青木ヶ原樹海~『追憶の森』

THE SEA OF TREES
アメリカから片道切符で日本にやってきたアーサー(マシュー・マコノヒー)
は、富士山麓の青木ヶ原樹海にやってくる。そこで彼は、満身創痍で道に迷
い、助けを求めるナカムラ・タクミと名乗る男(渡辺謙)と出逢い、森の出口を
探して行動を共にするのだが・・・。
カンヌ映画祭で悪評が立ち、本国アメリカでは公開日が未定だという本作。
しかしガス・ヴァン・サントは好きな監督だし、主演がマシュー・マコノヒーなら
ばそんなに酷い代物にはなるはずがない、と信じて鑑賞。う~ん、私は観た
映画の点数は付けないけれど、10点満点で5点という感じかな。嫌いではな
いけどオススメもしない。敢えて言うなら、ちょっと 「弱い」 作品ですね。

樹海で彷徨うアーサーは、過ぎた日々を回想する。アルコール依存症の妻
ジョーン(ナオミ・ワッツ)は、酔っては夫を罵倒していた。大学教師のアーサー
に対し、稼ぎが悪い、アカデミックな仕事? 年収2万ドルのくせにふざけんな
よ、と。何この奥さん? と眉をひそめて観ていると、実は彼女の怒りはお金
の問題ではなく、アーサーの過去の浮気が元凶なのだとわかってくる。
私がこの作品を 「弱い」 と感じた理由はいろいろある。ジョーンの病気が
発覚した途端、瞬く間に修復する夫婦関係。生徒たちに慕われ、やりがいの
ある仕事を放棄してまで、アーサーは死のうとするだろうか? 妻の好きな季
節や、好きな色を知らなかったというだけの理由で? しかもネットでたまたま
見つけた、遥か遠くの日本まで来て。更に困ったことに、アーサーは樹海でナ
カムラ・タクミに出逢った瞬間、死ぬ気が失せているように見える。登場人物
の行動の動機が弱く、観ていてあまり居心地がよくないのだ。

