な地で、どんなバイオレンスを感じ取ったというのでしょうね~?
住んでいる人間もどうしたらこんなに伸びやかに育つのかと思う様な温暖な人ばかりの地域なのに~~と、不思議に思っていました。
[2016/06/06 23:44] URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2 [ 編集 ]
ノルウェーまだ~むさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
この映画、オール松山ロケですので是非パパンさまとご覧になって下さい!
道後温泉とか松山城とか、故意にだと思うのですが「絵になる」場所は映っていませんが。
ちょっと松山のイメージが変わる映画だと思います。
キャストもいいですよ。。特に小松菜奈が、ただのかわいこちゃん演技より全然いいです。
[2016/06/08 04:58] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんは。
真紅さんの評を拝見して、これはみとこ!と思って行ってきました。またしても梅田の地下に(笑)

これは見てよかったです。
いまそのものじゃん、と感心しました。
性的なものをわざと外してる、という視点、確かにそうですね!!
松山、去年行ったときに、なんか映画撮影誘致をしてるみたいなパンフをもらった気もします。あと、監督と共同脚本に名を連ねてる方が、愛媛出身のようなので、それでなのかな?とかいろいろ思いつつ、暴力そのものについて、いろいろ感じた作品でした。
[2016/06/16 00:01] URL | 武田 #- [ 編集 ]
武田さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おお、またしてもあの息苦しい空間に(笑)。
でも観ていただいてうれしいです。
万人受けする内容ではないと思いますが、金太郎飴みたいな映画ばっかりじゃ面白くないですよね。
監督が、採算は度外視して、自分の撮りたいものを撮ってこそだと思います。
こういう映画は微力ですが応援したいですね。

監督が、共同脚本の方が松山出身だと知りアプローチされたそうですよ。
実際、監督は主役のモデルになった男性と松山で知り合い、そこから生まれた作品だとか・・・。
喧嘩御輿のことは知らなかったので、意外な土壌があったのだな~、と思いました。
ほんと、私も観てよかったです。
[2016/06/16 11:56] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2016/06/17 20:10] | # [ 編集 ]
鍵コメさん、ありがとうございます♪
四国もいろいろですよね。先日両親が久万高原というところに所用で行ったらしいのですが、
いろんな意味で素晴らしくいいところだったと申しておりました。
私も行ってみたいなー。
少し更新休むのですが、またお伺いしますね。
[2016/06/18 13:46] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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