過去と正義~『黄金のアデーレ 名画の帰還』
黄金のアデーレ






 WOMAN IN GOLD


 カリフォルニアで小さなブティックを営むユダヤ人女性マリア(ヘレン・ミレ
ン)
は、亡くなった姉がオーストリア政府に対し、ナチスに強奪された画の
返還
を求めていたことを知る。それはマリアの実家が所有していた、クリム
トが彼女の伯母アデーレを描いた肖像画
。姉の遺志を継ごうと、マリアは
駆け出しの弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)を雇う。彼もまた、オース
トリアにルーツを持つユダヤ人だった。

 「オーストリアのモナリザ」 と呼ばれていた名画を、「正義」 のために取
り戻そうとした、ある老婦人の物語フィクションよりも劇的な、実話の映画
である。

黄金のアデーレ2

 ナチスに強奪された美術品を取り戻す、という大筋は ミケランジェロ・プ
ロジェクト
 と同じ。しかし、美術品を 「人類の遺産」 と捉えていた同作に
対し、本作では 「家族の象徴」 として描かれている。

 ストーリーは、現在と過去(マリアの回想)を行き来する。そして、これはた
だ 「奪還」 だけを主題に据えた物語ではないことが、徐々にわかってくる。
故国を敵に回しても、その過去と、罪を葬り去ることを断じて許さなかった
リア。彼女に触発され、自らのルーツに恥じない生き方を選んだランディ。想
像を絶する過酷な半生を送ったマリアにとって、画を取り戻すことは、故国に
両親を置き去りにしたことへの贖罪でもあったのだろう。この手に、家族を取
り戻す。そして半世紀の時を経て、「正義」 は成し遂げられたのだ。

黄金のアデーレ3

 気品溢れるヘレン・ミレンが美しく、素晴らしい! 彼女と同じく英国が誇る
大御所女優、ジュディ・デンチ 『あなたを抱きしめる日まで と構成が似
ているところもあるが、ナチスの罪とユダヤ人たちの悲劇を描いている本作
は少し、ヘビーだ。あれほどの苦難をくぐり抜け、異国で逞しく生きるユダヤ
人たちの生命力
に、脱帽。

 ( 『黄金のアデーレ 名画の帰還』 監督:サイモン・カーティス
               主演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ/2015・UK)
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【2015/12/22 20:05】 | 映画 | トラックバック(23) | コメント(2)
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コメント
真紅さんへ。
怒濤のアップありがとうございます。
そして、僕も観た作品が沢山で嬉しいかも(笑)
ヘレン・ミレン……僕の中では「カリギュラ」なんですが(笑)
ジュディ・デンチと並んで見事に晩年に開花したタイプ……。
冒頭のシーン、クリムトが金箔を「フッ!」と吹き、
手際よく画布に貼るシーンがあったでしょう?
上手いなぁって思っちゃうんです。一瞬で映画の中に入れるから。
そこへ行くと「FOUJITA」は……また怒りが込み上げて来た(笑)
僕、この作品を実際にニューヨークのノイエ美術館で観ているんですよねぇ……。
世界の名だたる美術館って戦争によって略奪した作品ばかりでしょう?
日本の国立西洋美術館だって本当はもっと充実していたハズなんです。
正規の手続きで購入した膨大な作品を敗戦によって巻き上げられちゃった……。
やっぱり美術系の映画は好きだなぁ……。

ブノワ。
【2015/12/28 16:20】 URL | ブノワ。 #kZkdgmoI[ 編集]
ブノワ。さん、こんばんは。帰って参りました。
こちらこそコメントたくさんコメントありがとうございます。
ヘレン・ミレン、女王ですものね! 凄い貫禄です。
冒頭のシーン、すごく印象的でしたね、、
結局『FOUJITA』は残念ながら観ませんでした。
オダギリジョーくんは好きなので、観たかったのですが。。
しかしブノワ。さんが思い出し怒りまでされるって、よっぽどアレな作品だったのでしょうねー。
まぁ、観てみないことには何とも言えないのですが。
で、この画の実物をご覧になっているですと?!
なんと! すごい!! うらやましい!!!
私の今年の反省点として、あまり美術館に行かなかった、というのがあるのです。
来年は、もう少し映画以外も観るようにしないと。。。。
美術選択ですから(笑)。
絵画の歴史は戦争の歴史でもあるのですね。
【2015/12/29 21:37】 URL | 真紅 #V5.g6cOI[ 編集]
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