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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

少女三部作、最終章~『マリー・アントワネット』

20070130165316.jpg

 世界で(多分)一番有名な歴史上の美女、マリー・アントワネット。彼女が14歳で
オーストリアからフランス王太子の下へ嫁ぎ、18歳で王妃となり、浪費と享楽の
果てに革命の嵐に巻き込まれるまでを、一人の「少女」マリー・アントワネットとし
て描いた作品。ヴァージン・スーサイズ『ロスト・イン・トランスレーション』に
続く、ソフィア・コッポラ監督による「少女三部作」最終章である。

 日本には30年以上前から『ベルサイユのばら』というキラー・コンテンツが存在する
ため、30代以上の女性でマリー・アントワネットを知らない、という人は珍しいの
ではないだろうか。現在も新聞紙上で連載されており、ベルばら人気は根強い。か
く言う私もヒロインのキャスティングに「生卵持参」などと言いつつ、公開を楽しみに
待っていた。

 冒頭、いきなり流れたのはパンク、黒い画面に映えるショッキングピンクのクレ
ジット
に「これはやってくれそう」と期待がふくらむ。衣装や美術の豪華さは期待通り
だがしかし、物語は平板で退屈な印象は否めなかった。

20070130165353.jpg

 ドレスや靴やスウィーツや、ベルサイユ宮殿そのものが観られたらそれでいいじ
ゃない、満足よ、という気持ちもある。それだけでも映画館に足を運ぶ理由にはな
ると思えなくもない。しかし、世界で一番有名な悲劇のヒロインを敢えてパンクで
登場させる気概
があるのなら、もう少し「物語として」説得力のある、惹きつける何か
が欲しかったと思う。たった一人で異国から嫁ぎ、衆人環視の下で妻となり王妃と
なり、恋もしながら母となり、最後は夫に添い遂げようとする彼女の内面の成長が、
表層的にしか感じられなかったのが残念なのだ。

 主演のキルスティン・ダンストは、エクボのかわいい一人の少女としてのマリー・
アントワネットを巧く演じていたと思う。プチ・トレアノン宮殿で髪も結わず、素朴
なコットンドレスで自然の中に遊ぶマリー。『ヴァージン・スーサイズ』とそっくりな
カット
も挿入されるこの場面の彼女が一番美しく、活き活きと映し出されている。

 映像や音楽センスなど、ソフィア・コッポラが才能豊かな映画監督であることは疑
いようがない。自らも母となった彼女が、「少女」から大人の女性へどう変貌してゆく
のか。次回作に期待したい。

★もうちょっとだけ言わせて~『マリー・アントワネット』その2 はこちら

『マリー・アントワネット』監督:ソフィア・コッポラ
           主演:キルスティン・ダンスト/2006・米、仏、日)
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テーマ : マリー・アントワネット
ジャンル : 映画

2007-01-30 : 映画 : コメント : 18 : トラックバック : 7
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マリー・アントワネット
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2007-01-30 18:20 : 悠雅的生活
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2007-01-30 21:27 : Swing des Spoutniks
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2008-01-29 01:41 : 映画、言いたい放題!
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2008-02-01 03:58 : HAPPYMANIA
マリー・アントワネット
恋をした、朝まで遊んだ、全世界に見つめられながら。
2009-05-25 23:25 : Addict allcinema 映画レビュー
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こんばんは♪
こんにちは。
ベルばらをろくに読んだこともないから、
40代なのに最低限のことしか知らなくて、申し訳ないくらいですが…

思い入れもなく、スィーツの色と量にドン退きした割には、
わたしは嫌いな作品ではないです。
歴史大絵巻にするつもりもなく、
深く掘り下げた人間ドラマを創る気もなくて、
ただ、ひとりの皇女が他国へ嫁ぎ、
母となって、本来の自分らしさと愛情の対象を得て…
というお話を、ポップな調子で描きたかっただけかな、と
思いました。
だから、ベルばらやマリー・ファン以外の、
わたし程度の知識の人には、
「なぁんだ。パンだケーキだ、って話は彼女じゃないのね」とか
「母親らしい一面もあったんだ」などと思えて、
かえって、マリー・アントワネットの印象がよくなって、
ちょうどいい分量の逸話を見聞きした感じです。
2007-01-30 18:35 : 悠雅 URL : 編集
こんにちは!
>表面的
題材&宮殿でのロケとか環境はすごく恵まれているのに、
生かしきれていないというか
すごく勿体無いなーという感じで...残念。
オープニング、かっこよくてちょっと期待しちゃいましたが。

