りりィ(・シュシュ)の子どもたち~『リップヴァンウィンクルの花嫁』
リップヴァンウィンクルの花嫁

 岩手県花巻市出身皆川七海(黒木華)は、東京で派遣教員をしながらコン
ビニでもバイトをしている内気な女性。地元出身の作家・宮沢賢治が好きな彼
女のHNは ”クラムボン”SNSで知り合った鉄也(地曵豪)結婚することに
なったものの、親戚が少ない七海は、これもSNSで知り合った ”ランバラル” 
こと、何でも屋安室行舛(綾野剛)代理出席を依頼するのだったが・・・。

 岩井俊二監督の新作。彼の映画を劇場鑑賞するのは初めて。なんと180分
の長尺であるが、エンドロールが始まった瞬間 「えっ! もう終わり?」 と思
ったほど引き込まれた。誇張ではなく、全く長さを感じないリアルとネットが等
に描かれ、善と悪、嘘と希望と愛が混沌と描かれる様はまるで リリィ・シュ
シュのすべて
 であの教室にいた生徒たちの 「その後」 のよう。岩井ワール
ド全開
力作

 「ランバラルの友だちですから」

リップヴァンウィンクルの花嫁2

 SNSだけが頼りで、「えっ、、と、、、」 「あのう、、、」 「私なんか、、」 と、妙
自己評価の低い七海に、前半はイライラさせられっ放し。しかし、里中真白
(Cocco)
が登場した辺りから、物語は能動的に動き始める。

 田舎の出であること。母の出奔によって両親が離婚したこと。正採用の教師
になれないこと。この世界に引け目を感じながら生きている七海に、安室は
のように近づく。胡散臭さ全開(褒めてます)の綾野剛が、超ハマり役。そし
Coccoの演技も、鳥肌が立つほど素晴らしい

 「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」

 紀里谷和明フジテレビのアナウンサーを登場させ、「いかにもフェイク」 を
強調する演出は、いいのか悪いのか。しかしそこが敢えての 「狙い」 なのか
も、と思ったり。個人的には、中島ひろ子(ウェディングドレス店のマヌカン)
澤興人(葬儀屋)
のキャスティングには 「そう来るか!」 と唸ってしまった。

リップヴァンウィンクルの花嫁3

 真白の母(りりィ)と喪服を脱ぎ捨てて慟哭した安室は、憑きものが落ちた
かのように、最後の場面ではまるで天使のよう。物語の最初から最後まで
七海と繋がっていた唯一の存在はオンライン家庭教師先の生徒
であり、彼
女への接し方で、七海の成長を感じる。西洋版 「浦島太郎」 だというリップ
ヴァンウィンクル
真白のHN。七海は真白の花嫁であり、夢現の時間を過
ごした七海がリップヴァンウィンクルのようでもあり、その時間を同伴した観
客たる私たち
もまた、リップヴァンウィンクルなのかもしれない

 クラシック音楽がメインの劇伴は名曲揃い。サウンドトラックが欲しくなっ
た。長尺をものともせず、自らの作家性を貫き通した映画監督・岩井俊二に
拍手


 ( 『リップヴァンウィンクルの花嫁』 監督・脚本:岩井俊二
           主演:黒木華、綾野剛、Cocco、りりィ/2016・日本)
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

