受難/寛容/再生~『孤独のススメ』

MATTERHORN
オランダの小さな村で独り暮らすフレッド(トン・カス)は、バッハを聴き、毎日
定刻に食事し、日曜には教会に行く。いかにも厳格で堅物な彼のところに、
テオ(ルネ・ファント・ホフ)という謎の男がやってくる・・・。
「演奏は難しくはない。しかるべき時に、しかるべき鍵盤を叩きさえすればいいのだ」
(ヨハン・ゼバスティアン・バッハ) いやいやバッハさん、そんな簡単に言われても・・・。
合作でないオランダ映画、って初めて観たかもしれない。劇場で見かけた
(カウリスマキっぽい)フライヤーは気になっていたが、ある方のTwitterで
のオススメを読んでGWに鑑賞。原題は「マッターホルン」。邦題とは真逆の、
人生における受難と寛容、再生の物語。オススメ!

食事の前には必ず祈りを捧げ、壁の写真を見上げるフレッド。そこには、
美しい妻とまだ幼い息子がいる。妻は事故死し、息子は家を出たらしい。
椅子にきちんと腰かけ、マタイ受難曲を再生しているテープには 「ヨハン
8歳」 という文字が読みとれる。 「息子は天使の声を持っていた」
氏素性はおろか、言葉もろくに発しないテオを家に招き入れたフレッドは、
寂しかったのだろうか。テオの身なりを整えてやり、「善きサマリア人だな」
と嫌味を言われながらも、教会に連れて行く。テオにサッカーを教え、テー
ブルマナーを教え、エコバッグ(かわいい!)を持ってバスに乗り、スーパー
マーケットへお買い物に行く。子どもたちを前に余興を披露するふたり。
しかし、小さく閉鎖的な村で、人々は二人を好奇の眼差しで見ていた。「ソ
ドムとゴモラ」。

フレッドとテオ、それぞれの事情が徐々に明らかになり、フレッドが抱え
ていた苦しみは 「This is My Life」 の歌声と共に解放される。テオは
天使ではない。しかし彼と出逢い、フレッドは宗教も世間体も超えて、人を
愛することを理解したのだ。ありのままに、心に従えばいいのだと。これも
また、父と息子の物語だといえるだろう。
しかしこの邦題は一体・・・。意味不明。酷過ぎる。
( 『孤独のススメ』 監督・脚本:ディーデリク・エビンゲ/
主演:トン・カス、ルネ・ファント・ホフ/2013・オランダ)
- 関連記事
-
- 大暴走~『COP CAR/コップ・カー』 (2016/05/18)
- 受難/寛容/再生~『孤独のススメ』 (2016/05/13)
- 青木ヶ原樹海~『追憶の森』 (2016/05/12)
スポンサーサイト
trackback
オランダ
コメディ&ドラマ
監督:ディーデリク・エビンゲ
出演:トン・カス
ルネ・ファント・ホフ
ポーギー・フランセン
アリーアネ・ ...
2016-05-13 10:40 :
風情☭の不安多事な冒険 Part.5
公式サイト。原題:Matterhorn。オランダ映画。ディーデリク・エビンゲ監督・脚本。トン・カス、ルネ・ファント・ホフ、ポーギー・フランセン、アリーアネ・シュルター、ヘルマート・ ...
2016-05-13 13:35 :
佐藤秀の徒然幻視録
『孤独のススメ』を新宿シネマカリテで見ました。
(1)久しぶりにオランダ映画(注1)を見ようと思い、映画館に行ってきました。
本作(注2)の冒頭では、オランダの田園地帯を走るバスが映しだされ、「演奏は難しくない。正しい鍵盤を正しい時に叩けばいい」という...
2016-05-13 18:11 :
映画的・絵画的・音楽的
「Matterhorn」2013 オランダ
オランダののどかな田舎町で一人暮らすフレッドは最愛の妻を亡くした男やもめ。ある日、ひょんなことから中年の男との同居生活が始まる...
フレッドにトン・カス。
テオにルネ・ファント・ホフ。
カンプスにポーギー・フランセン。
サスキアに「人生はマラソンだ!/2012」のアリーアネ・シュルター。
ヨハンにアレックス・クラーセン。
監...
2016-05-13 21:23 :
ヨーロッパ映画を観よう!
オランダの田園地帯の村。 初老の男フレッドは、判で押したような規則正しい生活を送っている。 毎日同じメニューで、食事の相手は壁に飾られた妻と息子の写真だけ。 そんなフレッドの村に、無精ひげを生やし、あまり会話の通じない男テオが迷い込んできた。 男に金をせびられたフレッドは、彼に庭掃除を命じ、夕食を与えることに。 二人の奇妙な共同生活が始まったが…。 コメディ。
2016-05-14 09:47 :
象のロケット
原題 Matterhorn2013年 オランダ
オランダの田舎町に暮らすフレッド(トン・カス)毎日同じ時間に祈りを捧げ、食事を摂り、男やもめながら、身だしなみはきちんとしているし家の中も綺麗に片付けられています人付き合いも少なく、ひっそりと暮らしていた彼の前に...
2016-05-14 13:23 :
読書と映画とガーデニング
【概略】
オランダの田舎町。妻に先立たれた初老のフレッドは、人との繋がりを極力排して静かに暮らしていた。そんなある日、彼の下に言葉も過去も持たない男・テオが現れる。
ドラマ
フレッドは、家族もなく友達もいない孤独な初老の男。彼の人生は、帰宅後にお気に入りの椅子でコーヒーを飲みながら、絶縁した息子が歌う「マリア」のテープを聴き、6時ちょうどに祈りを捧げてからメニューの変わら...
2017-01-15 09:44 :
いやいやえん
コメントの投稿
こんにちは♪
封建的な小さな村だと好奇な目で見られるだろうし、
そこに宗教が絡むからなおさら厄介ですよね。
フレッドがありのままを受け入れればイイに気づい
て心の扉を開いて前にすすむ、憑きものがおちたよ
な姿は観ていてとても清々しかったです♪ (゚▽゚)v
作品が素晴らしいだけに邦題のヒドさ際立つしで、
なんかもったいないですよね。
封建的な小さな村だと好奇な目で見られるだろうし、
そこに宗教が絡むからなおさら厄介ですよね。
フレッドがありのままを受け入れればイイに気づい
て心の扉を開いて前にすすむ、憑きものがおちたよ
な姿は観ていてとても清々しかったです♪ (゚▽゚)v
作品が素晴らしいだけに邦題のヒドさ際立つしで、
なんかもったいないですよね。
2016-05-15 14:07 :
風情☭ URL :
編集
風情♪さん、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
>そこに宗教が絡むからなおさら厄介
この映画、キリスト教の知識があったほうがより分かりやすいですよね。
私はほぼ知識ゼロなので、「善きサマリア人」とか後でググりました(恥)。
いろいろと進んでいるように思っていたオランダでも、同性愛は嫌悪われるんだ、、、って思いました。
ホント、邦題酷過ぎですよ。。
昨年の『おみおくりの作法』に引き続き、ワースト邦題ですね。
>そこに宗教が絡むからなおさら厄介
この映画、キリスト教の知識があったほうがより分かりやすいですよね。
私はほぼ知識ゼロなので、「善きサマリア人」とか後でググりました(恥)。
いろいろと進んでいるように思っていたオランダでも、同性愛は嫌悪われるんだ、、、って思いました。
ホント、邦題酷過ぎですよ。。
昨年の『おみおくりの作法』に引き続き、ワースト邦題ですね。