ふたつの夢~『幸せをつかむ歌』

RICKI AND THE FLASH
小さなライブハウスで、“リッキー&ザ・フラッシュ”のギター兼ボーカルと
して夜毎ステージに立つリッキー(メリル・ストリープ)は、音楽という夢のた
めに離婚し、三人の子どもを捨てた過去を持つ。そんなリッキーの元に、娘
のジュリー(メイミー・ガマー)が離婚し、実家に引き籠っている、と元夫のピ
ート(ケヴィン・クライン)から連絡が入る。
メリル・ストリープ主演作、と聞いて、劇場へ駆け付けるほど彼女が好きな
わけではない。だけど、何故かこの映画は観たいと思った。その第六感(?)
は見事的中! 自分の人生を生きる中で、「子育て」 をどう位置付ければい
いのか。そのバランスに日々悩んでいる私には、どストライクな作品だった。
少しオールド・ファンションだけど、吹替えなしの音楽も素晴らしい!! リック
・スプリングフィールド! 60をとうに過ぎた、彼の演技に泣かされるとは・・・。
監督はジョナサン・デミ。そして脚本はディアブロ・コディ! なるほどね~。

ブッ飛んでいるように見えるリッキーが、共和党支持者(「ブッシュに2回も
投票した!」 「軍は大事よ」)でLGBTに非寛容、というのも妙にリアリティ
がある(そしてその理由もさり気なく描写される)。グレッグ(リック・スプリン
グフィールド)の求愛をなかなか受け入れられなかったリッキーは、ずっと
家族に負い目を感じていたのだろうか? あんなにも、好き勝手に生きて
いるように見える彼女でさえ?
ミック・ジャガーを引き合いに出し、女だけが子育てという呪縛に囚われ
ることをリッキーは嘆く。しかし、それは彼女自身が 「リッキー」 としての
夢=音楽だけでなく、「リンダ」 としての夢=母として家族を愛し、愛され
ること、を捨て切れていないということなのだ。「子どもを愛するのは、親の
義務だ!」 そう。自分の好きな生き方をして、結果子どもに愛想を尽かさ
れ、どんな扱いを受けようと、親は子どもを愛するものなのだ。それでいい
のだ。それだけで。