[2016/04/24 19:17] | 映画 | トラックバック(15) | コメント(0) |
<<ハロー、世界。~『ルーム』 | ホーム | 国境の南~『ボーダーライン』>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://thinkingdays.blog42.fc2.com/tb.php/1731-15680f82
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
『リップヴァンウィンクルの花嫁』 陶酔しきった3時間
 『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『花とアリス殺人事件』などの岩井俊二監督の最新作。ちなみに岩井俊二は原作・脚本・編集もこなしている。    七海(黒木華)はごく普通の女の子。大学を卒業して臨時教員をしているけれど、声が小さいことを生徒たちにからかわれるようなどんくさい部分もある。あまり自己主張というものがなく、他人の意見に何となく流されてしまう。  SNSで見つけた...
[2016/04/24 20:18] 映画批評的妄想覚え書き/日々是口実
リップヴァンウィンクルの花嫁
 久々の岩井俊二監督が黒木華を新たなミューズに迎えた新作。なんとも言えない不思議な世界に、黒木、綾野剛の演技は見応えがあったけど、BGMがちょっとうるさかった点がマイナスでした。  作品情報 2016年日本映画 監督:岩井俊二 出演:黒木華、綾野剛、Cocco 上…
[2016/04/24 20:25] 映画好きパパの鑑賞日記
リップヴァンウィンクルの花嫁
 『リップヴァンウィンクルの花嫁』をユーロスペースで見ました。 (1)評判の高さを聞いて映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭では、人々が大勢道路を歩いていて、その間にいた皆川七海(黒木華)がポストの前で立ち止まって、携帯を手にしながら、もう一方の...
[2016/04/24 20:34] 映画的・絵画的・音楽的
「リップヴァンウィンクルの花嫁」SNSで知り合った先に知った依頼人に選ばれた数奇な運命を歩んだ女性が辿り着いた最後の花嫁
「リップヴァンウィンクルの花嫁」は非常勤教師の女性がSNSで出逢った同じ教師を仕事にする人と出逢って結婚するも、結婚相手の浮気を自らの浮気とされて離婚する事になりその時に ...
[2016/04/24 20:49] オールマイティにコメンテート
「リップヴァンウィンクルの花嫁」
2016年・日本/ロックウェルアイズ 配給:東映 監督:岩井俊二 原作:岩井俊二 脚本:岩井俊二エグゼクティブプロデューサー:杉田成道プロデューサー:宮川朋之、水野昌、紀伊宗之 撮影:神戸千木 「花と
[2016/04/24 21:07] お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法
リップヴァンウィンクルの花嫁
目覚めるべき現実はもはやない茶番の現実 公式サイト。岩井俊二原作・監督。黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪、毬谷友子、和田聰宏、佐生有語、夏目ナナ、金田明夫、りりィ ...
[2016/04/24 21:14] 佐藤秀の徒然幻視録
「リップヴァンウィンクルの花嫁」:まさに岩井俊二的傑作
『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、岩井俊二が国内で撮った長編実写映画としては、
[2016/04/24 21:31] 大江戸時夫の東京温度
リップヴァンウィンクルの花嫁
東京で働く派遣教員・皆川七海はSNSで知り合った鉄也と結婚することになり、自分側の招待客が少ないため、なんでも屋の男・安室に式の代理出席者の手配を依頼する。 新婚早々に鉄也の浮気が発覚するが、義母から逆に浮気の罪をかぶせられ、家を追い出されてしまう。 路頭に迷った七海に手を差し伸べたのは、安室だった。 結婚式の代理出席の次に彼から斡旋された仕事は住み込みのメイドで、何と報酬は100万円だとい...
[2016/04/26 23:22] 象のロケット
リップヴァンウィンクルの花嫁・・・・・評価額1750円
なぜ彼女は、フォークロアの住人となったのか。 残酷で切なく美しい、3時間の大力作。 異才・岩井俊二監督が、「花とアリス」以来12年ぶりに国内で発表した長編実写映画は、驚くべき密度を持った作品だ。 東京で派遣の教師をしている主人公が、厳しい現実によって人生どん底にまで追い詰められ、奇妙な便利屋の導きによって、不思議な世界へと足を踏み入れる。 人はどうしたら幸せになれるのか?幸せはど...
[2016/04/26 23:38] ノラネコの呑んで観るシネマ
『リップヴァンウィンクルの花嫁』岩井俊二監督、黒木華、Cocco、綾野剛、他
『リップヴァンウィンクルの花嫁』 監督 : 岩井俊二出演 : 黒木華、Cocco綾野剛、原日出子地曵豪、毬谷友子和田聰宏、佐生有語夏目ナナ、金田明夫りりィ、他物語・東京で派遣教員をしている皆川七海(黒
[2016/04/27 21:10] 映画雑記・COLOR of CINEMA
リップヴァンウィンクルの花嫁 ★★★★
「Love Letter」「花とアリス」の岩井俊二監督が「小さいおうち」「母と暮せば」の黒木華を主演に迎え、一人の若い女性の心の彷徨と成長を見つめたドラマ。現代の日本を舞台に、ふとしたことから“普通の人生”を踏み外してしまった世間知らずのヒロインが、周囲に流される...
[2016/04/28 19:40] パピとママ映画のblog
よく知らない人をよく知ってしまった時。『リップヴァンウィンクルの花嫁』
岩井俊二監督の最新作です。
[2016/04/30 16:05] 水曜日のシネマ日記
リップヴァンウィンクルの花嫁 (2016)
最初は、3時間を超える長尺にたじろいだのですが、全然、長さを感じませんでした。音楽と映像が美しく、独自の岩井ワールドの空気に、思わず、うっとり。それに、後半で強烈なインパクトを放つ里中真白が、ミュージシャンのCoccoと思わず「こんな強烈な女優さん、いたっけ?」と素朴に感じたゆえ、エンドテロップで知り、驚嘆。「スワロウテイル」における、CHARAの起用と同じ位、眼力!です黒木華と綾野剛めあて...
[2017/05/17 09:45] のほほん便り
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
リップヴァンウィンクルの花嫁 派遣教員がSNSで知り合った男性と結婚 義母に浮気の罪を被せられ、家を追い出され離婚 何でも屋の仲介でメイドの仕事を始めるが... 【個人評価:★★☆ (2.5P)】 (自宅鑑賞)
[2017/05/22 00:42] cinema-days 映画な日々
映画評「リップヴァンウィンクルの花嫁」
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2016年日本映画 監督・岩井俊二 ネタバレあり
[2017/05/22 09:45] プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

Recent Entries

Categories

What's New?

真紅

Author:真紅
Every cloud has a silver lining.

Recent Comments

Recent TrackBacks

Archives

My Favorite

Search this site

RSS

Thank You!