ナカムラ・タクミが 「煉獄」 だと言う青木ヶ原樹海。自殺が多いとは知っ
ていたけれど、あんな風に遺体が放置されている様はショッキングだった。
人は死んでも、愛する人の側にいる--。映画で伝えたいメッセージと、
自死を選んだ人々とのギャップを感じて、少しやるせない。
( 『追憶の森』 監督:ガス・ヴァン・サント/2015・USA/
主演:マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ)
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公式サイト。原題:The Sea of Trees。ガス・ヴァン・サント監督。マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ、ジェームズ・サイトウ、玄理。アメリカ人のアーサー(マシュー・マコノ ...
2016-05-12 21:38 :
佐藤秀の徒然幻視録
富士のふもと青木ケ原樹海を舞台に、マシュー・マコノヒー、渡辺謙の演技合戦が見られます。ただ、抑制されすぎているうえ、映画での死生観が、ちょっと自分にはよく分からなかったかな。 作品情報 2015年アメリカ映画 監督:ガス・ヴァン・サント 出演:マシュー…
2016-05-12 21:39 :
映画好きパパの鑑賞日記
評価:★★★【3点】(11)
せっかく映画の日で安いんだからってことで本作をチョイス!
2016-05-12 21:39 :
映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ〜
映画『追憶の森』は原題が“The Sea of Trees”。樹海ですね。舞台は
2016-05-12 22:29 :
大江戸時夫の東京温度
「ありがとう」と伝えたくて…。
何とも地味な映画です。青木ヶ原樹海でのお話とはいえ、本当に舞台劇のような俳優の演技力がモノを言う映画です。それゆえに映画的演出も少なさ ...
2016-05-12 22:49 :
こねたみっくす
富士山山麓の青木ヶ原樹海を舞台にした、一度は人生を諦めかけた男の再生をめぐる物語。
いやぁ、青木ヶ原樹海では磁石が狂うという伝説がまだ信じられているんですねぇ。しかもそれが、ハリウッド映画の設定にまでなるとは。実際に磁石が来るって、どこにいるか判らなく...
2016-05-12 22:49 :
勝手に映画評
『ミルク』などのガス・ヴァン・サント監督が、「The Black List 2013」(製作前の優秀脚本)に選出された脚本を映画化。死に場所を求めて青木ヶ原樹海にやって来たアメリカ人男性が、自殺を思いとどまり樹海からの脱出を試みる日本人男性と出会ったことで、人生を見つめ...
2016-05-13 12:13 :
パピとママ映画のblog
【THE SEA OF TREES】 2016/04/29公開 アメリカ 111分監督:ガス・ヴァン・サント出演:マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ
全ての謎が解けた時、あたたかな涙があふれる感動のミステリー
愛は思わぬところで、あなたを待っている。
STORY:人生に深く絶望し...
2016-05-13 13:49 :
★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★
☆☆☆☆- (10段階評価で 8)
5月5日(木・祝) 109シネマズHAT神戸 シアター3にて 11:55の回を鑑賞。
2016-05-13 20:31 :
みはいる・BのB
『マイ・プライベート・アイダホ』『エレファント』などのガス・ヴァン・サント監督の最新作。原題は「The Sea of Trees」。
富士山麓に広がる青木ケ原樹海を舞台にした作品。
アメリカから片道切符で日本へやってきたアーサー・ブレナン(マシュー・マコノヒー)は青木ケ原樹海へと向かう。アーサーはそこを死に場所として選んではるばるやってきたのだ。薄暗い樹海の奥にある光の...
2016-05-13 22:15 :
映画批評的妄想覚え書き/日々是口実
知らなかった妻の事 公式サイト http://tsuiokunomori.jp4月29日公開 監督: ガス・ヴァン・サント 「ミルク」 「永遠の僕たち」 「プロミスト・ランド」 アメリカから富士山麓
2016-05-13 22:36 :
風に吹かれて
富士山の北西に広がる青木ヶ原樹海の森。 この地を訪れたアメリカ人男性アーサーの目的は、永遠の眠りにつくことだった。 死の準備を始めた彼の前に、怪我をした日本人男性タクミが現れる。 見かねたアーサーは、薬にふらつきながらもタクミを森の出口へ案内しようとするが、方向感覚を失った二人は森をさまようことに…。 ドラマティック・ミステリー。
2016-05-14 00:46 :
象のロケット
1日のことですが、映画「追憶の森」を鑑賞しました。
アメリカ人男性アーサーは自殺を決意し青木ヶ原樹海を訪れるが森の奥深くでけがを負った日本人男性タクミと出会う
アーサーと同じく死のうと来たが考え直し 出口を求めてさまよっていた アーサーは放っておけず一緒...
2016-05-19 21:04 :
笑う社会人の生活
もうなかなかの年月を生きてきて、色んな事を経験して、本を読んで映画を観て、自分の知らない世界の事も垣間見たような気になって、社会生活ではその場その場でのお作法も学んで、物事を大人として客観的に見たり俯瞰で見たりする訓練を経て、想定内やいつか来た道だと思う事が増え、斜に構えたり、冷静を装ったり、時には多勢に無勢でやり過ごしたり、強く何かを願う事が稀になってきたり、まあいいかと諦める事が増えたり...
2016-05-20 12:56 :
ここなつ映画レビュー
今やアカデミー俳優と呼ばれるようになったマコ様こと、
マシュー・マコノヒー✖︎日本を代表する国際派俳優、渡辺謙✖︎ガス・ヴァン・サント監督作品。
(「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」「エレファント」「ミルク」「誘う女」...
2016-05-26 00:58 :
我想一個人映画美的女人blog
☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督ガス・ヴァン・サント
ネタバレあり
2018-04-22 09:10 :
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]