マローヤの蛇~『アクトレス 女たちの舞台』
アクトレス






 SILS MARIA

 CLOUDS OF SILS MARIA


 フランスの大女優マリア(ジュリエット・ビノシュ)は、出世作 『マローヤの蛇』 
20年ぶりの再演にオファーされる。個人秘書のヴァレンティン(クリステン・ス
チュワート)
と台本の読み合わせをするマリアは、役作りに苦しむ。

 アメリカ人女優として初めて、クリステン・スチュワートがセザール賞助演女優
賞を受賞した作品
って、このことだったのですね。アサイヤス監督×ビノシュ主
ということで観たいと思っていましたが、期待以上の作品でした。監督自身に
よる脚本が素晴らしい。アサイヤスって、やっぱり才能あるんですね。。シネマー
ト心斎橋での上映最終回に、雨の中仕事を早退してまで観に行った甲斐があっ
た。これはアサイヤスによる 「女性賛歌」 だと思うのです。

アクトレス3

 「若いこと」=よきことだとする考えは、何処も同じ。確かに、若さにはそれ自体、
価値がある
とは私も思う。しかし、若くなくなった女は、消え去るべきただの 「燃
えカス」 なのか?
 答えはノーだ。この映画のテーマは、「時を超越」 したもの
の価値
、だと思う。

 中年の大女優と若い個人秘書の関係は、劇中劇の女社長ヘレナと、その部下
シグリッドの関係とダブる。彼女たちが台本の読み合わせをしているのか、会話を
しているのか、一瞬混乱する。マリアは 「自分は常にストレートだ」 と言いヘレナ
嫌悪するが、ヴァレンティンへの心情は信頼と嫉妬が紙一重のようにも映る。マ
リアと新進女優ジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)の立ち位置や、ジョアンと作家
不倫関係も、全て過去と現在がリンクした何重もの入れ子構造となり、互いを
投影している。

アクトレス2

 ヴァレンティンに去られ、ジョアンに否定され、マリアは自分を見失いかける。
新しいアシスタントに、自分そっくりの女性を選んでいるところに、彼女の傷の深
が伺える。初日の幕が上がる直前、そんなマリアの元に訪れた若い脚本家
新作をマリアに当て書きしたと語る彼こそが、アサイヤスが自らを投影した存在
だ。

 気持ちだけはいつまでも若いシグリッドのままでいたいと言い、そんな彼女に
翻弄されるヘレナがどうしても好きになれない、と苦しむマリア。そんな彼女自身
が、既に役を生きていることに、彼女だけが気づいていない「時を超越した存在」
--そう言われて初めて、マリアは自らの現在地に気付く。

 確かにビノシュは、誰もが認める大女優だ。そんな彼女にも、多分年齢への負
い目
はあるのだろう。それでも堂々と全裸をさらす彼女は、天晴れというほかない。
若さだけでない、人間の存在価値。私も今までどうしても好きになれなかった女優、
ジュリエット・ビノシュに、なんだか勇気をもらった気がする。

 ( 『アクトレス 女たちの舞台』 監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス/2014・仏、独、スイス/
          主演:ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツ
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[2015/12/11 07:34] | 映画 | トラックバック(8) | コメント(2) |
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コメント
この作品には本当に痺れました…。
シルスマリアがググッと立ち上がっていく瞬間、これこそ映画的な感動でしたし、
複雑な入れ子構造もその裏の物語を覗かせる多重構造で好きでした。
[2015/12/18 15:24] URL | とらねこ #.zrSBkLk [ 編集 ]
とらねこさん、こんばんは。コメントありがとう。
これ、本当に痺れましたね・・・。
観終わって、思わず掃除に入ってきたスタッフの兄ちゃんに「よかったわ~」と言ってしまいました。
(なんか自分、超大阪のおばちゃんですね、笑)
[2015/12/19 01:29] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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