神の橋まで~『わたしに会うまでの1600キロ』

WILD
シェリル(リース・ウィザースプーン)は最愛の母ボビー(ローラ・ダーン)を亡
くした喪失感から自分自身を傷つけ、自暴自棄に陥っていた。乱交、ドラッグ、
妊娠、堕胎、離婚。そんな彼女は、アメリカ西海岸の自然歩道パシフィック・ク
レスト・トレイル(PCT)の1600キロもの道のりを、一人で歩こうと決める。
アメリカの作家シェリル・ストレイドの回顧録、実話の映画化。全く観る予定
はなかった。お決まりのダサ過ぎる邦題、リース・ウィザースプーンとローラ・
ダーンという、全く興味のない、敢えて出演作は避けたいくらいの女優。それ
なのに観に出かけたきっかけは、門間雄介氏の絶賛ツイート。いや~、観て
よかった・・・。シェリルに共感はできないけれど、リースとローラ・ダーンの演
技に脱帽。素晴らしい作品だけに、他作品とビジュアルまで丸被りの酷い邦
題が本当に残念で、腹立たしくさえある。

タイトルと内容から、ショーン・ペン×エミール・ハーシュの 『イントゥ・ザ・ワイ
ルド』 を思い出さずにはいられない。しかし文明社会に背を向け、悲劇的なラ
ストを迎えたあの作品とは対照的に、本作は前向きなエネルギーに溢れている。
そもそもシェリルが歩き始めたのは文明に背を向けるためではなく、この世界と
再び上手くやって行くため。どん底まで堕ちた自分自身をリセットし、リスタートす
るため。「私はホーボー(流れ者)じゃない」。シェリルの心の中には、「美しさの
中に身を置く」 という母の言葉があった。物事の良い面を見ること、たとえどん
なに困難な時でも。母の言う 「美しさ」 とは即ちwildなのだと、彼女は長い道
のりの果てに辿り着く。