キルティン・ダンストのプチ・トリアノンでの映像は良かったですよね!
2007-01-30 19:39 : raum18 URL : 編集
こんばんは
こんばんは、TB&コメントありがとうございました。
何はともあれ、美術・衣装の凝りように心血を注いでいた作品でしたね。
マリー・アントワネットの内面を掘り下げることなど、はじめから意図しなかった
はずです。私はこういう「寸止め」なところが好きだったりします。
『ゆれる』のような、ネガティブな内面をわざわざ引っぱり出してくる作品は
どうも受け付けなくて・・・。
ともあれ、「靴」というのはガールズムービーにはなくてはならないアイテム
ですね。そこを踏まえているのもさすがだと思いました。
2007-01-30 21:33 : 丞相 URL : 編集
真紅さん、こんばんは♪
映画を「動く美術」として観る傾向が
あるので、ベルサイユやプチとリアノンでの
撮影が明るさ一辺倒だったことが残念です。

心の翳りを衣装の青で表現していたと思いますが、照明もぐんと落とすとか、テンポを途中で変えるとか、何か工夫があれば、もっと楽しめる映画になっただろうと思いました。
2007-01-30 21:46 : パフィン URL : 編集
悠雅さま、こちらにもコメントとTBをありがとうございます。
ベルばらファンなら、もっとドラマを期待したかもしれないですね。
オスカルとアンドレがいない!とか思ったりするかな?
私も決して嫌いな作品ではないですが、ちょっと(特に後半)面白くなかったです。
民衆が押し寄せてくる場面も、迫力不足だと思いました。
おしゃれ心と遊び心、もっと満開でもよかったですよね、ちょっと中途半端かな、とも感じたり・・。
でも問題のシーンを目撃していたら、もっと好感度アップだったと思います。
残念ですわ~!悠雅さま、さすがです。
ではでは、またお伺いしますね。
2007-01-30 22:37 : 真紅 URL : 編集
raum18さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
私もあのオープニングには期待で頬が緩みました。
でも、そうですね~、尻すぼみな感じでした。
プチ・トリアノンの映像はまんま『ヴァージン・スーサイズ』でした。
一番自然でよかったと私も思います。
また遊びにいらして下さいね。ではでは。
2007-01-30 22:38 : 真紅 URL : 編集
丞相さま、こんにちは。こちらでは初めまして!お越し下さり、ありがとうございます。
TBもありがとうございました。
確かに、アントワネット始め、登場人物誰の内面も描写されませんね。
最初からそういう意図だったのだと思いますが、私はちょっと物足りなさを感じてしまいました。
前2作を超えていない、と感じたことが一番不満だったかもしれません。
『ゆれる』は残念ながら見逃してしまって・・。来月DVDが出たら、速攻で観たいと思っています。
靴を始め、ガールズ(一応、ね)にはたまらない映像でした!
音楽(サントラ)のことなど、またお話聞かせて下さいませ。ではでは。
2007-01-30 22:39 : 真紅 URL : 編集
パフィンさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
映画が「動く美術」ですか~、さすがパフィンさま!
私は「総合芸術」だとは思っていましたが、そういう観方はしておりませんでした。
そう言えば、ベルサイユにしてもプチ・トリアノンにしても、奥行きが感じられませんでしたね。
意図してのことだったのかもしれませんが、確かにもったいないです。
衣装は、フランスに来て初めて纏った青の衣装が一番印象的でした。
あの辺りまではよかったのですが・・。
またお伺いしますね。ではでは。
2007-01-30 22:40 : 真紅 URL : 編集
カワイイ♪
ベルばら世代の私ですが、これはそんなこと比較しないで単純にマリー・アントワネットという少女が王妃になってからの物語として興味があります!!(残念ながら劇場鑑賞はないと思うけれど・・・涙)

