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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

りりィ(・シュシュ)の子どもたち~『リップヴァンウィンクルの花嫁』

リップヴァンウィンクルの花嫁

 岩手県花巻市出身皆川七海(黒木華)は、東京で派遣教員をしながらコン
ビニでもバイトをしている内気な女性。地元出身の作家・宮沢賢治が好きな彼
女のHNは ”クラムボン”SNSで知り合った鉄也(地曵豪)結婚することに
なったものの、親戚が少ない七海は、これもSNSで知り合った ”ランバラル” 
こと、何でも屋安室行舛(綾野剛)代理出席を依頼するのだったが・・・。

 岩井俊二監督の新作。彼の映画を劇場鑑賞するのは初めて。なんと180分
の長尺であるが、エンドロールが始まった瞬間 「えっ! もう終わり?」 と思
ったほど引き込まれた。誇張ではなく、全く長さを感じないリアルとネットが等
に描かれ、善と悪、嘘と希望と愛が混沌と描かれる様はまるで リリィ・シュ
シュのすべて
 であの教室にいた生徒たちの 「その後」 のよう。岩井ワール
ド全開
力作

 「ランバラルの友だちですから」

リップヴァンウィンクルの花嫁2

 SNSだけが頼りで、「えっ、、と、、、」 「あのう、、、」 「私なんか、、」 と、妙
自己評価の低い七海に、前半はイライラさせられっ放し。しかし、里中真白
(Cocco)
が登場した辺りから、物語は能動的に動き始める。

 田舎の出であること。母の出奔によって両親が離婚したこと。正採用の教師
になれないこと。この世界に引け目を感じながら生きている七海に、安室は
のように近づく。胡散臭さ全開(褒めてます)の綾野剛が、超ハマり役。そし
Coccoの演技も、鳥肌が立つほど素晴らしい

 「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」

 紀里谷和明フジテレビのアナウンサーを登場させ、「いかにもフェイク」 を
強調する演出は、いいのか悪いのか。しかしそこが敢えての 「狙い」 なのか
も、と思ったり。個人的には、中島ひろ子(ウェディングドレス店のマヌカン)
澤興人(葬儀屋)
のキャスティングには 「そう来るか!」 と唸ってしまった。

リップヴァンウィンクルの花嫁3

 真白の母(りりィ)と喪服を脱ぎ捨てて慟哭した安室は、憑きものが落ちた
かのように、最後の場面ではまるで天使のよう。物語の最初から最後まで
七海と繋がっていた唯一の存在はオンライン家庭教師先の生徒
であり、彼
女への接し方で、七海の成長を感じる。西洋版 「浦島太郎」 だというリップ
ヴァンウィンクル
真白のHN。七海は真白の花嫁であり、夢現の時間を過
ごした七海がリップヴァンウィンクルのようでもあり、その時間を同伴した観
客たる私たち
もまた、リップヴァンウィンクルなのかもしれない

 クラシック音楽がメインの劇伴は名曲揃い。サウンドトラックが欲しくなっ
た。長尺をものともせず、自らの作家性を貫き通した映画監督・岩井俊二に
拍手


 ( 『リップヴァンウィンクルの花嫁』 監督・脚本:岩井俊二
           主演:黒木華、綾野剛、Cocco、りりィ/2016・日本)
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2016-04-24 : 映画 : コメント : 0 : トラックバック : 15
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