エンドロールで目にしたNick Hornbyという名前に思わず納得。そして監督
は、なんと昨年の傑作 『ダラス・バイヤーズクラブ』 のジャン=マルク・ヴァレ
ではないか! う~ん、そう言われてみればフラッシュバックの使い方とか、
DBCと通じるところがあるなと思う。
How wild it was, to let it be.
( 『わたしに会うまでの1600キロ』 監督:ジャン=マルク・ヴァレ/
主演:リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン/2014・USA)
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trackback
「奇跡の2000マイル」と比較するのも一興
公式サイト。原題:Wild。シェリル・ストレイド原作・出演、ジャン=マルク・ヴァレ監督。リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン。邦題の ...
2015-09-27 21:24 :
佐藤秀の徒然幻視録
「Wild」 2014 USA
“アメリカ西海岸を南北に縦断する過酷な自然歩道パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)にたった一人で挑み、3ヵ月間で1600kmを踏破した実在の女性シェリル・ストレイドの冒険物語。”
シェリルに「恋人たちのパレード/2011」「デビルズ・ノット/2013」「グッド・ライ~いちばん優しい嘘~/2014」のリース・ウィザースプーン。
...
2015-09-27 21:56 :
ヨーロッパ映画を観よう!
6日のことですが、映画「わたしに会うまでの1600キロ」を鑑賞しました。
母の死、結婚生活を破綻、薬と男に溺れる日々・・・ そんなシェリルは自分を取り戻すため 1600キロ踏破の旅に出る
極寒の雪山や酷暑の砂漠に行く手を阻まれる 過酷な道程の中でシェリルは自分と向...
2015-09-28 00:12 :
笑う社会人の生活
リース・ウィザースプーン主演のヒューマンドラマ、「わたしに会うまでの1600キロ
2015-09-28 09:09 :
セレンディピティ ダイアリー
我が家では『旅に出て自分探しをする』ことを、「意識高い系」と呼んでいる。(ちなみに息子が)
例えば先日食事に行った店の隣の席のアラフォー3人組が、「私はフランスに行ってぇ、いい人がいたら結婚してぇ~。」と話している場合、「あ、意識高い系が居る!」とコソコソ言うのだ。
2015-09-28 23:30 :
ノルウェー暮らし・イン・原宿
人生は、ワイルドだ。
1995年の夏、アメリカ西部を縦断するパシフィック・クレスト・トレイルを、たった一人で三ヶ月間歩き続けたシェリル・ストレイドの自叙伝、「Wild: From Lost to Found on the Pacific Crest Trail」の映画化。
最愛の母の死をきっかけに、自暴自棄な生活に陥っていたシェリルは、自らの人生を取り戻すために、過酷な自然との闘いに...
2015-09-29 00:03 :
ノラネコの呑んで観るシネマ
『わたしに会うまでの1600キロ』を日比谷のTOHOシネマズ・シャンテで見ました。
(1)今時の女の子が直ぐ口にしそうな“私探しの旅”がタイトルにつけられているのでパスしようかと思ったのですが、主演のリース・ウィザースプーンがアカデミー賞主演女優賞にノミネートさ...
2015-09-29 21:06 :
映画的・絵画的・音楽的
[リース・ウィザースプーン] ブログ村キーワード
「わたしに会うまでの1600キロ」(20世紀フォックス)。原題は「Wild」。今年のアカデミー賞でリース・ウィザースプーンとローラ・ダーンが、それぞれ主演女優賞と助演女優賞にWノミネートされて話題になりましたが、邦題があまりに違いすぎるので、最初何の映画かわかりませんでした(^^;。しかし、この邦題は映画の内容を非常に的確に表現しています...
2015-10-01 15:22 :
シネマ親父の“日々是妄言”
□作品オフィシャルサイト 「わたしに会うまでの1600キロ」□監督 ジャン=マルク・バレ□脚本 ニック・ホーンビィ□原作 シェリル・ストレイド□キャスト リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン、トーマス・サドスキー、 ミキール・ハースマン、ギ...
2015-10-05 08:11 :
京の昼寝〜♪
『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』などのリース・ウィザースプーンが、1,600キロの距離を3か月かけて1人で歩き通した女性を演じたヒューマンドラマ。第二の人生を歩むために、自然歩道のパシフィック・クレイスト・トレイルに挑んだ実在の女性、シェリル・ストレイ...
2015-10-26 19:17 :
パピとママ映画のblog
わたしに会うまでの1600キロ
人生のどん底から抜け出す為に、1,600キロの自然道を歩く
パシフィック・クレスト・トレイルに挑んだ女性の実話を描いた人間ドラマ
【個人評価:★★☆ (2.5P)】 (自宅鑑賞)
原作:シェリル・ストレイドの回顧録 原題:Wild
2016-09-11 21:54 :
cinema-days 映画な日々
☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督ジャン=マルク・ヴァレ
ネタバレあり
2016-09-23 08:27 :
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
コメントの投稿
>そもそもシェリルが歩き始めたのは文明に背を向けるためではなく、この世界と再び上手くやって行くため。
この一文まったくその通り。
だから私にとっては、これと『イントゥ・ザ・ワイルド』は実は全く違うんですよね。確かに自然を“ワイルド”と呼ぶところや、思い出すような風景はあるんですが。
この一文まったくその通り。
だから私にとっては、これと『イントゥ・ザ・ワイルド』は実は全く違うんですよね。確かに自然を“ワイルド”と呼ぶところや、思い出すような風景はあるんですが。
とらねこさん、こんばんは~。コメントありがとう。
そうそう、これあの映画とは似てるようで全く似てないよね。
シェリルの思いは、常にこの世界と繋がっていたように思います。
しかし、、、私も母が死んだら落ち込むと思うなぁ。再起不能レベルで。
そうそう、これあの映画とは似てるようで全く似てないよね。
シェリルの思いは、常にこの世界と繋がっていたように思います。
しかし、、、私も母が死んだら落ち込むと思うなぁ。再起不能レベルで。