虐げられたものたち~『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』

FEHER ISTEN
WHITE GOD
両親が離婚し、雑種犬ハーゲンを心のよりどころとする少女リリ(ジョーフィ
ア・プソッタ)は、母の仕事の都合で離れて暮らしていた父に預けられる。しか
し、父は雑種犬にのみ課せられた税金の支払いを拒否し、ハーゲンを捨てる。
カンヌ映画祭で 「ある視点」 部門グランプリと、パルムドッグ賞に輝いた
作品。予告を観て心惹かれた半面、辛そうな内容に鑑賞を迷っていたが、上
映終了ギリギリに思い切ってシアターへ。「圧巻」 だとか 「打ちのめされた」
とかいう表現はなるべく使いたくないと思っているが、それ以外に言葉が見つ
からない。間に合ってよかった。また一つ、凄い映画を観てしまった。

まず疑問に思ったのは、タイトル 「ホワイト・ゴッド」 の意味。ニューズウィ
ークのこちらの監督インタビューを読んで、いくつかの気になった撮影背景も
知ることができた。
犬たちの怒涛の反乱にぶちのめされる『ホワイト・ゴッド』
ハーゲンの怒りの表情などは、てっきりCGで加工したのだろうと思いながら
観ていたので、「一切CGは使っていない」 という監督の弁に驚き。一体、ど
うやって撮影したのだろう?
雑種犬たちが、この世界のあらゆる 「虐げられたもの」 の象徴であること
は、容易に理解できる。しかしハーゲンはじめ、登場する全ての犬たちの名前
がクレジットされるエンドロールを観れば、彼らは愛を持って撮影されたのだ
と信じることができる。正視するのが辛い、胸が痛むシーンも多いが、できれ
ば愛犬家の方々にこそ、観て欲しい作品だとも思う。

『草原の実験』 に続き、「一体どこから見つけてきたのか」 と思わずには
いられない、主人公の美少女っぷりが凄い。大人でも子どもでもない、この年
齢の少女だけが持ちうる 「神性」 のようなもの。そして彼女が奏でる音楽。
それらが、この寓意に満ちた作品に気高さとやさしさを与えている。
( 『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』 2014・ハンガリー、ドイツ、スウェーデン/
監督・共同脚本:コルネル・ムンドルッツォ/主演:ジョーフィア・プソッタ)
- 関連記事
-
- 『母と暮せば』 (2016/01/23)
- 虐げられたものたち~『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』 (2016/01/17)
- ファン・ジョンミン! ~『ベテラン』 (2016/01/16)
スポンサーサイト
trackback
人間に虐げられた犬たちが復讐するという話ですが、主人公の少女の行動がいらつかせるのと、暴れるなら暴れればいいのだけど、襲う相手が違うと思うし、妙に良い話にしようとしているところもあり、個人的には今イチでした。 作品情報 2015年ハンガリー・ドイツ・スウ…
2016-01-16 13:56 :
映画好きパパの鑑賞日記
(原題:Feher isten)
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲〈ラプソディ〉』。
雑種犬には課税という法律が制定された世界。
虐げられた犬たちが、
裏社会の闘犬に仕立てられた一匹の犬に率いられて蜂起する。
「アートは批評的なスタンスを決して手放してはならない...
2016-01-24 18:09 :
ラムの大通り
身勝手な人間たちによって虐げられた犬たちが群れになって反乱を巻き起こす衝撃の展開が話題を呼び、カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門のグランプリに輝いた異色ドラマ。また、想像を絶する演技を披露した犬たちにもパルムドッグ賞が授与された。愛する少女と突然引き離...
2016-02-24 22:59 :
パピとママ映画のblog
第67回カンヌ国際映画祭で「ある視点部門賞」を 受賞した、犬を主役に据えた異色のドラマ 『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』が公開 されましたので観に行ってきました。 予告編を観ましたらインパクトがあったので 観に行ってみた一本、ハンガリー、ドイツ、 スウェ…
2016-03-07 22:00 :
映画B-ブログ
☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年ハンガリー=ドイツ=スウェーデン合作映画 監督コルネル・ムンドルッツォ
ネタバレあり
2016-12-12 09:21 :
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]