それにしても、真紅さんのブログスキンとすごーくマッチしていることに感動している私です♪
キュートですわ~♪
2007-01-31 08:09 : D URL : 編集
Dさま、こんにちは。コメントありがとうございます♪
ベルばら世代なのですか・・。って何歳くらいなんでしょう?←さりげなく歳を聞き出そうとしている、笑
物語としてはイマイチですが、衣装や美術だけでもうっとり♪ですよ~。
私は重大な場面を見落としているようなので、DVDになったらまばたき禁止!で観てみようと思っています。
そのとき、またお話しましょうね~♪
2007-01-31 14:31 : 真紅 URL : 編集
私も先週観て来ました。
真紅さま こんにちは。
私も先週観て来ました。
ヴェルサイユ宮殿での撮影ということで、
楽しみにしていましたが、
少し、がっかりしました。
キルスティンが14才から演じるのには、
一寸無理があったような。。
史実に基づいたエピソードは上手く盛り込まれていましたが、
慌しい感じがして、気品に欠ける気がしました。
でも、衣装、スイーツ(お姫様が指では舐めないですよね)、舞台装置等…は豪華で綺麗でしたね。
2007-01-31 16:24 : ほたる URL : 編集
真紅さん
こちらもTB頂いてありがとうございました!
ところが残念なことに、何故か当方からTBができない状態です。
申し訳ありません。
もしかすると「ディパーテッド」も送信できていないかもしれないです。
コメントだけでも残させていただきます。
ベルばら世代の私なのに、それには全く興味が湧かず、従ってこの歳までアントワネットの歴史を差ほど存じておりませんでした。
そういう意味では少しは彼女の歴史を知りました。
2007-01-31 17:19 : なぎさ URL : 編集
ほたるさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
少しがっかり、は私も同感です。
美術や衣装は楽しめたのですが、肝心のストーリーが・・。
内面を掘り下げていない、というのは観る前から知ってはいても、ちょっと残念でした。
でもこの映画、批評家始め絶賛されるかたが多いですね。その2のほうに書きましたが。
キルスティンは、若い頃よりも母となってからのほうが違和感ありました。
アメリカンな王妃でしたね。
またそちらにお伺いしますね。ではでは。
2007-02-01 01:24 : 真紅 URL : 編集
なぎささま、こちらにもコメント、ありがとうございます。
TBは残念です(泣)。お手数かけて申し訳ありません。
TBの送受信がうまくいかないことが多く、困っているのです。
でもコメントだけでも大歓迎です、ありがとうございます!
ベルばらは読んでらっしゃらないのですね。
漫画も史実に基づいていると思いますが、フェルゼンとアントワネットはプラトニックだったような・・。
宝塚フリークのかたは、この映画どう感じられたでしょうね。
今後ともよろしくお願いいたします。ではでは。。
2007-02-01 01:40 : 真紅 URL : 編集
こんばんわ。 TBとコメントをありがとうございました。
>ヒロインのキャスティングに「生卵持参」
ウケました。 私もちょっと近い気持ちありました。

確かに表層的でしたね。
ま、それもいいかな、と結構満足してしまってたんですが
でも市民の襲撃が近づいてきても逃げずに夫に寄り添うなんて
いつのまにそんな立派な王妃になってたの?って
途中省略?とか思ってしまいました。
2007-02-12 02:13 : mambotaxi URL : 編集
mambotaxiさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
キルスティン・ダンストは最近『ヴァージン・スーサイズ』を観て見直したのですが、最初聞いたときは冗談かと思いました(笑)。
王妃はおろか、誰の心の内面も描写されていませんでしたね。
それが意図したところだったのだとはわかっているのですが、やはり物足りなさを感じてしまいました。
これから、ソフィア・コッポラは何処へ行くのでしょうか。次回作も観たいと思います。
ではでは、またいらして下さいね~。
2007-02-12 15:41 : 真紅 URL : 編集
こんにちわ!ベルばらはキラーコンテンツ
なのかぁ。なんだか新鮮な響きですよ(笑)
英国騎士時代を背景にしてるけど、
バックの音楽はロックだった「ロックユー」
という映画が大好きなんですけど、
その映画と結構
やってる事は似てるのにこちらはストーリー
の面白さが史実そのまんますぎたのか、
思ったようにしか展開しなくて残念だった
ように思います。
「ロッックユー」は逆にロックがうざく感じて
しまうくらいお話と演技が印象に残る
作品でした^^
2007-02-13 12:37 : kazupon URL : 編集
kazuponさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
ベルばらはね~、あれは世界に誇れますよ!(笑)
私も『ロック・ユー』大好きです。ヒースとポールがいいんですよね。。
結局、ソフィア・コッポラは何が言いたかったのか?わかりませんでしたよね。
マリー・アントワネットが「ただの女の子だった」ことを描いているのはわかるのですが、なんか中途半端な印象でした。
音楽や衣装や美術を楽しめればいいのかもしれませんけど・・。
サントラは私も買わないと思います。レンタルもしないかも(苦笑)
ではでは、また遊びに行きますね。
2007-02-13 16:39 : 真紅 URL : 編集
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