ぜんぶニセモノ~『紙の月』
紙の月

 銀行外回りの営業担当として働く梅澤梨花(宮沢りえ)は、会社員の夫(田辺
誠一)
と二人きりの生活に虚しさを感じていた。彼女はある日、大口顧客である
平林(石橋蓮司)孫・光太(池松壮亮)と偶然出逢い、関係を持ってしまう。

 角田光代の同名小説の映画化。少し前にテレビドラマ化もされていたのは偶然
か、それともメディアミックスの一種なのか? 小説もドラマも知らないが、吉田大
八監督の作品が好き
なので、この映画は絶対に観たかった。東京国際映画祭
て、最優秀女優賞観客賞を受賞している話題作でもある。

 「紙の月」 というタイトルの意味が、ずっとわからなかった。真っ白のスクリー
ンから、エンドロールが始まったとき、私は初めて理解した。「ああ、これってペー
パー・ムーン
のことなんだ」 と。1Q84に、プラス10年。It's only a paper moon.

紙の月2

 ねずみ色のコートに身を包み、地味で平凡な女だった梨花が、悪事に手を染
めるごとに美しく、輝きを増していく。女優・宮沢りえの面目躍如であろう。棒の
ように細く伸びた足に少女の面影を残す彼女は、「薄幸」 という言葉が似合う、
大人の女になった。彼女と同時代を生きている私は、過去から現在に至る様々
スキャンダルに、どうしても思いを馳せずにいられない。

 罪を犯し、欲望に忠実に生き、行き着く先がわかっていてもなお逃げ続ける主
人公
を、断罪するのが目的の作品でないことはわかる。夫と二人の生活が味気
なく、寂しかったのだろうことも理解できる。しかしそれでも、私は思わずにはい
られない。 「どうして自分の稼いだお金でやらなかったの?」 と。

紙の月3

 ミッションスクールで一人、寄付をし続けた梨花。父親の財布から札を抜く、
という行為が 「罪」 であり 「悪」 であると、彼女は本能的にわからなかっ
たのだろうか?
 受けるより与えるは幸いなり、光太に与えることで得られる
恍惚や優越感が、彼女を深みに嵌めたのだ、と言うことはたやすい。しかし
梨花には、何かもっと根源的で、宿命的な欠落があるように思えてならない。

 そして想像してしまう、これは現実に、金融機関では大なり小なり 「ありが
ち」 な話
なんじゃないか、と。表には出てこないだけで。

 今や超がつく売れっ子の池松壮亮、小悪魔が素のような大島優子、貫禄の
小林聡美。脇のキャストも皆好演。観応えのある作品でした。満足。

 ( 『紙の月』 監督:吉田大八
           主演:宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、小林聡美/2014・日本)
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テーマ:邦画 - ジャンル:映画

[2014/11/30 00:05] | 映画 | トラックバック(6) | コメント(2) |
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コメント
TVの特集的に取り上げられているのを見ましたが、なかなか良さそうっすね。

いずれ若い男は去る
いずれ横領はばれる
すべてが破滅に向かうのは明白なのにね。

立ち止まれない。。。のかなあ
[2014/11/30 18:27] URL | anupam #xfSAUo5E [ 編集 ]
anupamさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
この映画、結構宣伝されてましたよね。
宮沢りえが評価されているようですが、彼女なかなかよかったですよ。
ドラマ版の原田知世はどんな感じだったんかな、、と思いました。
私は小心者なので主人公のようなことはできないですが、ありふれた話なのかな、とも思いました。
[2014/11/30 22:36] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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[2015/10/25 09:48] プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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