大地と自由~『ジミー、野を駆ける伝説』
ジミー





 JIMMY'S HALL


 1932年、アイルランド内戦の傷が未だ癒えないこの国に、元社会活動家
ジミー・グラルトン(バリー・ウォード)が約10年ぶりに帰って来る。彼は故郷
の村で、年老いた母と静かに暮らすことを望んでいたが、村の若者たちはか
つて人々が集った 「ホール」 の再建をジミーに懇願する。

 英国の名匠、私が一番好きな映画監督の一人であるケン・ローチの新作
1920年代にアイルランドで起こった内戦を描き、カンヌでパルムドールを受
した 麦の穂をゆらす風 の続編的作品。初日にシネコン(!)で鑑賞。
大きな冠は無いが、本当に素晴らしい作品。なのにシアターがガラガラだっ
たのが残念。同じ日に、先に観た 『トラッシュ!』 の感動が、少々薄れてし
まったかも?

ジミー2

 ケン・ローチのまなざしはいつも通り、市井の人々に寄り添う。権力に抵抗
する者、自由を渇望する者を描く
、という彼の芯は全くぶれることなく、清々
しいほど。しかしその姿勢は生真面目一辺倒ではなく、ユーモラスなシーン、
切ない愛に泣かされるシーン
もある(しかしサッカーのシーンはない!)。瑞
々しい緑の大地が、まぶしいほど美しい。

 アイルランドにおける教会の暴挙は、数々の映画で目にしてきた。芸術を
語り、教養を身につけ、ダンスに興じることが、何故罪に問われるのか
。あの
美しい国で、好きなことを、好きな場所で、好きな人と楽しむという極当たり前
の 「自由」 が、これほどまでに手に入れることが難しい時代があったのだ。

ジミー3

 ジミーを演じたほぼ無名の俳優、バリー・ウォードが痺れるほどカッコイイ
誰もが彼を信じ、彼に付いて行きたいと願うだろうその立ち姿。彼の信念は、
厳格な神父の心をも動かしていたはず。そしてかつての恋人ウーナ(シモー
ヌ・カービー)
への、“You take my breath away.” が切な過ぎる・・・。
 しかしその字幕が 「きれいだよ」 となっていて興醒め。太田直子さんは大
好きだが、この場面はもう少し、切実感のある言い回しでお願いしたかった。
ついでに言うと、邦題も決して良いとは言い難い・・・。まぁ 「ジミーのホール」 だと 
「ジミーの穴」 と勘違いされて違う映画になってしまいそうだが。


 断ち切るような幕切れの作品が多いケン・ローチだが、本作はジミーの意志
を引き継ぐ若者たちのショット
で終わる。彼らの笑顔に、理不尽な結末の苦さ
が少し、救われる思いだった。

 ( 『ジミー、野を駆ける伝説』 監督:ケン・ローチ
      主演:バリー・ウォード、シモーヌ・カービー/2014・英、アイルランド、仏)
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[2015/01/31 05:51] | 映画 | トラックバック(10) | コメント(2) |
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コメント
こんにちは♪

もしかしたら、こっちからのTBの仕掛けも反映されない
かも知れんです…もうしワケないです。

アイルランドなんていたるところで音楽があふれてるお
国柄なのにたかだか100年ほど前はその音楽すら自由に
楽しむことができなかったというからビックリでした。
自由を求めて戦うジミーをはじめ市井の人々姿もそうで
すが、自由や文化とは何ぞや?のメッセージも素晴らし
かったです。

>しかしサッカーのシーンはない!

ケン・ローチ監督ファンとしては出来同様に期待しちゃ
う大事なポイントっすよね♪ (゚▽゚)v
[2015/02/01 21:18] URL | 風情♪ #s8w929I6 [ 編集 ]
風情♪さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
最近、てか前からなんですけどTBが反映されないことが多く・・・。
ほんと、こちらこそお手数かけて申し訳ないです。

アイルランドって音楽とか、文学(詩?)とか、小国なのに芸術面で才能溢れてる印象ですよね。
なのにこんなにも庶民は自由がなかったのか、、と私もビックリでした。
しかし、麦の穂~よりは随分ケン・ローチも甘くなったというか、最後なんか希望が観えましたよね。
あ、『天使の分け前』は観逃しているんですよね、、観たい~。

サッカーのシーン、なかったですよね??
観終わってなかったことに気付いて、自分が間違ってるのかと一瞬思いました(笑)。
[2015/02/02 18:14] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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