闘う男~『ウォーリアー』
ウォーリアー







 WARRIOR


 かつて酒乱だった父(ニック・ノルティ)の元に、母と逃げた下の息子トミー
(トム・ハーディ)
14年ぶりに帰ってくる。上の息子ブレンダン(ジョエル・エ
ドガートン)
高校教師となり、妻と二人の娘に囲まれて幸せに暮らしてい
たが、ある問題を抱えていた。

 別々に生きてきた父と二人の息子が、格闘技の世界で再び対峙する。
去と現在、愛と憎しみ
が交錯し、血しぶきと骨の砕ける音にベートーベンの 
「歓喜の歌」 が谺する。過去を悔い改め、真人間になろうとあがく父の贖罪
闘うことでしか感情を表現できない、弟トミーの深い深い悲しみ。そんな弟を、
文字通り全身全霊で受け止める兄。崇高ささえ感じさせる肉体のぶつかり合
いは、俳優の演技という枠を超え、私の全感情を支配する。

 本作の演技により、ニック・ノルティ第84回アカデミー賞助演男優賞にノ
ミネート
されている。スリップ(断酒している人が酒を呑んでしまうこと)した時
の彼の演技は絶賛に値するが、あり得ないことに日本では未公開。WOWO
Wにて鑑賞、

ウォーリアー2

 余白のある物語っていいな、と思う。

 この映画では、主人公たちの過去に 「何が」 あったのか、詳細に語られ
ることはない。どうしてトミーは母と逃げたのか。父の酒乱がどれほど彼らを
痛めつけたのか。なのに何故、トミーは酒瓶を手に父の元へ戻ったのか。ト
ミーはイラクで、どんな経験をしたのか。母と弟を裏切ったとき、ブレンダンは
どんな気持ちだったのか。主人公たちは言葉少なに語り、観る者はその 「余
白」
 に思いを馳せ、ラストシーンの先にある彼らの 「その後」 について、考
え続けることになる。そしてまたひとつ、「心に残る映画」 が生まれる。

 撮影中、実際に骨折したというトム・ハーディの強靭な肉体そのものが、ト
ミー・コンロンという昏い瞳をした寡黙な人間を雄弁に語る。全てを失い、長
い年月を経ても家族を許せなかった彼は、暴力と紙一重の闘いに身を投じ
ながら、愛を乞うていた。ファースト・クレジットはジョエル・エドガートンに譲っ
ても、その存在感は圧倒的。ますます彼が好きになった。私のT

ウォーリアー3

 また本作は、傍流のエピソードもそれぞれ印象深い。ブレンダンと、旧友で
あるトレーナーのフランク(フランク・グリロ)との関係は、妻テス(ジェニファー
・モリソン)
が 「ボーイフレンド」 と揶揄するほどに深い。個人的にはテスに
対し、 「二人を邪魔するな!」 と思いながら観ていたが(違)。ブレンダンが
勤務する高校の校長の、笑えるほどの 「いい人」 ぶりや、「ミスター・C」 と
ブレンダンを慕う、かわいい生徒たち。『モビィ・ディック』 の朗読テープを聴
き続ける父。トミーと、亡き戦友の妻との交流。基本的に、悪人は登場しない
ところも清々しい。

 監督のギャヴィン・オコナーは、プロモーター・JJを演じてもいる。撮影開始
直前に亡くなった俳優の代役らしいが、俳優顔負けのオーラ。格闘技のこと
は、よくわからない私ではあるが、ファイトシーンは臨場感たっぷり。こんなに
素晴らしい作品が劇場公開されなかったことが、残念でたまらない。

 ( 『ウォーリアー』 監督・製作・原案・共同脚本:ギャヴィン・オコナー
      主演:ジョエル・エドガートン、トム・ハーディ、ニック・ノルティ/2011・USA)
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