ギブソンを売ったってバンド全員分の旅費は無理だろう、とか、突っ込みど
ころももちろんある。邦題も相変わらず酷い。しかし、間違いなく観て元気に
なれる映画だった。ああ私も、自分の仕事したな~って思える人生にしよう、
と改めて感じたのだった。
( 『幸せをつかむ歌』 監督:ジョナサン・デミ/2015・USA/
主演:メリル・ストリープ、メイミー・ガマー、リック・スプリングフィールド)
- 関連記事
-
- 守護天使と炎上少女~『マジカル・ガール』 (2016/04/12)
- ふたつの夢~『幸せをつかむ歌』 (2016/04/08)
- 暗い・・・。~『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』 (2016/04/04)
スポンサーサイト
trackback
メリル・ストリープが家族を捨てたロックシンガーになり、家族の危機のときに戻ってくるというコメディですが、娘役に実娘のメイミー・ガマーを起用したり、なんか接待作品という感じ。「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミも年取ったなあ。 作品情報 2015年アメリカ…
2016-04-09 05:26 :
映画好きパパの鑑賞日記
ロサンゼルスにあるバーのハウスバンド“リッキー&ザ・フラッシュ”のメンバーとして、元気よくステージに立つ女性リンダは、貧乏ながらも充実した毎日を送っていた。 ある日、既に再婚している元夫ピートから連絡が入る。 離婚した娘ジュリーの力になって欲しいと言うのだ。 かつて3人の子どもたちを残して家を出たリンダは、数十年ぶりにインディアナへ帰郷するが…。 ヒューマンドラマ。
2016-04-09 05:42 :
象のロケット
メリル・ストリープさん、ロックバンド・シンガーになる!
2016-04-09 06:44 :
或る日の出来事
[メリル・ストリープ] ブログ村キーワード
“名女優”メリル・ストリープ熱唱!&実の母娘共演。「幸せをつかむ歌」(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)。母親のわがままで別れた母娘が、数十年振りの再会。果たして2人は、幸せをつかむことが出来るのでしょうか?
ミュージシャンになる夢を叶えるため、家族を捨てたリンダ(メリル・ストリープ)。“リッキー・レンダーゾ”と名乗り、...
2016-04-09 21:20 :
シネマ親父の“日々是妄言”
ミュージシャンになる夢を追って夫と3人の子供を捨てたリッキー(メリル・ストリープ)。
今は売れないバンド“リッキー&ザ・フラッシュ”のギター兼ボーカルとして、小さなライブハウスのステージに立つ日々。
ある日、元夫ピート(ケヴィン・クライン)から娘ジュリー(メイミー・ガマー)が離婚して実家に戻ってきて以来、憔悴したままだと連絡を受ける。
ジュリーの元に駆けつけたリッキーは、疎遠になっ...
2016-04-14 22:28 :
心のままに映画の風景
9日のことですが、映画「幸せをつかむ歌」を鑑賞しました。
夢だったロックスターへの道へ進むべく家族を捨てたリッキー 54歳になった現在は小さなライブハウスで歌う日々
ある日 元夫から娘ジュリーが離婚して落ち込んでいることを知らされる 娘を励まそうと20年ぶり...
2016-04-22 22:20 :
笑う社会人の生活
コメントの投稿
偏愛ですよ(笑)
真紅さんへ。
メリル・ストリープ主演作と聞いて、
劇場へ駆け付けるほど彼女が好きな僕です(笑)
もう偏愛40年近くにもなりますか……。
今回、残念だったのは、メリルが綺麗じゃなかったこと。
いつも組んでいるヘアメイクが担当していませんでしたね。
ジョナサン・デミはこんなもんじゃないハズ……。
邦題……ウゥ〜む、コメント控えます(苦笑)
「ルーム」とか「レヴェナント」とかこの作品とか、
最近、親子のことを描いた作品が気になります。
子供を持たない僕の人生はどこか半端で完結することがないのか?
普通は子供に向く愛情がどこか変なところに向かっていないか?
あれこれ考えてしまうこの頃です……。
ブノワ。
メリル・ストリープ主演作と聞いて、
劇場へ駆け付けるほど彼女が好きな僕です(笑)
もう偏愛40年近くにもなりますか……。
今回、残念だったのは、メリルが綺麗じゃなかったこと。
いつも組んでいるヘアメイクが担当していませんでしたね。
ジョナサン・デミはこんなもんじゃないハズ……。
邦題……ウゥ〜む、コメント控えます(苦笑)
「ルーム」とか「レヴェナント」とかこの作品とか、
最近、親子のことを描いた作品が気になります。
子供を持たない僕の人生はどこか半端で完結することがないのか?
普通は子供に向く愛情がどこか変なところに向かっていないか?
あれこれ考えてしまうこの頃です……。
ブノワ。
ブノワ。さん、そしてこちらにもありがとうございます。
確かに、メリルは綺麗じゃなかったですね~、メイクが(汗)。
まぁ、それも演出なのだとは思うのですが。
>子供を持たない僕の人生はどこか半端で完結することがないのか?
>普通は子供に向く愛情がどこか変なところに向かっていないか?
少し前に、女優さんの発言が話題になりましたよね。
「子どもを持たなかった人生に一片の後悔もない」
私は子どもがいますけれども、子どもがいない友人も、もちろんいます。
皆、自分の充実した人生を謳歌しています。少なくとも、私にはそう見えます。
私の母は、「生まれ変わったら子どもは産まずに、仕事して生きる」と口癖のように言っていました。
それは、娘に対するメッセージだったのだと今にして思います。鈍感な私はキャッチできませんでしたが。
>あれこれ考えてしまうこの頃です……。
↑の女優さんも、きっと考えていると私は思います。
自分の人生を、如何に生きるか。
子どもがいる私も、考え続けています。
たとえ永遠に答えは出なくても、ブノワ。さん、一緒に考え続けましょう。
確かに、メリルは綺麗じゃなかったですね~、メイクが(汗)。
まぁ、それも演出なのだとは思うのですが。
>子供を持たない僕の人生はどこか半端で完結することがないのか?
>普通は子供に向く愛情がどこか変なところに向かっていないか?
少し前に、女優さんの発言が話題になりましたよね。
「子どもを持たなかった人生に一片の後悔もない」
私は子どもがいますけれども、子どもがいない友人も、もちろんいます。
皆、自分の充実した人生を謳歌しています。少なくとも、私にはそう見えます。
私の母は、「生まれ変わったら子どもは産まずに、仕事して生きる」と口癖のように言っていました。
それは、娘に対するメッセージだったのだと今にして思います。鈍感な私はキャッチできませんでしたが。
>あれこれ考えてしまうこの頃です……。
↑の女優さんも、きっと考えていると私は思います。
自分の人生を、如何に生きるか。
子どもがいる私も、考え続けています。
たとえ永遠に答えは出なくても、ブノワ。さん、一緒に考え続けましょう。